ニュース

日立とGlobalLogic、Lumadaのケイパビリティを融合したDXサービスを日本市場で提供へ

Lumada Innovation Hub Tokyoにおける協創活動を開始

Lumada Innovation Hub Tokyo とGlobalLogicの協創

 株式会社日立製作所(以下、日立)は28日、2021年7月に買収を完了した米国子会社GlobalLogicの取り組みについて説明。第1弾の協創として、東京・丸の内のLumada Innovation Hub Tokyoを活用し、日本市場におけるLumadaのケイパビリティを融合したDXサービスを2022年度から提供すると発表した。

 日立 Hitachi Global Digital HoldingsのDeputy CEO兼Hitachi Vantara CSOである熊﨑裕之氏は、「GlobalLogicのデザインスタジオおよびエンジニアリングセンターと、Lumada Innovation Hub Tokyoを接続することで、顧客との関係構築、価値創出、社会実装において海外市場での豊富なDX推進実績を生かしたり、プロフェッショナル人財がDX戦略を策定したり、エクスペリエンスデザインと高度なエンジニアリングによってDXを素早く具現化したりできるようになる」との考えを示した。

日立 Hitachi Global Digital HoldingsのDeputy CEO兼Hitachi Vantara CSOである熊﨑裕之氏(過去の会見写真より)

 日立が持つ日本市場での実績や信頼を生かした関係構築、NEXPERIENCEを活用したデジタル人財による課題解決、OTを含むドメインナレッジを生かした実装が可能になるほか、GlobalLogicのChip-to-Cloud(チップからクラウドまで)のソフトウェアエンジニアリング技術を活用した社会実装においても協創の成果が期待できるという。

 「ビジョン策定や斬新なアイデアの創出といった上流サービスだけでなく、そのビジョンを実際の製品やプラットフォーム、顧客体験に実装することができるのが強みになる」としている。

 日立のITセクターでは、サービス&プラットフォームBUのなかに、米国に拠点を持つHitachi Global Digital Holdingsを設置。GlobalLogicおよびHitachi Vantaraを同社の傘下に収め、グローバルにIT事業を推進している。

 「GlobalLogicは、デザイン思考に基づくデジタルエンジニアリングの会社であり、世界中の革新的技術を生み出すディスラプターとのコラボレーションにより、革新的なデジタルプロダクト、プラットフォームを実現し、魅力的な体験を生み出していくことを目指している」とした。

ITセクターの位置付け

 GlobalLogicの2021年3月期の売上高は9億2800万ドル、調整後EBITDA率は23.9%で、全世界14カ国に拠点を持ち、30カ所のエンジニアリングセンター、8カ所のデザインスタジオを設置。2万1000人の社員数を誇る。全世界に400社以上の既存顧客があり、フォーチュン1000社からの売上比率は約60%を占め、上位20社との平均取引年数は10年に及んでいるという。

 さらに、経営戦略コンサルティングや特化型コンサルティング企業、クラウドハイパースケーラーといったアライアンスパートナーとの連携を通じて、企業のDXを支援する体制を構築しているとのこと。

 日立の熊﨑氏は、「経験豊富なシニアリーダーが在籍しているほか、デザイン思考の専門知識、高度なエンジニアリング能力、コンテンツエンジニアリングというDXに必要となる3つの重要な能力が整っている点がGlobalLogicの強みである。デザイナーによる新たなアイデアをもとにビジネスモデルを再構築したり、新たなものを発明したりといった支援により、顧客がデジタルの未来に踏み出すことを促し、チップからクラウドまでのあらゆるレイヤーにおいて、最新技術を駆使するソフトウェアエンジニア能力と、企業にとって最大の資産となるデータを収集し、その活用を支援するコンテンツエンジニアリングにより、顧客体験をよりよいものに変えていくことができる。顧客ごとのデジタルジャーニーをエンドトゥエンドで支援できることが特徴であり、ソフトウェアの力でビジネス価値を最大化することができる」と説明。

 さらに「これは、日立がLumadaを通じて実践してきた姿勢と合致している。GlobalLogicの特徴がLumadaをさらに強化でき、Lumadaを活用した新たなソリューションを生むことにつながる」などとした。

GlobalLogic社の概要
GlobalLogic社の強み
エンドトゥエンドのアプローチ

 今回、新たに発表した、Lumada Innovation Hub Tokyoにおける協創は、日本市場におけるDXサービスを推進するための取り組みとなり、同時に、GlobalLogicの日本市場への参入を実現するものになる。

 日立 Lumada Innovation Hub Senior Principalの加治慶光氏は、「買収が完了した7月以降、情報交換を行い、GlobalLogicの得意領域が認識できた。今後は、実際のプロジェクトに向けた共同推進を行い、協創プロセスの融合に向けて全力疾走する。GlobalLogicのデザイン思考に基づいたデジタルエンジニアリングサービスを活用し、日本の企業のDXを支援する体制を構築していく」と述べた。

日立 Lumada Innovation Hub Senior Principalの加治慶光氏

 Lumada Innovation Hub Tokyoは、2021年4月に設置したLumadaに関するフラッグシップ拠点で、オンラインでも利用可能な5つの協創空間として、「Meet-Up Square」「DX Gallery」「Co-Creation Studio」「Mirai Atelier」「Incubation Base」を提供し、ビジョン構築からビジネス化までの協創プロセスを支援することができる。

 開設以来、オンライン説明会やワークショップなどを継続的に開催。1900人以上が参加しているという。Lumadaユースケースやソリューションの紹介のほか、ビジョンについてディスカッションしたり、デジタル活用のアイデア創出ワークショップを実施したりといった実績があるという。

Lumada Innovation Hub Tokyo

 今回のGlobalLogicとの協創では、DXに関する相互理解を進める「関係構築」、課題分析やプロトタイプ、価値検証などの「価値創出」、ビジネス実装や運用などの「社会実装」を提供することになる。

 すでに、GlobalLogicとの連携による活動を試験的に開始。日立のストレージ事業におけるas a Serviceビジネスモデル強化を題材に、共同でワークショップを実施したことで、「顧客協創プロセスの上流フェーズにおける親和性を確認できた」という。

Lumada Innovation Hub Tokyoにおける顧客協創の取り組み
シナジー創出に向けた活動

 ここでは、GlobalLogicの米国、インド、ウクライナ、ポーランド、英国の5拠点と、Lumada Innovation Hub Tokyoを接続。両社からデザイナーやアーキテクト、DXプロセスの専門家、エンジニアなど約50人が参加。Lumada Innovation Hub Tokyoのデザイナーが、事業部門のニーズを踏まえて、GlobalLogicと共同でワークショップを実施したという。

 「GlobalLogicは拠点ごとに特徴を持っている。その背景にはM&Aによる事業拡大と、買収後もその特長を生かす姿勢をとってきたことがあげられる。多様なケイパビリティ、さまざまなデザイン思考、多様な人材を備えていることが理解できた。日立が持つ日本の顧客との経験、課題抽出力とも相性がいいことがわかった。さらに、リアルとバーチャルを掛け合わせた環境でも、快適なコラボレーションが行えることかもわかった」とする。

今回の協創ワークショップ概要
ワークショップの様子

 今後の取り組みについては、「GlobalLogicが持つノウハウとコンテンツをLumada Innovation Hub Tokyoに持ち込むほか、GlobalLogicからの出向者を抱えて、日本語、日本人だけの協創を支援できる」としたほか、「社内外のプロジェクトを通じて、協創プロセスをブラッシュアップするとともに、日立の製品事業のDXを加速し、GlobalLogicの速やかな日本市場への参入を図る」とした。

今後の計画

 また、GlobalLogicによるDX事例についても紹介した。

 Stellerは、航空業界向けのデジタルマーケットプレイスの構築。ユーザーテストを繰り返し行うことで、リアルタイムの見積もりや安全な取引を実現。航空機の運航管理ソフトウェアなどを組み込み、プライベートフライトの空き状況などを把握。適切なリソースを、適切なタイミングで柔軟に提供できることができるようになったという。

 マクドナルドでは、モバイルアプリやホームページ、デジタルメニューボードなど、顧客接点の強化に向けて、プロトタイピングを実施。米国、英国、オーストラリア、中国では、調査データをもとにしたビジネス機会の特定や新たな提案を行い、グローバルで統一したユーザー視点の顧客体験をデザインしたという。

Stellerの事例
マクドナルドの事例