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近未来が予想できるかも!? 2013年のIT新技術・実証実験まとめ

DCからビッグデータ、O2O、医療まで

 新技術の基になる新しい理論。理論を証明する「Proof of Concept」。今年は実証に関するニュースが多かったような気がする。そこには近未来を占うヒントが隠されているかもしれない。ということで、実証や新技術をキーワードに今年のニュースをまとめてみた。

ビッグデータ、M2M

 ビッグデータは当初のソーシャルメディア分析をはじめとしたマーケティング用途から、だいぶ適用範囲を広げた印象だ。特に佐賀県および福岡市が進める「交通インフラ情報の公開」という取り組みは、笹子トンネル崩落やJR北海道のトラブルなど実際の事故・事件を絡めて見ると興味深い。浜松市の「ビッグデータ分析で民意反映」というのも新しい取り組みだ。技術的には膨大なビッグデータを収集・蓄積した時点で処理する「リアルタイム分析」に関する新技術も開発が始まっている。

大林組とNEC、ビッグデータ分析でビルのエネルギー需要予測に成功
膨大なビッグデータをリアルタイム処理、NECが新技術を開発
NEC、ビッグデータ分析を高速化する分散処理技術を開発
富士通研究所、ビッグデータのタイムリーな利用を促進する高速処理技術を開発
交通インフラの点検結果など公開、佐賀県や福岡市がオープンデータ実証
浜松市の30年後の姿を定める総合計画、ビッグデータ分析で民意反映へ

 ガートナーによると、ビッグデータは現在「過度な期待のピーク期」にある。が、こうした実際の取り組みを経験して、やがて「幻滅期」「安定期」へと入っていく。

ビッグデータと3Dプリントは「過度な期待のピーク期」~ガートナー

日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2013

 実際のサービスやベンダー企業の体制構築も進んでいる。これらの動向からすると、そろそろ「幻滅期」に入る頃だろうか。

NEC、ビッグデータ関連サービスを体系化~2015年度に売上1000億円を目指す
JSOL、ビッグデータ分析モデルを「Google Cloud Platform」上で提供
SBT、ビッグデータ活用をトータルに支援するプラットフォームサービス「4D Pocket」
富士通がビッグデータ推進、故障予測やマーケティングなど10種の実践モデル
日立、ビッグデータ利活用事業の専任組織を設置~2015年度に1500億円の売上高目指す
CTC、大量のログを解析するビッグデータソリューション~コンサルから運用支援までトータルで支援
EMCジャパン、ビッグデータの人材育成やチーム立ち上げを支援
日本ラッド、NTT Comの「Cloudn」上からビッグデータ解析基盤を提供
日本HP、ビッグデータ解析プラットフォーム「HAVEn」を発表
米Treasure Data、クラウド型ビッグデータプラットフォームを日本市場で本格展開
日立、ビッグデータ事業でプライバシー保護のための取り組みを強化

 ビッグデータの1種として、機械が吐き出すデータを分析に生かすM2Mも、少しずつ進展しているようだ。まずはマシンデータから故障の予兆などを自動収集・分析する用途からだが、例えば、NECの大規模プラント故障予兆監視では島根原発で実証実験を行うなど、東日本大震災を教訓に、着実に進展してほしい取り組みも始まっている。

NEC、大規模プラント向け故障予兆監視システムを開発
ウイングアークとビトリア・テクノロジー、M2M予知保全ソリューションで協業

O2O(Online to Offline)

日本ユニシスの音波を利用した位置情報連動型サービスの特徴

 O2O(Online to Offline)の実証実験も多かった。O2Oとは例えば、スマホなどにクーポンやキャンペーン情報を届けたり、あるいは店舗への来店ごとにポイントを付加したり、オンラインで実現できる機能を利用して、実店舗(オフライン)への来客効果や売上アップを図るマーケティング施策だ。

 実証実験で多かったのは「訪問者の正確な位置把握」に関するもの。正確な測位を実現することで、例えば、所狭しとブースが並ぶイベント会場で、今どのブースのどの商品棚の前にいるのかといったことまで把握。その商品に関する情報をピンポイントでスマホに届けるといったことが実現されようとしている。

 その方法となるのが、日本ユニシスやエムティーアイが開発した音波をスマホで受信して測位する技術だ。これ自体は船舶の「ソナー」などすでに確立されたものだが、より一般生活に近いところで実現されるとなれば意義は大きい。

 この考え方を発展させて、街の観光そのものを活性化させようという動きも。観光客の位置を把握して、観光地の歴史や見所のほか、交通・防災情報なども発信。快適な観光を実現するといった取り組みが、京都をはじめとした観光地で開始されている。

GPSでは不可能な“高精度屋内測位”が東京モーターショーで体感できる
日本ユニシス、音波を利用したBtoB向けO2Oサービスの実証実験
日本ユニシスが音波を利用したO2O実証実験、第2弾をITpro EXPOで実施
ユニシス、スマホで読み取る「カメレオンコード」を使ったO2Oトライアルを実施
オープンデータで高度な観光・防災ナビを実現、「歩くまち・京都」実証へ
地域情報をSNS発信、タイムリーに訪問者へ~日立Solと調和技研が観光誘客サービス
富士ゼロックス、GPSとスマホによる「観光音声ガイドサービス」

 O2Oに関するこうした実証実験をチラホラと耳にするようになったのが2012年ごろ。2013年からは実際のサービスも提供され始めた。

ISID、街と人をつなぐO2Oプラットフォーム・パッケージ「+fooop! connect」
日立Sol、O2Oマーケティング支援する小売り向けクラウドサービス「ReBee」
シャノンのマーケティング支援基盤サービスにiPadによるO2O向け新機能
日立ソSol、O2Oを支援する「ファンビジネス向けトータルCRMソリューション」
ヤマハの新ポイントサービス「QooPo」が5月8日開始、日立Solが基盤を提供
スポットライトとIDCフロンティア、クラウド環境を利用した小売業向けO2Oシステムパッケージ
NTTLS、O2Oマーケに活用できる高速画像照合サービス「ef.BRIDGE」
Samurai、スマホを用いたO2Oソリューションパッケージ「Mercury」
店舗への来店と購買促進を実現する「NEC O2Oクラウドサービス」
BIGLOBE、「ついっぷる」チェックイン機能を活用したO2Oマーケ支援サービス

医療・農業

FeliCaを利用した電子お薬手帳

 医療の分野では特に介護に関するものが目立った。高齢化社会に向かい、被介護者も介護者も高齢となる「老老介護」や「孤独死」といった問題が噴出するなか、ITが担えるものとは何なのか。現状ポイントとなっているのは「モバイル端末」だ。特に最新タブレットが着目され、文字が大きくて直感的に操作できるタッチパネル式の端末で老齢者を見守る取り組みが始まっている。

 「医療は病院、介護は家庭」という風潮のある介護。その在り方についても議論が深まっているが、ITによる取り組みがどう影響するのか、実証後の動向からも目が離せない。

 一方、川崎市で試験が始まった「FeliCaを利用した電子お薬手帳」。通院時にお薬手帳を忘れなかったことがない筆者も、早急な普及を願うばかりである。

宮城・石巻市で「高齢者健康・生活支援モデル」実証へ、富士通ら5社
「Surface RT」で高齢者の健康管理・孤立防止、札幌市内で実証実験
フリービット、唐津市と共同で高齢者見守りシステムや市民スマホなど実証
ソニー、FeliCaを利用した電子お薬手帳を開発、川崎市で試験へ
MKIが医療器具の使用履歴管理サービス、感染症の拡大防止に
NEC、クラウド連携型ロボットでパートナー制度「PaPeRo パートナープログラム」公開

 医療分野では、富士通の食・農クラウド関連でいくつか実証実験が開始された。

富士通、食・農クラウドを活用して低カリウム植物を栽培する実証事業
富士通、食・農クラウドの検証・実践の場「Akisai農場」を開設

 実はこの分野はすでに実証を超えてサービス化が盛んで、2013年は富士通やNEC、日立Solを中心に多数のクラウドサービスが提供された。中でもJSOLと富士通が開始した農作物の収穫期や収穫量を予測するサービスはインパクトも大きい。従来は匠(たくみ)のみが、古くは神のみぞ知るものだった秋の収穫量を、クラウドで誰でも気軽に実施できる時代が訪れようとしている。

富士通、食・農クラウド「Akisai」に新サービス4種
富士通と井関農機、食・農クラウド「Akisai」で提携
農作物の収穫期・量を「高精度に」予測、JSOLがサービス提供
ネポンとNEC、ハウス内機器の制御機能を農業ICTサービスで提供
日立ソリューションズ東日本、タブレット端末を活用する農業分野向けクラウドサービス
日立ソリューションズ、農業クラウド「栽培くん」~生産履歴管理や農薬適正使用
ネポンとNEC、農業ICTクラウドサービスを機能強化
富士通と井関農機、食・農クラウド「Akisai」で提携

(編集部)