Infostand海外ITトピックス

「スーパーインテリジェンス」の実現を目指す Metaの新しい賭け

 Meta PlatformsがAI部門を再編し、「Meta Superintelligence Labs(MSL)」を設立した。目的は人間の能力を超える「スーパーインテリジェンス」の実現だ。この動きは、単なる組織改編にとどまらず、MetaがAGI(汎用人工知能)開発に総力を投入する戦略的転換を意味する。

「すべての人のためのパーソナル・スーパーインテリジェンス」

 新設されたMSLは、基盤モデルチーム、製品部門、FAIR(Facebook AI Research)を統合して発足した。Wall Street JournalやCNBCなどが報じた6月30日付のMark Zuckerberg CEO名の社内メモは、「すべての人のためのパーソナル・スーパーインテリジェンスの実現」というビジョンを掲げている。

 MSLのトップには、AIデータラベリング企業Scale AIの元CEOで、28歳のAlexandr Wang氏と、元GitHub CEOのNat Friedman氏の2人が就いた。Metaは6月、Scale AIに約143億ドルを出資していたが、これはWang氏を獲得するためだったと報じられている。

 MetaはMSL設立にあわせて、複数の世界的なAI研究者を入社させている。社内メモには、11人の新規採用者が紹介されており、その中にはGPT-4oの音声機能を開発したShuchao Bi氏、OpenAIの画像生成モデルに関与したHuiwen Chang氏、GPT-4o/o3/o4-miniの共同制作者であるHongyu Ren氏、Geminiの推論設計を主導したJack Rae氏らの名がある。

 このうち7人がOpenAIからの移籍だった。ほかにもOpenAIからは、昨年設立されたばかりのチューリッヒオフィスからも3人を引き抜いたという。ここ数週間、Metaが「1億ドル」の報酬を提示して競合他社の人材獲得に動いていると報じられていた。この額はOpenAI CEOのSam Altman氏のポッドキャストでの発言から出た話だが、Meta側は否定している。

 Wall Street Journalによると、Zuckerberg氏は自ら数百人の研究者、エンジニア、起業家に連絡した。メールやWhatsAppでメッセージを送ったが、詐欺だと思って放置した者もいたという。また、OpenAIの共同創設者Ilya Sutskever氏に、同氏が共同設立したスタートアップSafe Superintelligence(SSI)の買収をオファーしたが、断られたという。