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日立、ビッグデータ利活用事業の専任組織を設置~2015年度に1500億円の売上高目指す

日立 執行役常務 情報・通信システム社 CSO兼CIOの渡部眞也氏

 株式会社日立製作所(以下、日立)は6日、ビッグデータ利活用事業を強化すると発表した。

 推進組織として、6月1日付けで、情報・通信システム社に、日立イノベイティブ アナリティクス グローバルセンタ(HGC-IA=Hitachi Global Center for Innovative Analytics)を設置。研究所と事業部門が一体となり、人材、技術、開発体制の集約および共有を図るとともに、米国、英国、アジアなどの拠点を結んで、顧客の課題解決に向けてビッグデータ活用ソリューションを開発し、グローバルでビッグデータ利活用事業を展開することになる。

 2015年度には、ビッグデータ利活用事業で1500億円の売上高を目指す計画であり、そのうち3分の2を海外比率とする。これにより、情報・通信システム社におけるサービス比率を2015年度には65%(現在60%)に、海外比率を35%(現在は25%)にそれぞれ高める考えだ。

 日立 執行役常務 情報・通信システム社 CSO兼CIOの渡部眞也氏は、「ビッグデータ利活用事業は、日立が中期経営計画で掲げている社会イノベーション事業の強化において、基盤となる重要な取り組み。2012年4月に、データ・アナリティクス・マイスターラボを設立し、専任で40人、関連する人員で200人体制として、ビッグデータに関する取り組みを行ってきた。この1年間に、約30件のプロジェクトを推進し、その成果に手応えを感じている。HGC-IAは、チームがひとつとなってビッグデータに取り組む、新たな組織であり、まずはグローバルで100人を増員して、300人体制とし、グローバルでのビッグデータ利活用を、さらに進めていくことになる」と、事業強化の方向性を示す。

 300人のうち、約4分の1がデータサイエンテストであり、残りはドメインエキスパートで構成される。

社会イノベーション事業におけるビッグデータの利活用
日立のこの1年の取り組み

 これまでのビッグデータ利活用の具体的な成果として、東京電力との需給統合計画によるピーク需要抑制シナジー事業、ビジネス顕微鏡による小売店舗解析、流通ソリューション、日立テレマティクスデータ加工配信サービスのほか、日産自動車のリーフの走行データを活用することで、走行距離連動型自動車保険「ドラログ」を損保ジャパンがサービス提供といった実績があるという。

テレマティクス分野への適用例
マーケティング分野での適用例
BIにビッグデータ分析技術を付加した例

グローバルの研究戦略策定と革新的なサービスの開発を目指す

HGC-IA設立とその狙い

 300人体制でスタートするHGC-IAは、現地人材の採用を加速することにより、2015年度までに500人規模に拡大する。

 さらに、日立の横浜研究所、米国日立コンサルティング社(Hitachi Consulting Corporation)、日立データシステムを連携して、ビッグデータソリューションの開発を統合。顧客データの解析をベースとした実証プロジェクトを通じて、ソリューションを開発するほか、2013年4月に設立した米国ビッグデータラボ、6月に設立した英国の欧州ビッグデータラボ、日本やその他地域の研究組織を統括し、グローバル研究戦略策定のみならず、最前線の顧客との実証実験を通じて、革新的なサービスを開発するとした。

 「解決課題、分析手法、データタイプ、ITプラットフォームといった領域はグローバル共通とし、技術の体系化、横展開を図り、事業部門が現地の顧客との接点でソリューション提供を行うことになる」(渡部氏)という。

 また、同社の米国ビッグデータラボでは、米HPのビッグデータのラボ長であったウメシュウォ・ダヤル氏を迎えるなど、「グローバルタレントを採用し、体制を強化する」(渡部氏)としたほか、「ブラジル、中国、インド、シンガポールの研究開発部門とも連携を図る」(日立 横浜研究所情報サービス研究センタの赤津雅晴センタ長)とする。

 HGC-IAによって、「顧客とのイノベーション協創」、「Global One Teamでの取り組み」、「事業部門と研究所のより一体化したアプローチ」が可能になるとしている。

HGC-IAの概要
2013年度には100プロジェクトの実施を見込む

HGC-IAの注力分野はヘルスケア、通信、エネルギー、交通など

 HGC-IAが注力する分野としては、ヘルスケア、通信・メディア、エネルギー、交通、マイニングなどをあげる。

 ヘルスケアでは、英国マンチェスター地域の国民保健サービスとの連携などにより、6000万件の大量の医療情報の解析を通じた新たなヘルスケアサービスを開発。通信・メディアでは、企業内外の画像、動画を中心としたメディアの検索、利活用を促進するソリューションを開発。エネルギーでは、送電線の効率化を図るソリューションの開発に着手するという。

 また交通では、鉄道設備の効率的な保守サービスを実現し、安心、安全な鉄道運行に役立つソリューションを開発。マイニングでは、オーストラリアや南米などの鉱山資源産出地域で発生するデータの解析を通じて、オペレーション全体を支えるソリューションを開発するという。

 さらに、オイルおよびガス、水といった社会イノベーション分野や、物流、製造業、ビジネスインテリジェンスをはじめとしたエンタープライズ分野でのビッグデータ活用、ビジネス顕微鏡をはじめとした日立ならではの展開にも応用していくとした。

 なお、個人情報の取り扱いやプライバシーに対しては、「グローバル組織として検討、対応していくことも可能になる」(日立 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部の安田誠副統括本部長)とのことだ。

ヘルスケア分野での取り組みの例
HGC-IAのグローバル連携体制
日立 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部の安田誠副統括本部長

(大河原 克行)