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富士通、食・農クラウドを活用して低カリウム植物を栽培する実証事業

半導体工場のクリーンルームで栽培、徹底した雑菌管理

 富士通株式会社は5日、福島県会津若松市において、半導体工場のクリーンルームを転用し、「FUJITSU Intelligent Society Solution 食・農クラウド Akisai(以下、Akisai)」を活用した大規模植物工場の実証事業を開始すると発表した。

 本実証事業は、富士通ホーム&オフィスサービス株式会社が代表となり提案した「先進的な低カリウム化技術による大規模スマート植物工場ビジネスの実証」が、復興庁と経済産業省に採択されたことを受け、富士通グループ、会津富士加工株式会社、福島県立医科大学などで構成するコンソーシアムが連携して実施するもの。

 本実証事業を通じて、人工透析患者、慢性腎臓病患者も生で食べられるカリウム含有率の低いリーフレタスを栽培し、1人でも多くの人が食の喜びを享受できる社会を目指すとともに、地域産業の振興に貢献するとしている。

 人工透析患者、慢性腎臓病患者など医師からカリウムの摂取制限を受けている人も食べられるカリウム含有率の低いリーフレタスを、会津富士加工や秋田県立大学が持つ低カリウム野菜の栽培技術や知見を生かし、10月より試作、2014年1月から量産出荷する。

 栽培には半導体の製造技術が活用され、富士通セミコンダクターが半導体製造工場のクリーンルームで培った、最適製造条件の割り出しや雑菌管理のノウハウを生かし、空気や液体肥料に含まれる成分などをきめ細かくコントロールすることで、低カリウム野菜の栽培に最適な育成環境を実現。植物工場は、2000平方メートルの実装面積を持ち、低カリウム野菜を栽培する植物工場としては国内最大級のものとなる。量産規模は3500株/日。

 また、富士通ファシリティーズ・エンジニアリングが持つ、半導体製造工場へのインフラ供給や省エネルギー管理のノウハウを生かし、低カリウム野菜の栽培に最適なインフラ環境の整備、供給、省エネルギー化を実現。

 栽培中はAkisaiを活用し、栽培データを継続的に解析し、生産性の高い栽培を実現するとともに、経営・生産・販売といった経営全般を管理することで、効率的な植物工場経営を実現。その後は、生鮮宅配や医薬品・高齢者向け用品などの配送販路を活用し、低カリウム野菜を必要とする人に必要な時必要なだけ届けるとともに、安心して購入できるようトレーサビリティも確立するという。

植物工場における「Akisai」の活用イメージ

川島 弘之