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Tintri、仮想化向けストレージ「VMstore」のデータ管理機能がKubernetesに対応
2025年6月24日 06:15
株式会社データダイレクト・ネットワークス・ジャパン(DDNジャパン)のTintri事業部は、仮想化向けストレージ「Tintri VMstore」のKubernetes対応を6月17日に発表した。なお、米国ではすでに発表されていた機能の国内向け発表となる。
Tintri VMstoreは、仮想マシン向けに特化し、利用側からはLUN/ボリュームの管理が不要でシンプルに利用できるストレージアプライアンス製品だ。パフォーマンス可視化や、AIによる自動最適化などの機能も持つ。
今回のKubernetes対応は「VMstore Data Services for Kubernetes(DSK)」と呼ばれる。DSKにより、仮想マシン向けストレージとコンテナ向けストレージを共通してVMstoreで提供し、VMstoreのUIやツールから統一して管理できる。Tintri OS(TxOS)5.6.0.1以降にて、Kubernetes 1.14以降に対応する。
DSKにはKubernetesからVMstoreを利用するためのCSI(Container Storage Interface)ドライバーが含まれ、Kubernetes側にインストールする。CSIは、Kubernetes上のコンテナにブロックストレージやファイルストレージを提供するための共通インターフェイス仕様だ。VMstore CSIドライバーは、日本において、同6月17日より、Tintri VMstoreユーザーに無償で提供される。
こうしたKubernetes対応について、Tintri by DDNのシニア・バイスプレジデントのフィル・トリコビッチ(Phil Trickovic)氏は「VMstoreの特徴はコンテナにも合っていた」と語る。
6月16日~17日に都内で開催されたKubernetesなどのクラウド技術の国際イベント「KubeCon + CloudNativeCon Japan」で来日したトリコビッチ氏に話を聞いた。
データ操作を抽象化したVMstoreの特徴がコンテナにも合っていた
Tintriは2007年に、VMware出身者によって設立され、2011年に最初の製品をリリースした。なお、現在はDataDirect Networks(DDN)の買収を受け、その一部門となっている。
会社を設立して新しいストレージを開発した目的は「仮想化されたデータをインテリジェントに管理する初めての製品を作る」というものだったと、トリコビッチ氏は言う。「彼らが解決しようとしていたのは、VMware ESXiにおいて、1990年代や1980年代のままのアーキテクチャでは効率が悪いという問題だ。一般的な利用パターンに汎用的に対応するのではなく、データタイプやデータのパターンから自動的に最適化する」(トリコビッチ氏)。
こうして仮想化に最適化してVMstoreを開発・販売してきた中で、世の中では2013年からDockerによりコンテナの時代がやってきた。「予期せぬ偶然で、というのは半分冗談だが、こうしたコンテナやマイクロサービスなどのクラウドネイティブにVMstoreの特徴が合っていた」とトリコビッチは説明した。
ここで、VMstoreがコンテナやKubernetesに合っていたというのはどういった点かと聞いたところ、「われわれはすでにデータ操作を抽象化しており、レガシーなデータ操作に依存していなかった」とトリコビッチ氏は回答した。そのほか「レガシーなストレージのように無駄にマシンパワーを必要とする構造ではなかったことや、先見の明のある魔法のようなロジックがあったことは幸運だった」とも同氏は語った。
こうしたデータ操作の抽象化がなされていたことにより、VMstoreの構造を変えることなくコンテナに対応できたという。管理体系も同様で、「例えば、(ストレージベンダーが他社の)買収によってコンテナに対応した場合は、コンテナとほかのものとで管理体系が変わってしまうことがある。われわれは仮想マシンと同じ管理体系をコンテナでも提供している」(トリコビッチ氏)。
では、コンテナへの対応はVMstore CSIドライバーを追加することで実現したのか。その質問についてトリコビッチ氏は「YesでもありNoでもある」と回答した。直接的にKubernetesのCSIに対応したのは、VMstore CSIドライバーだ。ただしコンテナと仮想マシンとでは、パフォーマンス特性やI/Oのプロファイル、パフォーマンス調査方法など、違う点も多数ある。そうした点をふまえてコンテナにも最適化するよう、Tintri OS(TxOS)にも手を加えて、CSIドライバーとTxOSとあわせ、DSKとしてKubernetes対応を提供しているという。
ただし、Kubernetesに対応したからといって、これまでの仮想マシンのワークロードへの対応をやめるつもりはない、とトリコビッチ氏は念を押した。「Citrix、Red Hat、OpenStack、Hyper-V、VMwareといったハイパーバイザーへの対応は、これからも続けて重視していく」(トリコビッチ氏)。
パブリッククラウドでもプライベートでもVMstoreを使っていただく
そして今後2年間の基本戦略として、オンプレミスとオフプレミスのクラウド運用を強化していくという。「多くのケースではコンピューティング要件を排除することで効率を高め、昨年コンテナ化したマイクロコードによりエッジデバイスに移行していく」とトリコビッチ氏は語った。
企業が実運用環境としてKubernetesを動かす場所としては、オンプレミスのプライベートクラウドもあるが、パブリッククラウド上ということも多い。そこにストレージを提供するには、VMstoreもクラウドにある必要がある。
日本では5月20日付けで、Tintriは新しいクラウドソリューションの「Tintri Cloud Engine(TCE)」と「Tintri Cloud Platform(TCP)」を発表した。
TCEは、コンテナ化したVMstoreのソフトウェアをクラウド環境で動かして提供するもので、現在のところAWS(Amazon Web Services)が対応している。
また大手クラウド以外のセカンドティアとして、VMstoreを含んだクラウドサービスをサービス事業者が提供するものがTCPだ。TCPは執筆時点で、米国に3つ、アフリカから中東をカバーするものが1つ、ヨーロッパに1つあるという。なお、日本国内ではまだ提供されていない。
「パブリッククラウドやプライベートクラウドなど、どこにあるかがあまり意味のない時代となっていて、どこでも必要とされるところすべてで使っていただこうと思っています」とトリコビッチ氏。「あなたのエージェンティックAIはどこでも仕事をするので、われわれはどこにでも行きます」(トリコビッチ氏)。