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無線LANの柔軟性とコストパフォーマンスを飛躍的に向上――、アライドテレシスがハイブリッド無線LAN「AWC Channel Blanket」を発表

 アライドテレシス株式会社は3日、無線LANのアクセスポイント(AP)の構成において、1台ずつ独立したSSIDを持つ「セル型(マルチチャンネル型)」と、複数台を1つのAPとして扱う「ブランケット型(シングルチャンネル型)」のハイブリッド技術「AWC Channel Blanket(AWC-CB)」を発表した。

 AWC-CBには、8月に発売予定の無線AP新製品「AT-TQ5403」で対応するが、AWC-CBが利用可能になるのは、ネットワーク管理ソフトウェア「Vista Manager EX」の追加機能(追加ライセンス)が提供される10月になる予定。

AWC-CBの製品化予定
アライドテレシス マーケティング統括本部 佐藤誠一郎氏

 アライドテレシスはこれまで、セル型のAPにおいて複数台を自律的に制御し、各AP間や外来波の干渉を抑えて、出力やチャンネルを自動で最適化する「AWC」技術を採用してきた。またブランケット型は、Extricom社から獲得した技術と製品ラインアップにおいて、独自技術で対応してきた。

 アライドテレシス マーケティング統括本部の佐藤誠一郎氏は、「セル型では、移動端末ではAP間を移動するローミング時にパケットロスや遅延が発生する。一方、ブランケット型ではローミングが発生しないものの、全端末が単一チャンネルに収容されるため、電波のとりあいが生じる」と、それぞれの長所短所を説明した。

 AWC-CBでは、この両者を1つのAPで同時に使えるようにする。AT-TQ5403は5GHzW52/W53帯用とW56帯用、2.4GHz帯用の3つの通信機能を搭載しており、3つのうち1つをAWCを用いたセル型、別の1つをブランケット型にして同時運用する、といったことができる。

 ブランケット型のコントローラの役割は、AWCの制御にも使われるネットワーク管理ソフトウェアVista Manager EXが担う。

セル型とブランケット型のハイブリッド技術「AWC Channel Blanket(AWC-CB)」
AWC+旧Extricom社のテクノロジー

セル型とブランケット型の長所を両立

 アライドテレシス Product Integration Engineering部の瀧俊志氏は、ブランケット型を含むローミングの問題を中心に解説した。

 瀧氏によれば、ローミング技術としては802.11k/r/vの「高速ローミング」もあるが、端末側も対応している必要があるという。またローミング全般の問題として、ローミング判断が端末に任されているため、受信感度が下がってもローミングしない端末では通信速度が低下し、同じAPに接続しているほかの端末も遅くなる「Sticky端末問題」があるとのこと。

 これらの問題に対して瀧氏は、ブランケット型では端末の種類によらずローミングレスで使えること、Sticky端末が原理上発生しないことをメリットとして挙げた。

 また、従来のブランケット型では高価な専用コントローラが必要となり、さらにそのポート数やスループットが制約になっていたのに対し、AWC-CBではソフトウェアであるVista Manager EXをコントローラにするため、それらの問題を回避できると語った。

 さらに、従来のブランケット型で課題とされていた、ダウンリンクで同時に送信できる端末が原則として1台であり、増やしてもスループットが上がらない問題についても対処されており、条件によって同時送信が可能になるという。

 こうした点を総合して、AWC-CBは、ブランケット型の利便性とセル型のコストパフォーマンスを両立したものだと瀧氏は結論づけた。

アライドテレシス Product Integration Engineering部 瀧俊志氏
セル型とブランケット型の比較
Sticky端末問題などローミング問題と対策
セル型、ブランケット型、AWC-CBの比較
ダウンリンクの同時送信数の問題と対策
ブランケット型のコントローラの問題と対策

将来はセル型/ブランケット型共存の最適化も

 記者発表では、京都大学 大学院情報学研究科 准教授の山本高至氏も、AWCについて説明した。

 AWCは、アクセスポイントに最適なチャンネル、無線強度を自律的に設定できる技術であり、ゲーム理論に基づいてセル型無線LANの自律制御を実現している。

 山本氏は、これまでの研究成果をもとに、新たにブランケット型(シングルチャンネル型)も含めた自律制御を新たな成果とし、セル型とブランケット型の共存する中での最適化も行えると語った。なお、アライドテレシスの佐藤氏は、AWC-CBのリリースした後で、ブランケット型をまじえたAWCによる最適化も実現したいと話している。

京都大学 大学院情報学研究科 准教授 山本高至氏
AWCとゲーム理論
セル型とブランケット型の同時最適化