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パナソニック コネクト、物流および製造業向けの「ロボット現場導入サービス」を発表
2025年7月1日 06:15
パナソニック コネクト株式会社は6月30日、物流および製造業向けの「ロボット現場導入サービス」を発表した。
同サービスは、2025年10月から提供を開始する「ロボット制御プラットフォーム」や、2025年6月30日から提供を開始した「システム連携サービス」、2025年10月からα版を提供する「工程自動化支援サービス(仮称)」などで構成。生成AIによる自動プログラミング機能も開発する計画を明らかにした。また、Blue Yonderが提供する「Cognitive Solutions for Execution:Warehouse」との連携により、物流および製造現場の自動化やロボット導入の促進、付加価値を高めることができるという。
パナソニック コネクト 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント CTOの榊原彰氏は、「パソナニックコネクトは、国内SCM(サプライチェーンマネジメント)事業において、実行領域に力を注ぐ方針を打ち出している。今回のロボット現場導入サービスは、実行領域における新たな提案であり、同時に、Blue Yonderによって実現を目指しているオートノマスサプライチェーンマネジメントの第一歩となる。ロボット制御だけでなく、ロボットと人の共同作業を実現することになる」と位置づけた。
また、パナソニック コネクト SaaSビジネスユニット ダイレクターの牛島敏氏は、「世界を取り巻くサプライチェーン環境は、複雑化・高度化する一方で、日本では労働力不足、社会の不安定化、物流コストの上昇、環境問題への対応など、課題が山積している。それに対応するために、国内の物流および製造の現場では、生産性向上、自動化に対するニーズが高まり、ロボットの導入に注目が集まっている。しかし、ロボットの導入が進んでいないのが実態である」と指摘。
導入を検討している企業では、ロボットに関する知識の不足や、導入効果が不明確であること、導入後に変更や保守をできる人がいないことが導入のハードルになっているほか、ロボットSIerでは、カスタマイズが多く、数をこなせていないこと、パッケージ化や横展開が困難であること、ロボットに関するスキルを持った人材が不足していることが課題になっているとし、「標準化を進め、誰でも簡単にロボットを導入、運用できるサービスを提供することで、ロボットSIerと、ロボット導入希望企業の双方が持つ、導入、運用におけるハードルを下げることができる」と、新サービスの狙いを説明した。
ロボット制御プラットフォームは、自動化に向けたロボット導入を促進するプロダクトと位置づけており、現場作業者やロボットSIerが必要な作業を支援。自身で設定可能なユーザーインターフェイスを用意することで、物流現場や製造現場へのロボットの導入を容易にし、運用開始後の負担も大幅に削減する。
また、ロボット制御プラットフォームでは、「マルチロボットメーカー対応」、「ビジュアルプログラミング」、「標準設定テンプレート」の3点が特徴であり、ロボットやさまざまな機器の一括制御を可能にするという。
「マルチロボットメーカー対応」では、ひとつのインターフェイスを用いながらと、複数のロボットメーカーをまたいだ形で、一元的に設定、制御、運用ができることから、他社製ロボットへの変更や現場オペレーションの変化にも、フレキシブルに低コストで対応でき、スキルの平準化にもつながるという。
「例えば、A社のロボットに関する案件が集中した場合、そのスキルを持った技術者が1人しかおらず、限られた案件数にしか対応ができないといった課題が生まれる。しかしロボット制御プラットフォームにより、ロボットメーカーごとに求められていた特定のスキルは不要になり、1人の開発者が多くの案件に対応できるようになる。一度作った設定は、メーカーが異なるロボットに変更しても、設定をそのまま利用できる」とした。
また、「故障したロボットの交換や修理のためにダウンタイムが発生するといった課題に対しても、メーカーが異なっても同等機能のロボットが余っていれば、プログラムを変更することなく、現場でロボットを置き換えだけで、すぐに稼働させることができる」と話している。
「ビジュアルプログラミング」では、ブロックの組み合わせにより、ロボットの動作を簡単に作成することができる。「動作や検出など、機能ごとに分かれたブロックを組み合わせることができるため、誰でもノーコードで、簡単に開発ができる。ロボットと周辺設備を再現した3Dシミュレーション機能も用意しており、PCやタブレットで設定した内容を、すぐに確認し、調整ができる」という。
「標準設定テンプレート」は、主要な動作を組み込んだテンプレートであり、用途の変更や、新たな用途への展開が簡単に行える。「ピッキングやプレイス、認識するといったよく使われる機能や動作を、テンプレートとして用意しており、これをテンプレートブロックとして利用できる。ビジュアルプログラミングよりも、さらに簡単に作成できる」としている。
パナソニックコネクトが、ロボット制御プラットフォームを提供するメリットとして、新たな用途や機能、テンプレートなどを、パナソニックグループの拠点で試すことができ、製品化に反映できること、パナソニックグループとして協働ロボットを持っていないため、ニュートラルな立場で、多くのベンダーとつなぐオープン戦略を推進できること、上位システムであるBlue Yonderなどとのシームレスな連携によって、SCMの全体最適を実現できることを挙げた。
ロボット制御プラットフォームは、パナソニックコネクトの神戸工場において、レッツノート本体に貼られているインテルロゴラベルの貼付工程において採用しているほか、業務用製品のタッチパネルの精度検査工程、コンシューマ製品の部品の梱包工程など、6拠点で活用しているという。
ターゲットとしては、「製造ラインや工場全体の自動化ではなく、製造ラインの一部に導入したいというニーズを狙っている。中小企業にも使ってもらえる。協働ロボットや搬送ロボットに対応した提案も行っていく」とした。
なお、ロボット現場導入サービスを構成する「システム連携サービス」は、2025年6月30日から、順次機能を提供する。Blue Yonderなどによる上位システムと、ロボット制御プラットフォーム、さまざまなロボットベンダーとを有機的に連携させるもので、さまざまなシステムとデータ連携することで、付加価値の高いサービスを提供できるという。
具体的には、Blue YonderのWMS(Warehouse Management System)である「Cognitive Solutions for Execution:Warehouse」との組み合わせによって、各種自動化機器を連携させ、人とロボットを分け隔てなく統合的に制御。物流倉庫の複数工程を同期させることで、出荷作業などの効率化を実現し、より付加価値の高いサービスを提供できるという。
「上位システムから指示があった場合に、自動倉庫、人、ロボットのそれぞれに最適なタスクを、リアルタイムで割り振ることができる。自動化の内容にあわせて柔軟に、システムのスケールアップが可能になる」という。
ロボット制御プラットフォームにおけるパートナー連携の拡大にも乗り出す。
2024年3月から戦略提携関係にあるラピュタロボティクスに加えて、5社のシステムインテグレータおよび販売パートナー、6社のロボット機器メーカーなど、合計で12社との業務提携も発表した。再販型ビジネスとして、パートナーを通じた販売を行うほか、オープンなプラットフォームと位置づけ、各種ロボティクスパートナーとのエコシステムを拡大することで、物流分野にとどまらず、各種製造工程の自動化、効率化への貢献も目指すという。
ラピュタロボティクスとの連携では、パナソニックコネクトのロボット制御プラットフォームとシステム連携サービス、ラピュタロボティクスの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」を連携させたソリューションを、2025年10月から提供を開始する。
人が行ってきたラピュタASRSでのピッキング作業をロボットに代替できるという。
ラピュタロボティクス 代表取締役CEOのモーハナラージャー・ガジャン氏は、「物流倉庫におけるロボットの活用を身近なものにしたいと考えている。だが、倉庫における作業の約80%は、まだ自動化されていないのが現状だ。倉庫からピッキングする作業において、歩行時間が占める割合は77%以上、5メートルの高さがあっても手の届く範囲にしか商品が置けないため、空間のロスは70%以上に達する。ラピュタASRSではモジュール型となっているので、既存倉庫にも設置が可能で、稼働を止めずに導入ができる。多層階でロボットが動き、特殊なピッキングステーションにより、生産性を高めている。生産性は10倍、保管効率は2.5倍にできる。すでに国内16社に導入しており、さらに弾みをつけたい」と述べた。
「ロボット現場導入サービス」の今後の展開についても触れた。
2025年10月にα版の提供を予定している工程自動化支援サービスは、現在、人手で運用している現場の状況に関して、Webの質問に回答するだけで、すぐに自動化できるのか、どれだけ生産性を向上させることができるのか、投資対効果はどの程度になるのかといった評価を、瞬時に算出できるという。
ロボット導入に関わる検討時間を大幅に短縮できるメリットが見込まれ、パナソニックコネクト社内でロボット制御プラットフォームと組み合わせて先行利用したところ、準備、設計、テストフェーズが完了して、実稼働するまでに110日間かかっていたものが、58日間へと短縮。半減できたという。
さらに、生成AIプログラムを活用した新たなサービスを提供。工程自動化支援サービスに入力した内容をもとに、必要な要件をAIが自動でプログラミングすることができるようになるという。検討から稼働に至るまでの日数を、さらに削減できるとしている。
パナソニック コネクトの牛島氏は、「ロボットの導入、運用において障壁となっている課題を解決する新たなサービスを、継続的に提供していきたい」と述べた。
一方、榊原CTOは、Blue Yonderを中心としたSCM事業への取り組みについて説明。「2021年に、インダストリーバーチカルなクラウドベンダーであるBlue Yonderを買収し、パナソニックコネクトの事業そのものを変えていく強い意志を持っている。だが、SCMは、データが正しく入り、正しく処理しなければ機能しない。Blue Yonderの世界中をカバーするクラウドサービスと、パナソニックグループが伝統的に強い現場におけるCPS(サイバーフィジカルシステム)技術を組み合わせて、実行領域をよりフレキシブルで、より賢いものにするのが、SCM事業の基本戦略である。同時に、ロボットメーカーやロボットSIerと一緒になってロボット産業全体も盛り上げて、よりよいSCMをお客さまに提供していく」と語った。
また、パナソニックコネクトのR&D部門には、約400人が在籍し、研究開発からSaaS事業化までの一貫した取り組みを推進。「技術研究開発本部」のほかに、クラウドインフラを提供する「クラウドエンジニアリングセンター」、開発したソフトウェアをSaaSのプロダクトとして顧客に提供する「SaaSビジネスユニット」で構成するTechnology Product Line(TPL)により、開発した製品をクラウドに乗せ、迅速に顧客に提供する体制が整っていることを強調した。