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JDA Softwareとパナソニックが合弁会社設立へ、2019年10月を目標に

工場・倉庫・流通向けのソリューションを国内で販売支援

 パナソニック株式会社と米JDA Software(以下、JDA)は1日、工場・倉庫・流通業向けに共同開発したソリューションの、日本市場での販売を支援を目的にした新会社を、2019年10月を目標に設立すると発表した。

 JDAの日本の子会社であるJDAソフトウェア・ジャパン株式会社が51%、パナソニックが49%を出資して、合弁会社を設立。相互にハードウェアとソフトウェアを供給。既存の販売網を活用して販売する。

 社名や社長、経営陣、販売計画などについては、今後決定する。

 両社は、2018年2月から協業に向けた話し合いを行っており、2019年1月に、工場・物流・流通領域におけるソリューション開発に共同で取り組むことを発表。米国ニューヨークで1月に開催した流通専門展示会「NRF 2019」や、3月に東京・有明で開催したリテークテック JAPAN 2019では、パナソニックの「荷仕分支援システム(Visual Sort Assist)」や「欠品検知システム」、「マルチモーダルセンシング技術」、「顔認証技術」の4つのソリューションを展示し、JDAのデジタルサプライチェーンプラットフォーム「JDA Luminate」との組み合わせ提案を行っていた。

荷仕分支援システム(Visual Sort Assist)
欠品検知システム

 両社が、開発・販売提携にとどまらず、合弁会社の設立にまで踏み出した理由については、パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の原田秀昭副社長が、「日本市場において、待ったなしのサプライチェーンの変革が求められるなかで、ジョイントベンチャーの設立によって、日本市場に対する強いコミットメントを示すことと、組織能力を高めることを目指した。しっかりと日本の顧客に提案し、それを横展開していきたい」と説明した。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社の原田秀昭副社長

サプライチェーンの専門家集団JDAのノウハウを生かす

 米JDAは、1975年に設立したサプライチェーン管理(SCM)ソフトウェア専業メーカー。DHLやコカ・コーラ、三菱自動車、ブリヂストンなど、大手企業を中心に、全世界4000社以上の顧客への導入実績を持つ。

 年間新規顧客獲得は150社規模で拡大。売上高は10億ドルで、現在、全世界の小売トップ100社のうち75社がJDAの製品を導入しているほか、消費財メーカートップ100社のうち77社も採用しているという。

 日本でも100社以上の企業に導入。全世界の社員数は4700人を誇り、日本では、SCMに精通した70人のエキスパートが在籍しているとした。また、ガートナーのマジッククアドラントでは、サプライチェーンの5つの領域においてリーダーと位置づけらており、出願中のものを含めて450以上の特許を持つとのこと。

 JDAソフトウェア・ジャパン ソリューションコンサルティングディレクターの白鳥直樹執行役員は、「JDAは、サプライチェーンソリューションの専門家集団であり、グローバルリーダー企業に対する競争力強化を支援。4000社に対して、4700人の社員で対応している。日本法人は、1997年に設立し、すでに20年の実績があり、製造・小売・物流の幅広い業種に対して、サプライチェーンソリューションを提供している」とした。

JDAソフトウェア・ジャパン 執行役員 ソリューションコンサルティングディレクターの白鳥直樹氏

 製品のうちJDA Luminateは、店舗、物流、工場といったサプライチェーンで発生するさまざまなデータをリアルタイムで連携し、収益性の高いビジネス意志の決定を支援する、次世代デジタルサプライチェーンプラットフォームと位置づけている。

 これまで同社が培ってきたコアソリューションと、パナソニックやFourKitesといったパートナーのソリューションから提供されるデータを活用。Microsoft Azureによるクラウド環境を活用することで、リアルタイムでのデータ収集とそれをもとにした分析を行うほか、JDAの子会社であるBlueYonderなどのAIを活用して、意志決定に必要な情報を導き出す。

 またLuminate Control Towerは、リアルタイムでサプライチェーン全体の様子を可視化。音声によるやりとりで、状況を把握し、解決策が提示されるといったソリューションも実現している。

Luminate Control Towerは、リアルタイムで、サプライチェーン全体の様子を可視化し、音声で対話できる

 JDAのGirish Rishi(ギリッシュ・リッシ)CEOは、「アマゾン/アリババ効果により、ユーザーの購入形態が変化し、小売や物流、製造企業が、消費者のニーズ変化に柔軟に対応することが求められている。そして、市場が急速な勢いで成長しているなかで、自動化、ロボット化、IoTといった技術によって、その成長に対応しており、今後10年間を考えた場合に、AIが重要な役割を果たす。我々は、こうした新たな技術を活用したオープンなサプライチェーンプラットフォームをベースに、エンドトゥエンドのソリューションを提供することになる。今後は、サプライチェーンの自律化を目指しており、これにより、10倍以上の速度を実現できる」とした。

 また、「JDAとパナソニックの提携によって、日本の企業に対してエンドトゥエンドで、サプライチェーンソリューションを提案できる。それに向けて、この1年をかけて両社で詳細を詰めてきた」と、両社の提携について説明。

 その上で、「パナソニックのブランド力・信頼性・能力を活用できること、強固な顧客基盤を持っていること、ロボティクスや画像分析における革新的テクノロジーを活用できる一方で、JDAが持つエンドトゥエンドのサプライチェーンの能力を提供。サプライチェーンに特化した専門性や、最新の自動化技術も提供できる。JDAのソリューションは人員管理・労働管理にも対応しており、最適な人員配備ができる。AI駆動型のシステムによって、日本の労働力不足を解決できるだろう。日本の小売、物流、製造は、アナログをベースにした遅いサプライチェーンから、最新の高速のサプライチェーンに変革するチャンスである。JDAは日本の市場に対して、長期間にわたって強いコミットをしていく」とした。

米JDAのGirish Rishi(ギリッシュ・リッシ)CEO

 一方、パナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長は、「パナソニックが製造業で培ってきたものを、外部の製造業に対して、提案できる時代になってきた。それにあわせて、パナソニック CNS社の社内に新たに現場プロセスイノベーション本部を設置し、現在、20以上の企業とプロジェクトを進めている。つくる、運ぶ、売る、というプロセスを支えるのが現場プロセスイノベーションである。単品で販売するのではなく、困りごとから逆算して、技術や製品を組み合わせた提案を行うことができるのがパナソニックの強みである。パナソニックが持つ顔認証技術やロボティクス技術、次世代通信技術、自動化技術などを活用できる」とする。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長

 さらに、「すでに4つのジョイントソリューションを開発し、イベントでも共同展示を行っている。米国アリゾナ州スコッツデールのJDA本社や、東京・浜離宮のパナソニック CNS社のカスタマーエクスペリエンスセンターにも協業ソリューションを展示している。今回のジョイントベンチャーの設立によって、より緊密にコラボレーションを行い、協業のスピードを速め、お客さまのお役立ちに貢献したい」と述べた。

東京・浜離宮のパナソニック CNS社のカスタマーエクスペリエンスセンターの常設展示の様子

 なお、新会社は国内市場がビジネスの対象となるが、JDAとパナソニックとの協業はグローバルに広がっており、「欧米では、JDAの顧客基盤をテコにした協業をしていく」(パナソニック CNS社の樋口社長)とした。

握手する米JDAのGirish Rishi CEOと、パナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長
13時半から行われた記者会見では、樋口社長はパワポの最初に、早くも「令和元年」と表示した