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M2Mによる防災――富士通研と台湾が“広範な地すべり予兆”を研究

 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は8日、台湾の研究機関である工業技術研究院(Industrial Technology Research institute:ITRI)と共同で、防災分野において人手を介さずに機器同士が情報伝達を行う自律型センサーネットワーク技術に関する研究を開始した。

 近年、自然災害による風水害などが世界各地で発生している。防災・減災技術として例えば、地すべりに対しては地質データの収集や、予兆分析手法として、レーザー計測や斜面を掘削して高精度ひずみ計を埋設した測定といった技術などがある。しかし、測定機器自体が高価なことに加え、配線や配置、電池交換などの手間がかかるために限られたエリアしか測定できず、広域で網羅的なデータ取得に向けては課題があった。

従来の技術による測定

 富士通研とITRIは今回、太陽光で自己発電する多数のセンサーを無線で結合、自律的に連携するM2Mネットワークによって、崩落が起こりそうな場所のデータを収集するシステムを開発する。これにより、一部のセンサーが発電量不足や故障で動作しなくてもシステムが継続的に動作する技術、および測定地域を面として広範かつ網羅的にデータを収集する技術の確立を目指す。

自律型センサーネットワークシステムによる測定

 1973年に設立された台湾政府直轄の組織で、応用研究や技術開発を行うITRIが、主にセンサーノード開発を担当。センサー、通信ネットワーク、無線ソフト、電力制御の研究開発を行う。具体的に、センサーノードを地すべりが起こりそうな場所に多数配置し、サーバーに送信されたデータを現地大学の土木工学の専門家に協力を仰ぎながら分析。併せて、自主開発したソーラーアンテナ技術を用いて、効率のよい通信と発電の両立を目指す。

 一方、富士通研は主にセンサーノードを自律制御するソフト開発を担当。遠隔制御やセンサー間の通信エラー回避の研究開発を行う。組み込みソフトや分散処理の技術により、無線通信時のノイズやセンサー故障が発生してもまわりのセンサー同士が連携できる仕組みを構築する。

 両社は自律型センサーネットワーク技術を確立し、将来、防災・減災に関するデータ収集と分析システムへの活用に限らず、幅広い分野で応用していくという。

川島 弘之