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パナソニック CNS社の樋口社長兼CEOが記者会見、Blue Yonderと進める事業などを説明

 パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社の樋口泰行社長兼CEOは22日、同社の事業戦略について説明した。

 パナソニックは、2022年4月から持ち株会社制に移行し、CNS社はパナソニックコネクト株式会社になるが、今回、先行してロゴを初公開している。新たなロゴでは、CONNECTの文字部分には、Blue Yonderがロゴに使用していたカラーをそのまま採用。「両社が一体的に協業を進めていくこと、One Teamになるというコミットメントを表したもの」(樋口社長兼CEO)と述べた。またパナソニックは、2021年9月にBlue Yonderを100%子会社化しており、今回の会見にはBlue Yonderのギリッシュ・リッシCEOも同席した。

新ロゴ

 樋口社長兼CEOは、これまでの取り組みについて「2017年4月にCNS社を発足し、経営の根っこには健全なカルチャーが必要であるとの考え方からさまざまな改革に挑んだ。目的は強い会社になることである。そのために俊敏で、前向きで、進化するマインドを持った組織の実現を図った。まずは、本社拠点を東京に移し、働き方の近代化、内向き業務の徹底した削減、ICTツールの活用、モチベーション向上のための各種施策、経営の近代化などを図ると同時に、各事業での製品力、オペレーション力、ビジネスモデルの強化、顔認証や現場プロセスに関するプロジェクトの推進を行った」と振り返る。

 また構造改革では、「セキュリティ事業への外部資本の注入、岡山工場の閉鎖、コミュニケーション事業やドキュメント事業の終息、PAC(パナソニックアビオニクス)傘下で船舶用衛星通信サービスを行うICTグローバルの売却、Blue Yonderの買収を完了するといった構造改革を行ってきた」と語った。

 その上で、「大量生産時代は売上成長が評価されたが、私のミッションは、長続きする収益エンジンを持ち、次世代に引き継ぐことである。ハードウェア事業は、持続性のある収益エンジンに入れ替えないといけない。クラウドベースで、リカーリング型のビジネスが必要だった。Blue Yonderは75%がリーカリングビジネスであり、新年度が始まった時点で75%の売り上げが確定し、利益ではさらに高いものを確保できる。しかもミッションクリティカルなところで使われており、持続性が高い。これが新たな収益エンジンになる。買収金額が高い理由もそこにある」などと述べた。

 なお、2022年4月にスタートするパナソニックコネクトについては、「ビジョン、ミッション、バリューなどの経営方針については現在策定中であり、別の機会を設けてきっちりと説明する」(樋口社長兼CEO)と述べた。

パナソニック 代表取締役専務執行役員兼コネクティッドソリューションズ社 社長兼CEOの樋口泰行氏

Blue Yonderはサプライチェーンにフォーカスした企業である

 今回の説明会では、Blue Yonderの現状などについて、時間を割いて説明した。

 Blue YonderのリッシCEOは、「Blue Yonderは、サプライチェーンに特化した企業として、小売、製造、物流の顧客ニーズに応えることを目指している。地球上のすべての人や組織が、その潜在能力を発揮できるよう支援することをミッションにしている。また、顧客が実現したと考えていることの結果にこだわり、たゆまぬ自己変革を進め、そのために衆知を集め、顧客やパートナーとの共感や共創に取り組むことが、Blue Yonderのコアバリューであり、これが成功の原動力になっている」などと述べた。

Blue Yonder CEOのGirish Rishi(ギリッシュ・リッシ)氏

 2020年度の売上高は約11億ドル、ARR(SaaSによる年間経常収益)は5億ドル。全世界5500人の従業員を擁し、サプライチェーンの領域において約420件の特許を取得している。また顧客維持率は95%に達し、米国のボトル入り飲料水の5割のサプライチェーンがBlue Yonderで稼働。せっけんでは全世界60%、処方薬では全世界の70%でBlue Yonderが利用されているという。また、全世界で年間1650億本の瓶ビールが、Blue Yonderを利用して出荷されているとした。

米国のボトル入り飲料水の5割のサプライチェーンがBlue Yonderで稼働しているという

 「現在、約3100社にBlue Yonderが利用され、コロナ禍においてもサプライチェーンを維持してきた。輸送ルートが変わったり、輸送方法が変わったり、労働力や在庫情報が変化したり、といったリアルタイムの情報を、エンドトゥエンドで活用できるサプライチェーンがより重要になっており、Blue Yonderはそうしたニーズに対応できた。コロナ禍では、従業員が積極的にモバイルアプリを利用したり、消費者がeコマースに100%移行したりしたことで、新たな決済方法への対応が迫られるといった変化があったが、これにもスムーズに対応できた。スエズ運河が閉鎖されたときにも、データにより状況を見える化していたため、Blue Yonderを活用していた企業は必要な対策を採ることができた」などとした。

Blue Yonderの実績
【お詫びと訂正】
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 リッシCEOが強調したのが、「Blue Yonderはサプライチェーンにフォーカスした企業である」という点だ。「データベースも、財務システムも、営業システムも、CRMも、人事管理も行わない。その一方で、サプライチェーンのすべてのノードを抑えており、在庫予測や需要予測、倉庫、輸送、労働力、小売店舗、eコマースまでをカバーする。これは他社にはないユニークな点である。そして、社員のすべてがサプライチェーンのエキスパートである点も特徴だ」と述べた。

サプライチェーンの時代に突入する

 これについては樋口社長兼CEOも言及。「SAPやOracleのような事務系ソフトウェアとの違いは、現場を理解していないと開発できないという点。サプライチェーンソフトウェアは、現場をコンサルティングするような人材でないと開発できない。人種が違い、匂いが違う。そういう意味でも、パナソニックの現場プロセスイノベーションのビジョンとの親和性が高い。サプライチェーンソフトウェアに集中できることが強みである」と述べた。

 また、現在、Blue Yonderの年間経常収益バックログが10億ドルに達し、これらが3年~5年後に収益になることを示したほか、2021年には、米Microsoftが表彰するパートナー・オブ・ザイヤーのグローバルISV部門を受賞。日本マイクロソフトのオートモーティブ・アワードも受賞したことに触れ、「マイクロソフトとは緊密な関係を構築しているほか、アクセンチュアやPwC、E&Yとも戦略的パートナーとして協業している」と説明した。

Blue Yonder事業の強み

 また、「Blue Yonderの主力製品であるLuminateは、エッジにある情報をリアルタイムに活用できるのが特徴だ。倉庫、運輸、工場、店舗を結んだサプライチェーン全体のオーケストレーションが可能になる。パナソニックと組むことで、より強力なポートフォリオを用意でき、現場であるエッジ領域を強化できる。自律化したサプライチェーンエッジの実現につなげたい」との考えも示している。

 さらに、「APIを通じて、パナソニックの製品との連携が可能になる。北欧や北米の寒い時期に、小売店の棚にスープの缶がないということを、パソナニックのセンサーと画像認識技術でわかると、スープのフルフィルメントを自動的に開始するといったことができるようになる。10年後には、スマートシティの領域などが活用できる可能性もあるだろうが、いまはサプライチェーンにフォーカスしている」などとした。

Blue Yonderの成長戦略

普及段階に入る日本にあわせてサプライチェーンソフトの市場展開を強化

 一方、樋口社長兼CEOは、Blue Yonderとの連携について説明。「2018年にBlue Yonderと初めて接点を持ってから3年半を経過し、ジョイントソリューションの開発、日本におけるジョイントベンチャーの設立、20%の出資を経て、100%の買収に至った。Blue Yonderは、サプライチェーン領域のパッケージソフトウェアに強みを持っている。パナソニックのセンシング、IoT、エッジデバイス、ロボティクスとの組み合わせにより、この領域で強力にビジネスを推進できるようになる。日本では、サプライチェーンソフトウェアがこれから普及段階に入る。それにあわせて、日本における市場展開を強化する。また、Blue Yonderとは、製品面で高い親和性があるが、経営理念や企業文化の面でも親和性がある。近代的な経営手法という意味でも、多くを学ぶことができる企業であると確信している」と話す。

 また、「ハードウェアだけでは戦えないためにソリューション移行している会社は多いが、パナソニックは、現場において、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを追求することが他社と大きく異なる。20%出資の状況では突っ込んだ協業ができなかったが、100%出資となってからは両社の会話が急速に始まっている。すでに、多くの人員を米アリゾナ州のBlue Yonderの拠点に送り込んでおり、11月には私も行くことになる。お客さまへの訪問も開始しており、PoCも始まっている」と、現在の状況について説明した。

 さらに、「上位の経営課題やニーズをとらえ、それを実現するBlue Yonderのソフトウェアに必要なハードウェアを開発するという逆算も行っている。パナソニックにはこんなハードウェアがあるので、Blue Yonderの顧客に売ってくれということは間違ってもやらない。ハードウェアは、本当に必要なものを日本人のエンジニアリング力と、顧客に寄り添って最後までやり切る力を組み合わせるものに限定する。すり合わせの技術が必要など、パナソニックが集中できるエリア、専鋭化できるエリアのみで、ハードウェアを製品化していく。また、Blue Yonderを強化するために不足しているパーツをそろえていくための強化はするが、中大型の買収は考えていない。Blue Yonderの顧客にとってメリットの生むための投資を行う」とした。

 さらに、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長の原田秀昭氏は、「パナソニックが得意とする部分は、センサーを活用した画像認識である。これはハードウェアというよりも、ソフトウェアである。Blue Yonderのソフトウェアと組み合わせると、トラックや鉄道、船舶などの位置がわかったり、倉庫では人の動きをとらえて最適化できたりする。現場を改善していく能力を組み合わせることでさらに進化し、そこにBlue Yonderの技術が積みあがっていくという回転が生まれれば、パナソニックと顧客がより緊密な関係を築くことにつながる」と発言。

 「1月下旬の完了を目標にしている100日プランでは、最大の目玉となるのが、パナソニックが持つ画像認識などのソフトウェアと、Blue Yonderのソフトウェアを組み合わせて、顧客に提供する仕組みの構築である。米Blue Yonderに開発拠点を置くことも考えており、顧客に近いところで開発することで、Blue Yonderの競争力をさらに高めることができる。今後5年、10年のコアビジネスはSaaS型、リカーリング型になる。その大きなエンジンがBlue Yonderになる」と語った。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長の原田秀昭氏

 現在は、パナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口社長兼CEO、原田副社長と、Blue YonderのリッシCEOなどが参加するトップ会議を定期的に実施。原田副社長の傘下にインテグレーションチームを設置し、経営企画部門だけでなく、人事、経理、開発などすべての職能から参加して、毎日のように、日米でコミュニケーションを図っているという。また、社外取締役を任命すること視野に入れ、さまざまな意見を取り入れる環境をつくっているところだと説明した。

 一方、航空機向けエンターテインメントシステムや機内インターネットシステムなどの事業を行うアビオニクスについては、「独立したシステムソリューションのビジネスになっている。地上でのエンターテインメント体験に近いものが要求されている。機体で電波を受けて、機内Wi-Fiで展開することについては、パナソニックが主導権を取れる事業だととらえている」と述べた。