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パナソニック コネクト、倉庫内プロセスの効率化でトラックの荷待ち時間を短縮するソリューション

 パナソニック コネクト株式会社は8日、物流分野における倉庫業務の効率化などに最適化する「タスク最適化エンジン(仮称)」および「ロボット制御プラットフォーム」を開発したと発表した。Blue Yonderの倉庫管理システム(Warehouse Management System:WMS)の入出荷情報を活用するとともに、AIアルゴリズムによって、自動倉庫やAMR、人やロボットによる作業といったタスクを最適に割り当て、商品出荷作業とトラックの運行を同期。さらに、ロボット制御技術やセンシング技術、AI技術を組み合わせて、ロボットアームなどを一元的に制御できる。

 なおこれらのプラットフォームは、オープンプラットフォームとして提供。第1弾として、自動倉庫「ラピュタASRS」を展開するラピュタロボティクスと業務提携することも発表した。

 パナソニック コネクト 代表取締役執行役員 プレジデント CEOの樋口泰行氏は、「今回の発表は、サプライチェーンのなかでも、物流や倉庫オペレーションにフォーカスした新たな技術と提携になる。日本のトラディショナル企業であるパナソニックコネクト、米国のサプライチェーンソフトウェアのBlue Yonder、日本で起業したスタートアップ企業のラピュタロボティクスの3社のコラボレーションによって、倉庫内プロセスの効率化を図る。これにより、モノを動かす『実行レイヤー』までを含めたサプライチェーン全体の最適化、自律化の実現に近づけることができる。物流2024年問題の解決につなげることができる」と述べた。

 食品や日用品、医薬などを扱う企業や、出荷頻度が高い倉庫や、商品の入れ替わりが激しい倉庫などを対象に提案。2024年度中に事業化する考えだ。

パナソニック コネクト 代表取締役執行役員 プレジデント CEOの樋口泰行氏

タスク最適化エンジンによるメリット

 「タスク最適化エンジン」は、パナソニック コネクトが培ってきたメソドロジーであるインダストリアルエンジニアリング(IE)の知見を活用し、標準化されたタスク情報をもとに、各タスクの振り分けを行う機能を持つ。Blue Yonderの倉庫管理システム(WMS)の入出荷情報をもとに、人とロボットの配置、作業の順番を、トラック出発時刻に間に合うように計算し、自動倉庫やピッキング作業を実行させることができる。

 例えば、トラックに積み込み荷物に順番があり、先に積み込む荷物がそろっていないため、積載作業が行えず、トラックの待ち時間が延びるということは、倉庫では日常的に発生している。

 タスク最適化エンジンでは、WMSの情報をもとに、トラックの到着時間に同期させた精度の高い作業割り当てを行い、作業実行データを人やロボットに提供。先に積み込む荷物からピッキング作業を行うようにする。商品在庫が入っているトレーやコンテナから、指示に従ってピッキングを行い、配送用コンテナに入れると自動的に出荷口に搬送される。これにより最短時間での積載を完了し、トラックの待ち時間を短縮する。さらに、ピッキング作業の実績データは、リアルタイムにWMSなどで管理。このデータをもとに次の工程タスクの割り当てを行う。

タスク最適化エンジン

 パナソニック コネクト 執行役員 ヴァイス・プレジデント CTOの榊原彰氏は、「タスク最適化エンジンは、人とロボットのピッキング速度の違いや、トラックに積載する際の人手による作業とフォークリフトでの作業時間の違いも計算し、トラックの到着時刻に同期したタスク割り当てを行う。どの品物を、誰がピックアップするのかをアサインし、オンタイムでトラックに積載し、トラックの待ち時間を削減できる。物理学者のエリヤフ・ゴールドラット博士による制約理論に合致したものであり、すべての時間を同期させることで全体の効率化ができる」と説明した。

パナソニック コネクト 執行役員 ヴァイス・プレジデント CTOの榊原彰氏

 また、パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部エグゼクティブコンサルタント/エバンジェリストの一力知一氏は、「物流2024年問題に代表されるサプライチェーンの本質的課題は、倉庫作業の人手不足やコスト増加、倉庫内トラックの待機時間にある。その解決には同期が重要になる。だが同期させるには、発注量が日々変動すること、ECの普及などによって確定時期が直前になること、翌日には配送しなくてはならないという短納期化といった変動因子への対応と、多品種少量の商品を扱う際の作業時間やピッキング完了時間など、これまでは行われてこなかった情報の定量化が必要になる。IEによって業務プロセスを標準化し、タスク最適化エンジンにより、作業の割り振りと作業同期によって時間を短縮し、人とロボットの最適な作業分担によって時間を短縮できる。倉庫内の最適化が、トラック輸送の効率化につながる」と述べた。

パナソニック コネクト 現場ソリューションカンパニー 現場サプライチェーン本部エグゼクティブコンサルタント/エバンジェリストの一力知一氏
変化量が多すぎて計画自体の立案が困難。計画しようとしても現場の情報が定量化されておらず、業務プロセスが構築できない

 一方、「ロボット制御プラットフォーム」は、すでにパナソニック コネクトが開発しているロボットハンドやロボットアームなどのロボットを制御する技術と、センサーやカメラなどで収集したデータをもとに、学習不要でピッキング位置を推定できるセンシング技術を組み合わせており、ロボットの専門スキルを持たない現場作業者でも、容易にタスク設定の変更を可能にする環境を実現しているのが特徴だ。

 物流倉庫でピッキングタスクを行う際に必要な多様なロボットシステムを一元制御できるオープンなプラットフォームであり、「タスク最適化エンジン」を通じて、Blue Yonder のWMSと連携し、入出荷情報の活用や、倉庫内のAMR(自律走行搬送ロボット)およびAGV(無人搬送車)との連携によって、倉庫業務プロセスを改善できる。

 パナソニック コネクトでは、ロボットアームに取り付けて、商品を吸着し、移動させる吸着技術と、グリッパーで把持した商品を、位置や姿勢を変えながら運ぶことができるインハンドマニピュレーション技術を開発。それらを活用することで、コンビニなどで扱う商品の約8割をロボットでピッキングできるという。「2種類の吸着ハンドと、さまざまな形状の瓶をつかむことができるグリッパーハンドで、速い速度でピッキングが可能になる」(パナソニック コネクトの榊原CTO)。

 また、可搬型ロボットを採用することで繁忙期にあわせた増設が容易に行え、それにあわせたレイアウト変更も可能になるとのこと。

 「設置場所の変更や他社ロボットの接続性を高めるとともに、高いピッキング網羅率を持っているのが特徴である。パナソニック コネクトでは、センシングやAI/ML、ロボティクスを同期させて動かす技術の研究を進めており、物流現場でのロボット導入のハードルを下げることで、業務の効率化に加えて、新たなイノベーションが生まれることを期待している」と述べた。

ロボット制御プラットフォーム

 さらに、開発した「タスク最適化エンジン」と「ロボット制御プラットフォーム」の位置づけについて、パナソニック コネクトの榊原CTOは次のように語る。

 「Blue Yonderは、計画から実行までのソリューションをソフトウェアコンポーネントとしてそろえ、クラウド経由で提供している。今回の対象となるのは、実行レイヤーであり、需要予測にもとづいて立案した計画を、倉庫や輸配送、ラストマイル配送などにおいて、着実に実行する領域になる。倉庫内では、WMS、倉庫実行システム(WES)、倉庫制御システム(WCS)の3つのシステムでプロセスの効率化を図ることが求められており、パナソニックコネクトでは、WMSにBlue Yonderを活用し、これと連携するWESの一部としてタスク最適化エンジンを開発し、WCSの一部としてロボット制御プラットフォームを開発した」と述べた。

人とロボットの協働による「倉庫内プロセス効率化」の技術開発を推進

 また、「タスク最適化エンジン」および「ロボット制御プラットフォーム」の開発では、Blue Yonderの開発手法を採用している点も見逃せない。

 「パナソニック コネクトでは、約2年間をかけて、クラウドのプロフェッショナルベンダーであるBlue Yonderの開発手法を取り入れながら、学んできた。今回もその手法を採用した。要件を決め、設計を行うという机上での開発期間が長かった従来手法を変え、早く動作を検証し、早く機能を確認することで、早くリリースすることができている。このやり方には手応えを感じている」と語った。

 今回の技術開発にあわせて、ラピュタロボティクスとの提携も発表した。

 ラピュタロボティクスは、チューリッヒ工科大学発のスタートアップ企業で、2014年に日本で起業。社員数は200人以上で、そのうちエンジニアの構成比が56%を占める。代表取締役 CEOのモーハナラージャー・ガジャン氏はスリランカ出身で、チューリッヒ工科大学のほか、久留米高専や東京工業大学も卒業している。

 クラウドロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」や、自動倉庫「ラピュタASRS」、ピッキングアシストAMR、自動フォークリフトを開発、販売しており、ピッキングアシストAMRでは7割のシェアを持つという。

 ガジャン氏は、「物流分野にフォーカスしている企業である。自動倉庫によって、倉庫内の歩行時間の削減と空間的なロスを解消できるが、自動倉庫の導入の多くが新規倉庫であり、低回転のものを設置する傾向がある。ラピュタロボティクスでは、既存倉庫を対象に、数多くのロボットを走らせることで生産性を高めていく提案を行っており、倉庫をブロック構造で組み上げることができ、既存倉庫のオペレーションを止めずに設置できる。ロボットがあらゆる場所を走ることができる点も特徴だ。パナソニックコネクトとの協業により、商品の信頼性を高め、物流の自動化を身近なものにしたい」と述べた。

ラピュタロボティクス 代表取締役 CEOのモーハナラージャー・ガジャン氏

 また、パナソニック コネクトの榊原CTOは、「ラピュタロボティクスは、ソフトウェアによる制御技術を持っていること、既存倉庫に柔軟に導入できるメリットがある点を評価している。タスク最適化エンジンは、柔軟な対応ができるロボットでこそ、特徴が生かせると考えている」と述べた。

 パナソニックコネクトでは、さまざまなパートナー企業との連携を図る考えを示しており、タスク最適化エンジンを、BlueYonder以外のWMSと連携させたり、さまざまなロボットとの連携提案も行っていく。また、システムインテグレータと協業した提案も進めていくことになる。なお、大阪府茨木市にあるパナソニック コネクトの「彩都パーツセンター」に、タスク最適化エンジンを導入することも検討しているという。

自動倉庫を利用したデモンストレーション

会見会場に自動倉庫を組み上げてデモを行った
ピッキングエリアの様子
デバイスでバーコードを読み取ってピッキングを開始する
ピッキングする商材がコンテナに乗って運ばれてくる
ピッキングした商材を配送用コンテナに入れる
作業中や作業が完了した状態をディスプレイに表示している
ロボットを使ってピッキングしている様子。グリッパーハンドで商品をつかむことができる
こちらは吸着ハンドで商品をピッキングしている
吸着ハンドの様子
ピッキングされた荷物はAGVで運ばれて出荷されることになる
自動倉庫はブロックのようにして組み立てることが可能で、移設もできる。可搬型ロボットの設置も容易に行える
AGVのバッテリーは自動交換される