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Sansan、クラウド請求書受領サービス「Bill One」を小規模企業向けに無償提供

小規模企業のテレワーク推進に貢献

 Sansan株式会社は27日、クラウド請求書受領サービス「Bill One」において、従業員数100人以下の小規模事業者向けに無料提供する「スモールビジネスプラン」を発表した。

 Bill Oneが提供する、請求書のオンライン受領やオンラインでの支払いフローの構築、請求書データベース構築などの機能を活用でき、請求書に関する業務のDX(デジタルフォーメーション)、テレワークの実現や生産性の向上を図れるという。

 スモールビジネスプランでは、毎月100件までの請求書が受け取ることができ、閲覧可能な請求書は最新500件まで。それを超えた場合には、月額10万円からの有料プランに移行する必要がある。

 ただし同社の調査では、受領請求書枚数は月間96.1枚であり、多くの小規模事業者が無償で利用できると見込んでいるとのこと。なお、有料プランで提供されているカスタマサクセス担当者、専任コンサルタントなどは、スモールビジネスプランでは用意されない。

スモールビジネスプラン

 Sansan 代表取締役社長兼CEOの寺田親弘氏は、「Sansanは、日本のDXを支えるビジネスインフラになることを目指している。だが、国内のDX、デジタル化は十分ではない。特に規模が小さい企業ほどDXが遅れている」という点を指摘。

 その上で、「Sansanがビジネスインフラになるためにできることを考えた結果、100人以下の企業に対して、Bill Oneを無償提供することを決めた。制限はあるが、小規模事業者がDXに取り組むには十分である。サービスを利用するだけで仕事の一部がデジタル化し、無駄な工数がなくなる。デジタルによる成功体験を提供し、ビジネスインフラになるための一歩にしたい」と述べた。

Sansan 代表取締役社長兼CEOの寺田親弘氏

 また、Sansan 執行役員 Bill One事業部の大西勝也事業部長は、「日本の企業では、請求書業務のデジタル化の遅れが特に顕著だ。その理由は、請求書を発行する側に依存していること、請求書の情報が限定的にしか活用されていないことにある。請求書は各社がさまざまな方法、さまざまな形式で発行し、到着時期や受け取る担当者もばらばら。受領側だけではデジタル化を完結できない課題がある。また、会計システムに蓄積した請求書情報は一部の人しか見ることができない。請求書は企業と企業の取引の証しであり、この情報の活用に大きな価値があると考えており、全社で共有、活用することで事業メリットを生み出せる。それが理解されれば請求書のデジタル化も進むだろう」と説明。

 「多くのデジタルツールはコストがかかることが障壁となり、クラウドサービスの導入が進まないが、Bill Oneのスモールビジネスプランで、まず始めてもらい、デジタル化の価値を感じてほしい。Webから申し込むだけで、すぐに無料で使える。デジタルツールを活用したことがない企業に活用してほしい」とした。

Sansan 執行役員 Bill One事業部の大西勝也事業部長

 同社では、2022年5月までに、スモールビジネスプランで5000社の契約を目指すほか、請求書のやり取りをオンラインで行うためのネットワーク参加企業で10万社に増やしたいという。

4つの機能を提供するBill One

 Bill Oneは、2020年5月から提供を開始しているクラウド請求書受領サービスであり、「Sansanが開発したアナログを正確にデジタル化する技術を、名刺以外にも当てはめたもの。Sansanで、最も速いスピードで成長しているビジネス」(Sansanの寺田社長兼CEO)とする。

 Smart請求書受領、Smart支払業務、Smart請求書DB、Smart Billing Networkの4つの機能を提供。請求書の受け取りから一元管理まで、請求書に関する業務のデジタル化、効率化を実現するという。

 Smart請求書受領は、あらゆる請求書をオンラインで受け取れるサービスで、郵送で送られる紙の請求書は専門のセンターが代理で受領し、スキャンとアップロードを実施。メール添付などの方法で送られるPDFの請求書は、Bill Oneがそのまま受け取る。

 受領した請求書は、クラウド名刺管理サービス「Sansan」で培った独自のテクノロジーとオペレーションによって、99.9%の精度でデータ化するという。「受領する企業は、請求書の受領先住所をセンターに変えればいいだけ。さまざまな形式や方法で発行されている請求書のデジタル化を、発行企業に負担をかけずに行える」(Sansanの大西事業部長)という。

Smart 請求書受領

 Smart支払業務では、データで請求書情報を受領することにより、支払い業務のワークフローをデジタル化。承認におけるデジタルハンコの押印だけでなく、支払い依頼に必要な関連データやコメント、メモを請求書情報に付与することができる。

 「請求書の支払い業務に関するワークフローを構築でき、ハンコを押すためだけに出社することもなくなる。また、請求書情報は手入力で登録されることが多く、ヒューマンエラーによるミスが発生していたが、Bill Oneの請求書データを活用することにより、そうしたミスがなくなる」という。

 財務会計システムの「勘定奉行クラウド」や「弥生会計」、業務アプリ開発プラットフォーム「kintone」などの他社システムとも連携して、請求書業務フローを構築。今後、さらに多くのシステムと連携できるようにAPIの開発も完了しているほか、全銀フォーマットで出力された支払いデータにも対応する。

Smart 請求書受領

 Smart請求書DBは、クラウド上に専用の請求書データベースを構築。請求書の検索や一元管理が簡単に行えるほか、部門を超えて全社で共有することができる。いままで気がつくことができなかった取引情報をもとに、営業のチャンス創出や購買の適正化に貢献できる点が特徴で、「営業活動をしている会社がすでに取引関係にあることがわかったり、異なる部門で同じものを購入していたことがわかり、適正購買につなげたり、といったことが可能になる」とした。

Smart請求書DB

 Smart Billing Networkは、請求書の発行企業と受領企業のつながり情報を活用して、請求書のやり取りのスピードを上げ、月次決算を加速させることができる機能。請求書を会社単位で受領することで、請求書のステータスを把握することができる。

 今後は、届いていない請求書に関してBill Oneがアラートを出し、ネットワークを使って連絡できる機能を提供する予定だ。「月次決算の早期化を可能にする」とした。なお、Smart Billing Networkを通じて、電子インボイス推進協議会の取り組みも支援することができるという。

Smart Billing Network

無料提供で100人以下の企業のテレワーク実施に貢献したい

 なおBill Oneは、「請求書のDXのスタート」、「テレワークの推進」、「社長の経理業務負担の軽減」の3点に効果を発揮するという。

 同社の調査によると、請求書に関する業務を行うために、勤務先へ出社する必要があるとした人は、経理・財務部門では92.4%、非経理部門では82.5%に達するという。また、1枚の請求書に関わる時間は平均53.4分に達しているとのこと。

 「請求書業務は、全社のテレワークを阻害している。だが、請求書のDXを開始したいと思っても、コストが折り合わないという小規模企業も多い。無料で提供することで、100人以下の企業におけるテレワークの実施に貢献したい。また小規模事業者では、社長が経理業務を行っている場合が多く、アナログでの処理が生産性の低下を招いている。こうした課題をBill Oneによるデジタル化で解決したい」と述べた。

 寺田社長兼CEOは、「今回の無料提供の決断はSansanにとって小さなものではなく、リスクもある。だが、無償で提供するのは慈善事業のためではない。請求書業務を単なる紙の処理だけに終わらせず、非連続な成長を遂げるための価値があるものにし、国内のDXが少しでも前に進むことを期待しているの。加えて、代理受領やデータ化、人的なサービスを提供し、アナログ、デジタルを問わず、オンライン上でやり取りができるネットワークを作りたい。そのために、国内企業の99.7%を占める中小規模事業者にBill Oneを使ってほしい」と語った。