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Palo Altoが250億ドルでCyberArkを買収 統合進むサイバーセキュリティ業界
2025年8月12日 11:26
サイバーセキュリティ大手のPalo Alto Networksが7月30日、同業のCyberArkを250億ドルで買収すると発表した。Palo Alto史上最大の買収案件で、サイバーセキュリティ業界では3月のGoogleによるWiz買収(320億ドル)に次ぐ今年2番目の大型M&Aとなる。Palo Altoが推進する「プラットフォーム戦略」の集大成とも言えるものだが、市場からは統合リスクや過度な集中化への懸念も出ている。
(岡田 陽子=Infostand)
セキュリティ業界では今年2番目の大型買収
CyberArkは、現CEO兼会長のUdi Mokady氏らが1999年に創業したサイバーセキュリティ企業で、アイデンティティ・セキュリティ管理を専門としている。アイデンティティ・セキュリティ管理は従来のネットワーク境界防御とは異なり、CyberArkはすべてのユーザーとデバイスのアクセスを検証する「ゼロトラスト」アプローチを採用している。特権アクセス管理(PAM)は、その中核技術の一つだ。
同社は世界で1万社近い顧客を抱え、2014年には株式公開も果たしている。業績も好調で、2025年第2四半期の売上高は前年同期比46%増の3億2800万ドルに達した。これはPalo Altoの最新四半期売上高の約7分の1に相当する規模だ。
取引条件として、CyberArk株主は保有株1株につき現金45ドルとPalo Alto株式2.2005株を受け取る。これは直近10日間の株価平均に26%のプレミアムを上乗せした水準だ。対価の約9割が株式で構成される株式交換中心の案件となる。
Palo Altoは2018年、Nikesh Arora氏をCEOに迎えた。Arora氏はソフトバンクで孫正義氏の最有力後継者候補だったことで知られる。同氏はCEOとなって以来、積極的な買収戦略を展開してきた。買収企業数は20社以上に及び、時価総額は6倍に拡大している。しかし、今回のような規模の取引はまったく未経験のものだ。
Arora氏は買収の経緯について「300を超えるあらゆる規模のサイバーセキュリティ企業を検討したが、CyberArkが第一の選択肢だった」と説明する。同氏はまた「サイバーセキュリティを深く学ぶほど、真のソリューションはアイデンティティ・セキュリティにあると確信するようになった」とし、「5年後には、この買収がサイバーセキュリティ業界における最重要な動きの一つとして記録されるだろう」と自信を示している。イスラエル技術メディアのCtechが伝えている。
しかし、市場の反応は対照的だった。発表を受けてCyberArk株は13%超の急騰を見せた一方、Palo Alto株は売り圧力にさらされ、発表後数日間で16%安の大幅な下落となった。