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パナソニックが現場業務の支援事業を強化、SaaS型の「現場最適化ソリューション」を提供

 パナソニック コネクティッドソリューションズ社およびパナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社は19日、両社が取り組む「現場プロセスイノベーション」の国内事業戦略について説明した。

 現場プロセスイノベーションの国内推進体制を、従来の約470人体制から約3000人体制へと、約6倍に拡大。さらに2020年度には、販売で20%、利益で40%のリカーリング比率を、2030年度には販売で30%、利益で60%に拡大することを目指す。

現場プロセスイノベーションの国内推進体制
リカーリング比率を拡大

 従来は、製造、物流、流通の3分野を「現場プロセスイノベーション」の対象領域としていたが、体制強化とともに、これらを「特に力を入れている領域」と表現した。

 パナソニック コネクティッドソリューションズ社上席副社長 兼 パナソニック システムソリューションズ ジャパン代表取締役社長の片倉達夫氏は、「今後は、輸送、映像制作などをはじめ、パナソニック システムソリューションズ ジャパンが取り組む全業界に対して、現場プロセスイノベーションを推進することになる。150人の現場プロセス本部と、2300人のパナソニック システムソリューションズ ジャパンが一体となって推進していく。サプライチェーンマネジメント(SCM)領域の事業拡大と強固な事業基盤を確立することで、現場のクリティカルな課題を解決し、事業成長を加速できる」とした。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長 兼 パナソニック システムソリューションズ ジャパン代表取締役社長の片倉達夫氏

 また今回は、AIを活用したSaaS型業務アプリケーション群「現場最適化ソリューション」も発表している。

現場プロセスイノベーションを強化

 パナソニック コネクティッドソリューションズ社では、2018年5月に発表した中期経営戦略のなかで、「現場プロセスイノベーション」を打ち出し、同社の中核的な事業に位置づけてきた。

 ここでは、造る(製造)、運ぶ(物流)、売る(流通)の領域において、画像認識やセンシング技術を通じて現場の人やモノの動きをとらえて、これらをデジタルデータに変換。サイバー空間で分析し、その結果をフィードバックすることで、現場の課題を解決する提案を行っている。

 パナソニック システムソリューションズ ジャパンの片倉社長は、「パナソニックの現場プロセスイノベーションは、インダストリアルエンジニアリング(IE)とデジタルトランスフォーメーション(DX)のかけあわせによって、サプライチェーンマネジメントの課題を解決し、企業の経営に貢献できるものである。また、IEとDXによる取り組みは、あらゆる業界に対しても有効なものになる」とコメント。

 また、「パナソニックの製造業100年のノウハウと、IEを活用した現場の最適化オペレーション」、「画像認識やセンシング技術を駆使した現場のプロセスの可視化」、「現場の最適化を支えるソフトウェア」の3点をパナソニックの現場プロセスイノベーションの強みとして定義。コンサルティング、サービス、運用を通じて、現場の最適化オペレーションを実現すると述べた。

現場プロセスイノベーションの強み

 なお、IEとDXの組み合わせによる現場改善によって、パナソニック彩都パーツセンターでは生産性を25%向上したほか、10.8%のコスト削減、600分かかっていた分析時間の、15分への短縮を実現。パナソニック物流 電材厚木物流センターでは、自動化を含むピッキング業務の効率化によって、生産性を1.5倍に高めたり、棚卸しの工数を10%削減したり、といった成果が上がっているという。

 さらにヤマト運輸でも、パナソニックが持つIEのノウハウを活用した現場改善が進んでいることを紹介した。

パナソニック彩都パーツセンターでの実績
パナソニック物流 電材厚木物流センターでの実績

サプライチェーン領域の課題解決に特化した「現場最適化ソリューション」

 一方、新たに発表した「現場最適化ソリューション」は、製造、物流、流通のサプライチェーン領域の課題解決に特化したアプリケーションと位置づけている。

 これらの領域の業務アプリケーションをクラウドで提供。ユーザーごとにカスタマイズで提供するエンタープライズソリューション、さまざまなシステムをモジュール化して提供するスタンダードソリューションとして展開。パートナーと連携したソリューション提供も行っていく。

現場最適化ソリューション

 パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務兼パナソニック システムソリューションズ ジャパン 取締役 執行役員副社長の山中雅恵氏は、「サプライチェーン領域におけるシフト作成、入庫や仕分け作業、ピッキング作業、在庫管理、品出し作業などの各業務を、効率的に、無駄なく連携できるようにサポートする」とした。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務兼パナソニック システムソリューションズ ジャパン 取締役 執行役員副社長の山中雅恵氏

 物流では7つのアプリケーション群、流通では8つのアプリケーション群を用意。これらを単独で利用できるほか、複数のアプリケーションを利用することで、業務プロセス間の同期を可能にし、複数拠点に対して、標準化された業務プロセスを、業務アプリケーションとして短期間に展開可能という。さらに、おのおののアプリケーションを組み合わせて利用することにより、サプライチェーン現場のエンドトゥエンドの工程を総合的に可視化および最適化できるとした。

 また、ネットワークカメラなどのエッジデバイスを通じてタイムリーに課題を可視化するとともに、これをもとにコンサルタントが分析を行い、業務プロセスの標準および基準値を決定。標準値に比べて長い作業時間や工数、滞留時間などの無駄を割り出してギャップを取り除き、その上で、AIがアシストする新たな計画に基づいて、最適な業務プロセスを実行することによって、現場の業務効率化を実現するという。

物流における現場最適化ソリューション
流通における現場最適化ソリューション

 また現場のプロセスをより最適化するために、今後は、BlueYonderとの連携を強化する。小売店舗では、画像認識やセンシング技術を活用して商品棚を可視化。欠品状況を把握したり、POSデータとの連動により、需要予測の精度を向上させ、最適な発注につなげたりすることができるとのこと。今後、BlueYonderとの連携を通じて、オートノマスサプライチェーン(自律的な現場)の実現を目指すとも説明している。

BlueYonderとの連携によるメリット

 コロナ禍では、需要の急激な変化によって、マスクや粉ものの食材が売り切れることが長期化したり、製造現場では需要の変化により、日用品の発注が増加し、工場の生産、調達、人員の調整などの混乱が起きたりといった課題が発生しているほか、物流現場では消費行動の変化によって、出荷量が増加。配送の遅れなどの課題が発生しているという。こうした需要の変化に対しても解決を図ることが可能な、自動化したサプライチェーンソリューションの実現に取り組むとした。

 パナソニック システムソリューションズ ジャパンの片倉社長は、「日本企業のDXの課題は、現場に暗黙知が多く、誰にでもわかる業務プロセスになっていないこと、業務が個別最適化されており、ノウハウが共有されずに、人の経験に依存し、可視化できていないことなどに起因している。現場の業務プロセスを定義しなかったり、標準値を策定しなかったりするままでデジタルを導入すると、真の課題を発見できずに、システム導入の効果や改善の成果も期待できない。パナソニックでは、これらの課題を解決し、業務プロセスを定義し、誰が行っても同じ結果を生み出せるようにサポートできるノウハウがある」と強調した。

 なお、パナソニック コネクティッドソリューションズ社は、2022年4月にパナソニックから分社化し、パナソニックコネクトに変更する。また、全株式の取得を発表しているサプライチェーンソフトウェアの専門企業Blue Yonderについては、「第3四半期(2021年10~12月)までの契約完了を目指し、関連当局との手続きを進めている段階である」と述べた。