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ラクス、AI活用に全方位で取り組む姿勢をアピール 製品への搭載に加え社内活用を推進
メールディーラー、楽楽販売、楽楽明細などに順次AI機能を追加中
2025年7月11日 06:15
株式会社ラクスは10日、AI事業に関する説明会を開催した。AI技術の進化スピードが上がっていることから、AIエージェントを含めたAIに対し、社内での活用と、提供しているサービスへの組み込みの両面で取り組んでいく。
ラクスの取締役 本松慎一郎氏は、「SaaS企業として、また上場企業として、AI活用を売り上げや利益、業績を向上させていくために、しっかりとリンクさせていかなければならない。社内活用において生産性が上がれば、より利益が出せるようになる。お客さまへの提供価値をAI活用によって上げることができれば、お客さまからいただけるお金が増え、新たなお客さまに使っていただくことによって、売上成長への寄与になる。AIをやらなければいけないからやるではなくて、AI活用が自社の成長につながると理解し、取り組んでいる」と述べ、AIに全方位で取り組んでいることを強調した。
製品へのAI組み込みはすでにスタートしているが、クラウドの請求書発行システム「楽楽明細」と「楽楽債権管理」には、AIおよびAIエージェント機能を10月より順次搭載し、請求書発行から債権管理までの業務効率化を進める。
またクラウド型販売管理システム「楽楽販売」についても、2025年内にAI機能を搭載し、利用企業にあった販売管理システムを簡単に構築できる環境作りを進める。問い合わせ管理システム「メールディーラー」は、7月9日から問い合わせ対応の完全自動化を目指した「メール作成エージェント」の提供を始めているという。
サポート部門でのAI活用
ラクスではAIの社内活用、提供するサービスへのAI機能搭載という両面でAIに対応していく。社内でのAI利用のひとつが、サポート部門でのAI活用だ。2025年6月から、サポート部門で「AIヘルプ機能」を導入した。
「問い合わせに対応するスタッフの稼働時間が、9時から17時辺りで終了してしまうことが多いのが実情だが、問い合わせをするお客さまはそれ以外の時間帯に問い合わせをしたいというニーズがある。このAIヘルプ機能によって、24時間365日問い合わせを受け、応答することが可能となる。また、こうしたチャットボット的なもので問い合わせを行う場合、あいまいな検索で答えにたどり着かないという声も多いが、主語がない記載など、あいまいな検索にも対応する。例えば当社の場合、SaaS企業といわれることも、ソフトウェアベンダーといわれることもある。こうしたさまざまな呼称にも対応するなど、通常のサポートサイトで検索を行う場合に比べ、求める答えにはるかにたどり着きやすい」と、ラクスクラウド事業本部戦略企画部の高嶋洋副部長は説明する。
その結果、「この機能を搭載して2~3週間経過したところではあるが、問い合わせ件数が20%ほど減少している」との効果が出ていることを明らかにした。
製品へのAI機能の導入
製品へのAI搭載としては、7月9日から「メールディーラー」にAIエージェント機能を搭載した。
同製品は、顧客から届いた問い合わせメールを、複数のスタッフで共有・管理することが可能なシステムで、「お客さまから届いた問い合わせ管理を通常のメールソフトでしている場合、スタッフそれぞれで管理をするため、どの問い合わせに、誰が、いつ、どこまで対応したのかわからないという問題が出てくる。その結果、対応が漏れる、同じメールに2回返答してしまうなどの事態が起こることが多く、トラブルに発展するケースも出てくる。メールディーラーで集合管理することにより、対応漏れ、2重回答を防いでいく。2002年から提供し、現在まで累計8000社を超えるお客さまに使っていただいている」(高嶋副部長)と説明した。
2024年度にはクレーム検知エージェント機能を提供したが、2025年度は、問い合わせ対応業務を自動化することを目指し、入力内容に応じたメールを自動作成する「メール作成エージェント」を7月に提供した。10月には、過去の応対履歴やFAQから、最適な回答を自動作成する「回答自動作成エージェント」を提供する予定となっている。
問い合わせを受けたナレッジを蓄積していくことで、ナレッジデータをAIに生かしていく環境を構築。AIエージェントによる応答の自動化によって、「問い合わせ対応業務を50%削減することを目指す」(高嶋副部長)と説明している。
さらに2026年度には、問い合わせ対応の精度向上を目指し、「問い合わせ対応自動学習エージェント」「顧客対応エージェント」を提供する計画だ。
販売管理システム「楽楽販売」については、2025年中にAIが業務を理解し、業務を言語化し、細かく洗い出して主要なデータベース構成まで提案できる「データベース(DB)構成提案AI」を提供する計画となっている。
「楽楽販売は非常にユニークなシステムで、お客さまに合わせた販売管理システムを作ることができるが、実はよくいわれるノーコードシステム開発のツールからできている。販売管理業務に適した機能をたくさん備えていることから、販売管理業務に必要な管理機能を作り上げることができる。これまでこのシステム作りについては、当社のカスタマーサクセスが支援し、販売管理業務効率化のお手伝いをしてきた。しかし、お客さまとしてもいちいちラクスの力を借りるのも大変で、大きな工数もかかってしまう。この部分をAIで効率化する」(本松取締役)。
この、AIを活用して自社に合った販売管理システムを構築していくために、ステップを踏みながらAI機能を提供していく計画だという。
「まず、今のお客さまの販売管理業務、業務の流れを見える化する必要がある。見える化した業務のうち、この部分をシステム化しようみたいなことを検討していくことになる。そこから『業務フローのこの部分をシステム化しよう』となった後で、どうシステムに落とし込んでいくか、いわゆる上流の設計というものが必要となる。その後、詳細な設計、具体的な実装システムに落とし込む作業が必要となるが、こうしたステップ・バイ・ステップの全工程を、AIによって自動化、AIエージェント化することを目指し、現在開発を進めている」(本松取締役)。
2025年中にデータベース構成提案AIを提供する計画で、2026年にはシステム要件化アシストAI、2027年には要件自動設定AIエージェントを提供することも計画している。
「楽楽販売のメイン顧客層は、従業員数百人の企業となっている。現在、中期経営計画の最終年で、その後の中期経営計画策定の準備を行っているが、従業員数1000人程度のエンタープライズ企業への導入ができないのか、そのための開発ができないかといったこともAI対応と共に進めていきたい」と本松取締役は説明。より規模の大きな企業に向けた製品開発も念頭にあることを明らかにした。
クラウド型の請求書発行システム「楽楽明細」は、2025年度中にAI-OCRでPDFを読み取り、請求データの加工が不要となるサービスを提供予定。2026年度以降には、請求書発行時に必要となるメールについて、AIが状況や顧客の特性から、メール文面を自動作成する機能を提供することを予定している。
また、債権管理業務を効率化するシステム「楽楽債権管理」は、請求データと入金データをAIが高精度に照合し、自動消込する機能、AIエージェントが督促のメールを作成・自動送付する機能を2026年度以降に提供する計画としている。
こうした計画について本松取締役は、「計画よりも早く開発を完了し、前倒しで提供できるものがあれば、積極的に前倒しをして提供していきたい」とAI搭載による機能拡充を積極的に進めることをアピールした。
- 楽楽明細のメール文面を自動作成する機能、楽楽債権管理の新機能については、初出時、2027年から提供開始予定と記載しておりましたが、ラクスによれば、正しくは2026年度以降とのことでした。本文と資料を差し替えております。