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パナソニックと米JDAが提携、工場・物流・流通領域でのソリューション開発を共同で実施

 パナソニック株式会社と米JDA Software Group(JDA)は13日、工場・物流・流通領域におけるソリューション開発に共同で取り組むことを発表した。

 その成果の一環として、同日から、米国ニューヨークで開催されていた世界最大級の流通専門展示会「NRF 2019」の両社ブースにて、パナソニックの「荷仕分支援システム(Visual Sort Assist)」「欠品検知システム」「マルチモーダルセンシング技術」「顔認証技術」の4つのソリューションを展示。今後、JDAのソフトウェアである「JDA Luminate」と、パナソニックが製造業として培ってきた技術を組み合わせることにより、統合的なソリューションを提供していくという。

JDAブースでは顔認証技術を活用したソリューションをデモンストレーションした

 NRF 2019の会場で取材に応じたパナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長は、「提携の話し合いを開始したのは2018年2月であり、これだけ短期間に密度の高い提携を実現したことはない。パートナーシップ関係として相互に補完できるものであり、JDAのソフトウェアを生かすエッジソリューションをパナソニックが提供でき、JDAには、現場プロセスイノベーションのビジョンを理解してもらっている。5年後、10年後に、これが、現場プロセスイノベーションのスタートであったといわれるようにしたい」と発言。

 さらに、「パナソニックが製造業で培ったノウハウと独自のコアテクノロジーを活用して、製造業以外にも展開できるトータルイノベーションインテグレータを目指している。今回、AIと機械学習を活用した『JDA Luminate』を持つJDAとコラボレーションすることで、顧客の課題を総合的に解決できるようになる」とした。

NRF 2019の会場で取材に応じたパナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長

 一方JDAでは、「今回のパナソニックとの提携により、顧客に対して最先端イノベーションによる価値を提供できるようになる。両社がそれぞれの市場で築いた顧客基盤を生かし、相互に商材を展開。グローバルに協力しながら新しいソリューション事業を拡大していく。JDAにとっては、日本市場の強化にもつながる」としている。

JDAのソリューションをベースにパナソニックのノウハウやソリューションを融合

 JDAは1975年に設立され、DHLやボッシュなど、大手企業を中心に、全世界4000社以上の顧客への導入実績を持つSCM(サプライチェーン管理)ソフトウェアの大手企業。日本でも、三菱自動車やブリヂストンなどへの導入実績を持つ。現在、全世界の小売トップ100社のうち75社が同社の製品を活用しているとのことで、消費財企業トップ100社のうち77社が採用しているという。また、売上高は約10億ドル(2017年実績)で、出願中のものを含めて400以上の特許を持つ。

 同社の主力製品であるJDA Luminateは、サプライチェーン全体におよぶ次世代ソリューションであり、SaaSやIoT、AIなどのデジタルエッジテクノロジーを活用。小売業界におけるデジタルトランスフォーメーションを加速するツールと位置づけられている。

JDA Luminateの概要
JDAはエンドトゥエンドでSCMソリューションを提供している

 また「Luminate Control Tower」は、サプライチェーン全体を一元的に可視化できる製品で、機械学習を活用して潜在的な課題への対策を事前に行えるのが特徴だ。

Luminate Control Towerの概要

 これらのJDAのソリューションをベースに、パナソニックが製造業として100年にわたって培ってきた知見やノウハウ、さらには各種エッジデバイスを組み合わせ、次世代SaaSの提供や、IoTおよびAI、機械学習、センシング技術、高度分析を活用した統合的なソリューションの共同開発などを行っていく計画。生産計画、需給予測、リードタイム、店舗在庫などの最適化を通じて、SCMの現場におけるプロセス革新を実現するとしている。

 具体的な例としては、パナソニックの荷仕分支援システム「Visual Sort Assist」と、JDAのLuminateとの組み合わせにより、スキャニングとプロジェクションマッピング技術を活用し、倉庫のベルトコンベア上における、荷物の仕分け業務の効率を改善する。

 ここでは、基盤システムと連携して、配達先の変更や人員配置にも速やかに対応し、半自律的な荷物のチェックや仕分けによって、業務の飛躍的な改善が可能になるという。

 「これまでは、出荷先が急きょ変更された場合には、読みとるバーコードなどが記されたシールを張り替えるといった作業が必要であったが、プロジェクションマッピング技術を活用することで、張り替えずに出荷先の変更が可能になる」。

 なお、Visual Sort Assistの導入によって荷物の仕分け作業は約20%削減されるというが、JDAとの組み合わせによってリアルタイムデータが活用され、荷物の発送の遅れなども予測できるという。

荷仕分支援システム(Visual Sort Assist)とLuminateの組み合わせ提案

 このほか、パナソニックの「マルチモーダルセンシング技術」とJDAのLuminate Control Towerとの連携では、人の行動やモノの検知によって、工場、倉庫の現場における作業員の動きのほか、フォークリフトの動きや各種機器の動線の効率化および最適化を実現する。店舗では消費者の動線分析が可能になり、マーケティングプロモーションの最適化が行えるようになるという。

マルチモーダルセンシング技術とLuminate Control Towerとの連携

サプライチェーン全体にわたるソリューションを提供へ

 さらに今回の提携では、JDAのソリューションとパナソニックのμSockets製品群のほか、タフブックや監視カメラ、センサーなどのパナソニック製デバイスとの連動を図ることで、サプライチェーン全体にわたる新たなソリューションを提供できるようになるのが特徴だ。

 例えば、店舗で欠品が発生した場合、パナソニックのカメラなどを利用した欠品検知ソリューションによってデータを生成。そのデータが「Luminate Store Optimizer」を通じて店員に通達され、店員はそれをもとに品物を補充する。

欠品検知システムとLuminate Store Optimizerの組み合わせ

 そのデータはさらに、Luminate Control Towerにより一元的に管理され、各デリバリーセンターに対して、店舗の在庫補充のための出荷指示を出すことになる。一方で、欠品となるほど予想以上に売れたというデータをもとに需要予測を新たに立て、従来の予測値との差を算出。それをもとに、生産現場に対して生産ラインを増やしたり、生産のための人員を増やしたり、といった指示がLuminateから出ることになる。

 新たな生産ラインにおいては、パナソニックのVisual Sort Assistを採用することで、効率的な生産および出荷体制を構築。納期に間に合うように出荷し、需要変化にも柔軟に対応するとともに、安定供給と店舗在庫の最適化を実現することになる。

 現時点ではまだ技術提携の範囲だが、2019年度には製品化や共同マーケティング活動にも取り組み、日本市場はパナソニックが担当する一方、米国市場をJDAが担当。欧州については両社で展開をしていくことになる。

 パナソニックでは、顧客との共創活動を実現するために、東京・浜離宮の拠点に、カスタマーエクスペリエンスセンターを設置しているが、今後、JDAの米国アリゾナ州スコッツデール、英国ロンドンの拠点にもカスタマーエクスペリエンスセンターを開設し、各種ソリューションを展示。未来型の工場、倉庫、店舗を実現する新たなソリューションを相互に紹介する仕組みを作るとしている。