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NEC、ビッグデータ関連サービスを体系化~2015年度に売上1000億円を目指す

NEC Big Data Solutions

 日本電気株式会社(NEC)は13日、ビッグデータ関連の技術、製品、サービスを「NEC Big Data Solutions」として体系化し、新たに4種類のソリューションを販売すると発表した。また、NECグループの分析要員を拡充するとともに、世界初の独自技術を活用することで分析作業を高速化。これまで以上に高精度な分析サービスを提供するという。

 NEC Big Data Solutionsは、同社のビッグデータ関連技術や、100件以上の顧客実証に基づくノウハウ、製品、プラットフォーム、サービス、サポートなどを体系化したもの。新たに提供するソリューションは、

・いつもと違う挙動を自動的に発見するインバリアント分析技術を用いて、各種センサー情報をもとに故障に至る前の設備の不健全な状況を把握する「プラント故障予兆監視ソリューション」

・テキスト含意認識技術を含むテキスト分析技術を活用し、文書全体の意味を理解してリスクなどを自動的にスコアリングする「情報ガバナンス強化ソリューション」

・大量のデータに混在する多数の規則性を自動で発見し、高精度の予測が可能な異種混合学習技術を活用し、売り上げや気象情報などの多様なデータをもとに、将来の需要を予測し、発注を自動化する「需要予測型自動発注ソリューション」

・非構造化データを含めた膨大な情報から高速に学習するディープラーニング技術と位置づける「RAPID機械学習技術」を活用し、求職者と企業との業種、職種などの項目データや自己紹介文などをあわせ、最適なマッチングを行う「人材マッチングソリューション」

の4種類。これらのソリューションは、検証成果をもとに、今後も内容を拡充していくことになるという。

ソリューションメニューの強化
ソリューションの将来展開
ビッグデータ利活用を促進するNECの独自技術

各ソリューションとも先行活用で効果を発揮

 すでに、「プラント故障予兆監視ソリューション」は、中国電力の協力のもと、島根原子力発電所で実証実験を行っており、3500のセンサーから毎秒100件のデータを収集し、異常の予兆を発見するもので、すでに有効性が評価されているという。「情報ガバナンス強化ソリューション」では三井住友銀行で先行的に採用しているという。

中国電力での活用例

 「需要予測型自動発注ソリューション」は、ミニストップで導入。異種混合学習技術を活用し、3日後の日配品の需要を予測し、廃棄品を3割削減することにつながったほか、これと同様の技術を活用し、大林組では、各種データから研究施設の24時間後や1カ月後などの電力使用量や熱使用量を予測。「ビル群や街、都市のスマート化に貢献することが期待されている」(NEC 執行役員常務兼CMOの清水隆明氏)としている。

大林組での活用例
NEC 執行役員常務兼CMOの清水隆明氏

 NECでは、市場ニーズが高い「オペレーション高度化/最適化」、「情報管理の強化、犯罪・不正の検知」、「製品/サービス価値向上・改善」、「顧客獲得・維持、販売促進」の4領域において、今回のソリューションを加え、12種のソリューションメニューへと順次拡充し、あらゆる領域にビッグデータの活用提案を行っていくとしている。

 NEC ビッグデータ戦略室の若目田光生室長は、「400件の商談を類型化すると、顧客の期待は4つの領域で90%以上を占める。NEC Big Data Solutionsでは、独自開発の分析技術を活用し、顧客との実データによる検証成果をもとにソリューション化。検証に裏付けられたテンプレートやノウハウを提供する。また、各領域において、多数の検証プロジェクトを展開し、検証成果とニーズにあわせて順次メニューを拡大する」とした。

約400件の商談を類型化
NEC ビッグデータ戦略室の若目田光生室長

分析要員を200名から600名へ拡充

NECのビッグデータ体系の全体像

 また、同社では、体制強化として、NEC BigData Support Structureを強化。グループ会社であるアビームコンサルティングと協力し、現在200人の分析要員を、2015年度までに600人に拡充する。600人の内訳はNECが350人、アビームコンサルティングが250人。

 「コンサルティング、システム構築・サービス、分析・検証サービスを一貫して提供できる体制が整う」(若目田室長)とした。

 さらに、データの前処理や各データの特性に適した分析手法の決定といった、専門性や時間を要する分析作業プロセスの一部を自動化する世界初の「分析プロセス最適化技術」を開発。これにより、高速で、高精度な分析・検証サービスを提供することになり、「分析、検証サイクルを高速化することで、最適な分析結果を導き出すことができる。これについては、データサイエンティスト不足に向けたNECの回答になる」(若目田室長)などと語った。

ビッグデータ事業体制の強化
グループシナジーによる総合力の発揮を目指す

 そのほか、NEC BigData Support Structureでは、NEC Cloud IaaS上に、ビッグデータ分析・検証環境を準備し、2014年度上期から提供を開始。分析・検証環境の迅速な立ち上げにより、短期間での効果検証が可能になるという。さらに、ビッグデータディスカバリープログラムを強化、NECラーニングが提供する顧客向けビッグデータ教育プログラムも強化する。

 加えて、同社では、ビッグデータ分野における、日本マイクロソフト、日本オラクル、EMCとの協業についても強調。「NECの分析技術、画像処理技術などと、パートナー各社の技術との連携によって、ビッグデータソリューションの商談を広げていきたい」(若目田室長)と述べた。

ビッグデータ分析・検証環境の強化
ビッグデータディスカバリープログラム強化

 NEC 執行役員常務兼CMOの清水隆明氏は、「NECは、全社で社会ソリューションに軸足を置く姿勢を示している。そのなかで、ビッグデータは、SDN、クラウドとともに、ICTの中核としてデータ活用から社会価値創造に貢献することになる。この1年間、ビッグデータに関する実証実験などを行ってきた。その成果をもとに、ビッグデータを体系化したのが、今回の発表になる。NECは、ビッグデータイングレーターとして展開していく上で、NECの独自技術は大きな差別化になると考えている」とし、「自社の商談や実証実験から、お客さまの期待が4つの領域に集約される。そのなかで見えたものを新たなソリューションとして提供する。また、技術だけではお客さまの要望に対応できないと考えており、NEC BigData Support Structureによって、データを活用するための支援体制、基盤を提供する」などと述べた。

 NECでは、ビッグデータ関連事業で、2015年度には1000億円の売上高を目指すとしている。

 なお、NEC Big Data Solutionsは、11月14、15日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催される「C&Cユーザフォーラム&iEXPO2013」で展示される。

ビッグデータ活用による社会価値創造を目指す

大河原 克行