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Sansan、クラウド請求書受領サービス「Bill One」の契約件数急拡大をアピール イベントテック事業も順調に成長
2021年1月15日 06:00
Sansan株式会社は14日、2021年5月期上期(2020年6月~11月)の連結業績を発表した。そのなかで、クラウド請求書受領サービス「Bill One」の契約件数が、2020年6月末に比べて10.6倍と急拡大していることを明らかにした。同社のサービスのなかで、過去最速の立ち上がりとなっており、コロナ禍において、リモートワークが広がるなか、請求書処理における企業のニーズをとらえたのが要因だとしている。
Sansan 取締役兼CFOの橋本宗之氏は、「Bill Oneは、コロナ禍のニーズをとらえたユニークなサービスであり、Sansanグループの将来の収益の柱になる可能性がある」と位置づけた。
「Bill One」は2020年5月に開始したサービスで、多数の拠点/部門それぞれに届いた紙やPDFの請求書を、オンライで受領することができる。紙の請求書をBill Oneのスキャン代行センターが受領するほか、メール添付の請求書は専用のメールアドレスで受領。これを99.9%の精度でデータ化できるという。
橋本取締役兼CFOは、「請求書を受け取る企業は、受取先をBill Oneにするだけで、あらゆる請求書のオンライン受領が可能になり、発行する企業も従来通りの形式で請求書の送付ができるため、負担がかからない」と、サービスの特徴を説明。
「コロナ禍において、リモートワークへの移行は企業にとって喫緊の経営課題となっているが、請求書管理業務は紙媒体を受領、処理するため、出社が強いられている。Bill Oneにより、どのようなフォーマットの請求書であってもデータ化し、一元化できる。請求書の受け取りから社内承認までをオンラインで実施可能になる」と述べた。
さらに、他社サービスとの連携も強化した。2020年11月からOBCの「勘定奉行クラウド」と連携し、Bill Oneでデータ化した請求書情報や受領した画像を、勘定奉行クラウド上で確認できるようにした。「請求書の受領から処理までの業務フローをデジタル化とともに、半自動化できることから、経理担当者のリモートワークの実現を後押しできる」という。
また2021年3月からは、弥生の「弥生会計ラインアップ」に対応したファイル形式により、Bill Oneでデータ化した請求書情報を取得可能にする。加えて、2021年春を目標にサイボウズの「kintone」と連携。Bill Oneで受領した請求書情報とのデータ連携により、請求書受領から支払い申請、依頼までの業務をデジタル化できるようにするとのことで、「他社との連携を強化することによりサービス価値を高めたい」としている。
Bill Oneの2020年11月末時点での契約件数は、具体的な数字は公表しなかったものの、2020年6月末に比べて10.6倍になったと説明。2020年12月にはBill One事業部を発足。22人体制でスタートしたが、これを2021年5月までに40人体制に拡大するという。
「Bill Oneは、請求書発行側の企業の行動を変えることなく、受け取り側の企業が請求書データを利用できるユニークなサービスであり、業種や企業規模を問わずに使ってもらえる。対象は日本全国のすべての企業になり、市場の開拓余地は膨大である。契約件数よりも、請求書送付企業数の方が多いモデルでもあり、加速度的に企業との接点が広がることになる。サービスの改善や体制強化によって、2022年5月末までに1000社の契約を目指す」とした。
イベントテック事業も順調に推移
一方、同社では新たな事業として、ビジネスイベントの運営にかかわる課題を解決するための各種ソリューションを提供する、イベントテック事業をスタートさせた。
橋本取締役兼CFOは、「オフラインイベントだけでなく、コロナ禍において急増しているオンラインイベントの課題解決にも活用できるソリューション。セミナーおよびイベントの管理から、開催前、開催中、開催後までの運営全般をカバーできる。投資先であるイベントハブが提供するEventHubオンラインは、2020年4月にサービス提供を開始してから、半年間で利用企業数が約3.5倍、売上高は約20倍に成長している」と述べた。
同社では、イベントテックにかかわるサービスポートフォリオを強化。セミナー実施における一連のオペレーションを提供し、簡単に、効率的なセミナー運営を支援する法人向けセミナー管理システム「Sansan Seminar Manager」や、イベントの受付時や資料請求時に入力するビジネス情報を、QRコードを撮影するだけで、手軽に、正確に登録することができる新世代エントリーフォーム「SmartEntry by Eightオンライン名刺」を提供していることを紹介した。
「Sansan Seminar Managerは、専門的知識がなくても募集ページ作成、セミナー開催、受付などの業務をワンバッケージで運用でき、独自技術により、正確な来場者データベースを構築できる。コロナ禍で注目されているウェビナーにも対応しているほか、MAツールなどとの連携も可能であり、セミナーを単発的な業務から、マーケティング業務につなげ、効果的なセミナー運営につなげることができる」と説明。
また、SmartEntry by Eightオンライン名刺については、「Eightで提供しているオンライン名刺の情報をダイレクトに活用することで、入力の手間を一切排除したエントリーシステムである。イベント受付時や資料請求時の登録フォームは入力のたびに手間がかかるため、登録自体をやめてしまったり、情報入力ミスによって正確な情報が取得できなかったりといった課題があるが、これを解決できる。提供開始以降、複数のイベントで1万2000件以上のエントリーが行われており、イベント業務の効率化とともに、オフラインのイベントでも、新型コロナ対策の一環として非接触型の受付体制の実現に貢献している。今後もイベントビジネスを全方位でサポートする体制構築に取り組む」とした。
上期は増収増益、広告宣伝費の減少で営業利益が大きく増加
今回発表した2021年5月期上期(2020年6月~11月)の連結売上高は、前年同期比21.3%増の76億3600万円、営業利益は同525.4%増の6億8600万円、経常利益は前年同期の1700万円から4億5400万円に急拡大。当期純利益は9100万円の赤字から、3億8800万円の黒字に転換した。第2四半期には、売上高が増加したのに加えて、テレビCMを放映しなかったため、広告宣伝費が前年同期に比べて2億7100万円減少。営業利益が大きく増加したという。
「広告宣伝費は年間25~30億円を想定しているが、上期ではまだ半分に到達していない。下期にこれを使っていく。Sansan事業だけでなく、新たな取り組みに対して広告宣伝を行うことも検討したい」と述べた。
クラウド名刺管理サービスのSansan事業の売上高は、前年同期比19.2%増の68億9900万円、営業利益は同35.1%増の28億5400万円、月額の固定収入を示すストック売上高は33億6200万円となった。「契約件数が増加しているほか、コロナ禍においても解約率が0.65%と低水準で、ストック売上高は前年同期比25.0%増となり、ストック売上比率は94.9%となっている。だが、その他の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新規契約の獲得数の鈍化などがあり、減収となった」とした。
また、「Sansan事業では、契約件数と契約あたり売上高の拡大、ビジネスプラットフォーム価値の拡大に向けた機能強化や他社連携に取り組んでいるほか、2020年6月にはオンライン名刺機能の利用拡大に注力している。オンライン名刺機能では、Eightとの機能連携に加えて、2020年10月からはMicrosoft Teamsとの連携も開始している。Teamsユーザーはカレンダー機能から、Sansanのオンライン名刺を送信できる」とした。
Sansanの契約件数は前年同期比15.4%増の7230件。契約あたり月次売上高は同3.8%増の16万5000円となった。ストック売上高では、契約あたり月次売上高は7.5%増だったという。「営業活動の制約が緩和傾向にあること、パートナーとの協業の成果などが奏功し、中小企業を中心にした新規獲得が進んだ」という。
顧客規模別でのストック収入では、1000人以上の企業が前年同期比17.8%増、100人~999人が同29.0%増、99人以下が同21.3%増となっている。
またSansan事業に従事する社員数は88人増の443人となり、営業部門を中心に人員採用を進めたとのこと。
なお、シード・プランニングが実施した法人向け名刺管理サービス市場において、Sansanは83.5%のシェアを獲得。8年連続でトップシェアとなっている。
Eight事業は売上高が前年同期比46.3%増の7億3800万円、営業損失は前年から1億700万円の改善となったものの、マイナス3億5800万円の赤字となった。
企業向け有料サービスが拡大。Eightのユーザー数は、23万人増の281万人。Eight企業向けプレミアムの契約件数は67.4%増の1949件となっており、1月14日時点では、2000件を突破しているという。
「B2Bサービスのマネタイズ強化と、オンライン名刺機能の利用拡大に取り組んでいる。既存サービスの立ち上げに注力するとともに、新たなビジネスイベントサービスを開始している。2020年11月に開催したビジネスイベント『Climbers 2020』の実施に伴い、BtoBサービスの売上高が大きく増収。Eightのユーザー数は順調に拡大した」という。
Climbersでは、各界のトップランナーによる講義や企業によるオンライン展示会を実施。イベントでは、登壇者とEightのオンライン名刺交換や、Smart Entry by Eightオンライン名刺での参加登録を活用。1万4000人以上のエントリーを獲得したという。
一方、同社では、2021年5月期の業績見通しを据え置き、売上高は前年比18.0%増の157億6700万円、営業利益は前年並の7億5700万円とした。
「新型コロナウイルス感染者数は増加傾向にあり、事業活動に対する一定のマイナス影響はあったが、日本全国に緊急事態宣言が発出された2020年4月、5月に比べると、営業活動における制約などは緩和傾向にあり、連結業績見通しに対しては順調。特に営業利益は高い進捗となっている。第3四半期以降は、売上高成長率の加速に向けてさまざまな戦略や、それに伴う投資を実行する。成長の再加速に寄与する取り組みや投資を強化することで、来年の2022年5月期には、30%以上の売上高成長率を目指す」とした。
現在の社員数は約760人であるが、今後、採用を積極化する考えであり、通期では約200人の純増を計画しているという。
なお、1月21日に、東京証券取引所マザーズから東京証券取引所市場第一部に変更することも発表した。