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パナソニック、新事業「現場マルチネットワークサービス」の提供開始を発表

 パナソニック株式会社とパナソニック システムソリューションズジャパン株式会社は17日、新事業である「現場マルチネットワークサービス」を、4月1日から提供開始することを発表。メディア向けの説明会をオンラインで開催した。

 パナソニックでは、人やモノの動きをデジタルデータとしてとらえ、それらをサイバー空間で分析し、顧客の経営課題を解決する「現場プロセスイノベーション」事業を推進しており、それを実現するコアとして、顔認証やセンシングによって現場の課題を可視化・解決する「現場センシングソリューション」を、2020年7月に発表していた。

 今回はここに、新たなコアとして現場マルチネットワークサービスを加えることで、現場の可視化、情報の共有、作業の効率化などをサポートし、現場プロセスイノベーションをより加速していくことが狙いであるという。

 新事業開始の背景をパナソニック システムソリューションズジャパン 代表取締役副社長 奥村康彦氏は、「現場マルチネットワークサービスは、ネットワーク、ソフトウェア、エッジデバイスなどのソリューション群を、顧客の課題に合わせて提案し、導入支援、構築、運用サポートまでトータルに提供するサービス。ネットワークについては5Gに限らず、マルチな提供を目指す。これまで得意としてきた公共(社会インフラ)の分野にとどまらず、製造、物流、流通などさまざまな業界のDXを支援するため、それぞれのプレイヤーと連携していく」と説明した。

パナソニック システムソリューションズ ジャパン 代表取締役副社長 奥村康彦氏
現場プロセスイノベーションを実現する「現場センシングソリューション」と「現場マルチネットワークサービス」
現場マルチネットワークサービス

 さらに、現場マルチネットワークサービス事業をダイナミックに推進するため、全体のハブ機能を担う新組織「ネットワークサービス事業センター」も同時に立ち上げる予定であるという。

 奥村氏は「ネットワークサービス事業センターを中心に、社内の営業部門、SI・クラウド部門、フィールドサポート部門、研究開発部門を総動員し、2000名を超える推進体制を構築する。また、これまでパナソニックのネットワーク事業は業界ごとに垂直統合型だったが、各階層のソリューション郡をパッケージ化することで、パートナーとの連携も拡大していく」と述べ、さらに経営目標として「2025年までに累計で1,000億円の販売と、業界シェアナンバーワンを目指す」とした。

現場マルチネットワークサービスの推進体制

現場マルチネットワークサービスの事業戦略

 現場マルチネットワークサービスの事業戦略として、パナソニック システムソリューションズ ジャパン パブリックシステム事業本部 サービス 事業企画部 部長 野口太一氏は、「エッジデバイスを含むエンドトゥエンドのサービス提供」「マルチな無線ネットワークでデータ連携を実現」「オンサイト、リモートのサポート体制で現場のDXを支援」を紹介した。

パナソニック システムソリューションズ ジャパン パブリックシステム事業本部 サービス 事業企画部 部長 野口太一氏
現場マルチネットワークサービスの事業戦略

 エッジデバイスを含むエンドトゥエンドのサービス提供について、野口氏は「パナソニックは、これまでさまざまなお客さまの課題を解決してきたエッジデバイスとソフトウェアを多数所有しており、現場マルチネットワークサービスが加わることで、これらのエッジデバイスとソフトウェアを最適に組み合わせられるようになる」と説明した。

 また、その具体的な事例として、野口氏はDaigasの事例を紹介し、「合計で約100万平方メートルの広大な敷地に無線ネットワークを構築する際、防爆型のWi-Fiネットワークでは大きな費用負担になることが課題となっていた。そこで防爆型Wi-Fiよりも安価に整備可能なプライベートLTEを紹介し、採択いただいた。現在は、そのネットワークを活用し、『デジタル点検』『遠隔指導』『遠隔立ち合い』などの効果が期待できる現場の作業効率化ソリューションを検討いただいている。また、現場のデータを分析することで、ボトルネックの可視化などもできる」と説明した。

 さらに、パナソニックは自社の物流倉庫や工場において、画像センシングによる作業の可視化などオペレーショナルなユースケース検証を実施し、使える形でモデル化する事例についても紹介した。検証を繰り返してノウハウを蓄積することで、現場の課題を解決するソリューションをモデル化していくという。

エッジデバイスを含むEND to ENDのサービスの提供
DaigasグループのプライベートLTEを活用したネットワーク構築事例
自社フィールドにおけるユースケース検証およびソリューションのモデル化

マルチな無線ネットワークを可能にする製品ラインアップ

 マルチな無線ネットワークを可能にする製品ラインアップについては、「プライベートLTEシステム」「ローカル5Gシステム」「Wi-Fiアクセスポイント」が紹介された。

 プライベートLTEシステムは、すでに提供されている「自営BWA(2.5GHz)」に加え、今年の6月には「sXGP(1.9Ghz)」が発売される予定となっている。これらはパナソニックのLTEコアで管理を統合することができるという。

 ローカル5Gシステムの事業については、2021年1月に実験試験局免許を取得しており、2022年4月に製品の発売を開始する予定となっているが、それに先行する形で中継用のリンク装置「5G GateWay」の販売を開始している。キャリアとの連携を含めたマルチな無線ネットワークを構築するラインアップを拡充していく。なお、2021年度はローカル5Gの実証実験をすすめつつ、2022年度の発売に向けたコンサルティングを開始する。

 「プライベートLTG、ローカル5G、Wi-Fiが個々のネットワーク機能を発揮するだけでなく、それぞれのネットワーク間をつないでデータのやり取りを可能にすることで、現場のニーズに合わせた最適なネットワークを提供していく」(野口氏)。

マルチな無線ネットワークでデータ連携を実現
サービス・製品ロードマップ

 現状の現場では、既存のWi-Fiネットワークとも連携しつつ、プライベートLTE、ローカル5Gといった新たなネットワークを構築、導入したいという要望がある。

 野口氏は「多くのお客さまと話をしていると、無線ネットワークをすべてローカル5Gにしたいという話は少ない。敷地内では施設のWi-Fi設備との連携、広域エリアではスマートフォンの利用を求め、エリアによっては高精細画像を伝送するなどエリアごとに用途が異なることが一般的」と説明した。

マルチネットワークへのニーズ

 このように複数の無線ネットワークを統合的に管理・運用したいという要望に応えるため、パナソニックではマルチアクセス技術やAV-QOS技術の開発に着手している。野口氏は「現状ではLTEコア装置でBWA、sXGPを統合することで実現しているが、ローカル5Gでは5Gコアネットワーク装置で、BWA、sXGPに加え、パナソニックの独自技術でSIMを搭載していないWi-Fi機器なども含めた統合的な接続認証を実現する。これによって、既存ネットワークの設備や機能を維持しつつ、5Gの特性を生かしたネットワークの高度化が可能になる」と説明した。

マルチアクセス技術

 また、AV-QOS技術について野口氏は、「パナソニックはビデオカメラなどの開発で培った映像圧縮技術がある。加えてテレビ会議システムなどで培った映像伝送システムを5Gの大容量帯域にも対応できるよう進化させ、変動の激しい無線環境でも低遅延で滑らかな伝送を実現するソリューションを提供する」と説明した。

AV-QOS技術

サポート力強化のためのサポートメニューも充実させていく

 パナソニックでは2020年10月より、顧客向けに「導入サポート」「構築サポート」「運用サポート」で構成されるサポートメニューを準備してきた。今回、現場マルチネットワークサービスを立ち上げるにあたり、パートナーの提案力強化のためのネットワークSEを設置し、サポート力強化のためのサポートメニューも充実させていくという。

オンサイトサポートメニューの充実
パートナーの提案力強化の施策
パートナーのサポート力強化の施策

現場マルチネットワークサービスの市場展開シナリオ

 現場マルチネットワークサービスの市場展開シナリオとして野口氏は、「これまでは直販のお客さまとの共創により、カスタマイズサービスを提供してきた。今後は製造、物流、流通といった現場のDXを実現する省力化・高付加価値ソリューションをモデル化し、パッケージサービスとして、パートナーと展開していく。将来的にはクラウドサービス化も視野に入れており、この分野においてもパートナーと広く共創していきたいと考えている」と説明した。

現場マルチネットワークサービスの市場展開シナリオ

 さらに市場展開シナリオにおけるモデル化やパートナーとの共創を加速するため、横浜佐江戸地区に「ローカル5Gラボ(仮称)」を設置している。2021年春頃よりローカル5Gを体感できるフィールドとして公開予定だ。ローカル5Gの環境にロボットアームを設置し、別の建屋から遠隔操作するといった取り組みも始めており、今後さまざまなユースケースを検証する場として活用していく。

 なお、このラボは顧客やパートナーとの共創の場としても積極的に活用していくことを想定しており、近々メディア向けに内容を公開する予定であるという。

ローカル5Gラボ(仮称)のイメージ

 パナソニックでは顧客やパートナーとの共創を軸に、現場マルチネットワークで現場プロセスイノベーションを加速し、より良い社会と暮らしの実現を目指すという。