大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

日立とパナソニックによる海外ソフトウェア企業の大型買収、その狙いは?

日立のGlobalLogic、パナソニックのBlue Yonder、それぞれの買収を解説する

「人」という観点から大型買収を見ると…?

 パナソニックと日立の米国ソフトウェア企業の大型買収を、「人」という観点から見ると、興味深いことが浮き彫りになる。

 パナソニックによるBlue Yonderの子会社化は、コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長の肝入れで進められてきたものだ。日本マイクロソフトや日本ヒューレット・パッカードの社長などを務めた樋口氏は、新卒でパナソニックに入社。一度退社した自らを「裏切者」と表現しながら、パナソニックに復帰し、IT業界での経験を生かし、既存ビジネスの成長とともに、社内の体質転換にも乗り出し、新たな事業の創出にも挑んできた。

 2017年4月にパナソニック入りする際には、2018年の創業100周年を迎えることもあり、次のようにコメントとしていた。

 「パナソニックには、まだ伸びしろがあり、しかも、その伸びしろは大きい。その成長に向けて、一過性の変化ではなく、持続する変化を起こすことに貢献したい。そして、2018年度に100周年を迎えるパナソニックを、さらに50年、100年続く会社にするためにお役に立ちたいと考えている」

 その気持ちを具現化する最大の取り組みが、今回のBlue Yonderの子会社化だといえそうだ。

 パナソニックにリカーリングビジネスの種を植え付けることができれば、それは、50年、100年続く会社に向けた地盤づくりになるからだ。

 今年65歳になる津賀一宏社長が、6月には会長に就任。56歳の楠見氏にバトンが渡されるなかで、今年64歳になる樋口氏も、いまのポジションで指揮を振るために残された歳月は、それほど長くはないともいえる。Blue Yonderの子会社化は、樋口氏にとって、「今後100年続く会社にするためにお役立ち」の総仕上げといえる仕事になるのかもしれない。

 一方、日立のGlobalLogicの買収は、東原会長兼社長兼CEOが、「世界のLumadaにするための買収」と表現したように、Lumadaの成長が、その成果を推し量る基準となる。

 こうしたなか、2021年6月に日立の社長兼COOに就任するのが、Lumadaの生みの親である小島啓二副社長である。

 「1982年に日立に入社して以来、一貫して取り組んできたテーマが、データから価値を作ることである」と語る小島副社長は、中央研究所に配属以来、技術畑を歩み、中央研究所長や日立研究所所長を歴任。CTOや研究開発グループ長も務めた。

 そして2016年に、サービス&プラットフォームビジネスユニットのCEOとして陣頭指揮を執ったのが、「データから新たな価値を作るビジネスの基盤づくり」である。これがLumadaだ。

日立 代表執行役 執行役副社長 社長補佐の小島啓二氏(次期社長に内定)

 「Lumadaを立ち上げる際に考えたのは、日立が強いシステムインテグレーションのリソースを生かすということ。そのためには、受け身となっていたSI事業の体質を変える必要があった。日立側から、データ活用に関する提案を行い、顧客やパートナーと『協創する』という姿勢になれば、日立が戦えると考えた」とし、「協創型にしていく点では、相当進んだと認識している」と、これまでのLumadaへの取り組みとその成果を自己評価する。

 Lumadaを最もよく知る人物が社長兼COOに就くことは、GlobalLogicの価値を最大化できる人物がトップに立ったともいえる。小島新社長が、GlobalLogicを成長戦略に武器として、どう活用していくのかが楽しみだ。