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「62%の消費者がサインアップ時の長いフオームに不満」とOkta調査――コンバージョンへの悪影響も
2025年6月26日 11:03
Okta Japan株式会社は25日、消費者調査「Customer Identity Trends Report 2025」を発表し、その結果を解説する記者説明会を開催した。同調査は、2025年2月に日本、米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ、カナダ、インド、オーストラリアの9カ国にて、各国750人・合計6750人の消費者を対象に実施したものだ。
Okta Japan プリンシパルプロダクトマーケティングマネージャーの高橋卓也氏は、まずカスタマーエクスペリエンスについての調査結果を紹介。「サインアップやログイン時に長いフォームを入力することが最大のフラストレーションだと感じる消費者が、世界で62%にのぼっている」とした。特に日本ではこの割合が71%と、調査対象国の中で最も高かったという。
また、登録やログイン時の不満により、購入を常にあきらめると答えた消費者が6%、頻繁にあきらめると答えた消費者が17%と、合計2割以上にのぼっていることを高橋氏は指摘。さらに、時々あきらめると答えた回答者は40%にものぼり、「企業のコンバージョン率と収益目標達成に直接的な悪影響を与えている」(高橋氏)としている。
日本では、ほかの項目に対する不満も世界平均を大きく上回った。具体的には、パスワードの要件を満たすことに対する不満が61%(世界平均46%)、アカウント作成やログインにかかる時間に対する不満が60%(世界平均47%)、ワンタイムパスワードによるアカウント認証に対する不満が54%(世界平均39%)だった。
一方、登録やログインの問題で購入を断念したことがある消費者は、日本では世界平均の23%より若干低い17%にとどまった。このことから高橋氏は、「日本の消費者は、ログイン体験に不満があってもサービスを使い続けている」と分析している。
消費者が便利だと思う認証要素を聞いたところ、パスワードを「非常に便利」または「便利」と感じる消費者が73%と、最も利便性が高いと考えられている一方で、68%が複数のアカウントでパスワードを使い回していることもわかった。特に日本では、71%のユーザーがパスワードを再利用しており、中でもZ世代は全アカウントで同一パスワードを利用している割合が31%と、際立って高かったという。
安全なログイン方法としては、パスワードを安全と考える割合は37%と低く、指紋認証(71%)や顔認証(62%)などの生体認証が高く評価された。パスキーのような新しい認証方法はまだなじみがないものの、「Z世代やミレニアル世代では半数以上が便利と感じているようだ」と高橋氏は述べている。
調査では、AIエージェントとのかかわりについても調べており、回答者の37%がAIエージェントに「非常に頻繁に」または「頻繁に」遭遇していると回答。ただし、70%はAIよりも人間との対話を好むと回答しており、AIエージェントとの対話を好むのはわずか16%にとどまった。
人間との対話を好む傾向は、世代や国を超えて共通しており、その理由として回答者の64%が「人間が自分のニーズをよりよく理解してくれる」ことを挙げた。一方、AIエージェントを利用しない主な理由としては、「個人データを預けるのが不安」が44%と最多で、「信頼性に不安がある」も33%と高かった。
AIエージェントへの信頼を築く方法を聞いたところ、38%が「AIエージェントの決定を人間がレビューまたは承認する監督体制」を挙げた。このほかにも、「AIエージェントの判断の仕組みや使用データに関する透明性」「公平性/プライバシー/セキュリティを守るための倫理的ガイドライン」などが挙げられた。
高橋氏は、「AIエージェントを導入する際、セキュリティが置き去りにされる傾向があり、認証や認可といったアイデンティティとアクセス管理(IAM)のコントロールなしにAIアプリケーションが構築・展開されることがある」と指摘。
安全なAIエージェントの導入にあたっては、「認証(Authentication):AIエージェントがユーザーの身元を安全に確認できること」「API呼び出し(Calling APIs):AIエージェントがAPIを介してシステムと安全に連携するためのアクセス管理」「非同期ユーザー確認(Asynchronous user confirmation):時間のかかるタスクにおいて、AIエージェントがセッション終了後も安全にアクションを実行できるメカニズム」「認可(Authorization):AIエージェントが必要最小限の権限のみを持ち、動的に更新されること」が不可欠だとした。
- 初出時、高橋卓也氏の肩書きを誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。