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NECがローカル5G事業に本格参入、基地局やコアネットワークから運用保守までトータルソリューションを提供

自社導入や顧客との共創活動も推進

 日本電気株式会社(以下、NEC)は17日、ローカル5G事業に本格参入すると発表した。企業や自治体を対象に、端末やデバイス、基地局、クラウド/オンプレミス型コアネットワーク、IoT基盤、データ分析AI技術、業種/業務別アプリケーション、運用保守までをトータルソリューションとして提供。ローカル5G関連の製品/サービスで、2023年度までに100社以上の導入を図る。なお同社では、国内で実績を積み、将来的には海外展開も視野に入れているという。

 また自社施設で利用するため、ローカル5Gの28GHz帯の商用免許を2019年12月に申請するとともに、2020年1月には、玉川事業場内に顧客との共創施設「ローカル5Gラボ」を開設。2020年度以降に、NECグループの工場にローカル5Gを導入するとした。

 NEC シニアエグゼクティブの渡辺望氏は、「長年に渡って培った業種ノウハウを活用するとともに、NECが持つAIや生体認証技術も活用できる。また、キャリアビジネスで培った知見があり、全国規模でのエンジニアリングリソースがある。これらを生かして、それぞれの業種に最適なソリューションを提供し、運用をサポートできる点がNECの強みである」と強調。

 さらに、「エンドトゥエンドで、人、モノ、コトをつなぎ、業種ごとのバーティカルなトータルソリューションを、垂直統合で、ワンストップで実現できる。総合力によって、ローカル5Gにおける差別化が図れる」と、自社の強みをアピールした。

NEC シニアエグゼクティブの渡辺望氏
NECがローカル5G事業で目指す姿

ローカル5Gのトータルソリューションを提供、クラウド型も

 ローカル5Gのソリューションとしては、5Gコアから基地局までを提供するが、オンプレミス型での提供に加えて、5Gコアをスモールスタートが可能なクラウドサービス型でも提供する。

 このクラウドサービス型では、素早いサービス提供に加えて、運用代行が可能な点がメリットという。渡辺氏は、「当初はオンプレミス型が多いと想定されているが、クラウドサービス型の方が増えていくだろう。多くの提案において、サービス規模や事業計画に応じて、柔軟性を持ち、コスト効率が高い導入・運用が可能になるクラウドサービス型が有用であると考えている」とした。

NECのローカル5Gの提供モデル
クラウドサービス型のメリット

 また、製造、建設、流通、交通、公共の市場領域を中心に、ローカル5Gの提案を加速。ロボットやAGVC(自動搬送車)の活用による作業のリモート化および自動化、ネットワークの無線化による、生産設備の配置の自由度の向上、大量センサーやカメラ活用による生産性向上などを、具体的なソリューションとして提案する予定だ。

5Gの特徴×自営網により業務プロセスの改善を実現

 「5Gが持つ超高速、大容量、超低遅延、多数同時接続といったメリットと、ローカルならではの専用閉域ネットワークによるセキュリティ確保による安全性、干渉の少ない無線ネットワークによる安定性、柔軟に通信リソースの割り当てが可能な柔軟性を生かせる。建設現場や工事現場、空港や駅、港湾、物流倉庫、病院、スタジアム、工場といった場所での利用が想定される。必要な時に、必要な場所に5Gネットワークを柔軟に構築し、産業の高度化を推進できる。市場は2021年度後半ぐらいから本格的に立ち上がるとみている」とした。

ローカル5Gによる産業DXの実現
NECのローカル5Gの取り組み

自社導入や顧客との共創を実施

 さらに、NECの子会社であるNECプラットフォームズの甲府工場、タイ工場にローカル5Gを導入する計画も明らかにした。

 まずは甲府工場のサーバー生産ラインに導入。作業員の効率化と安全性確保を目的とした「搬送用ロボットの遠隔制御」、多品種少量生産で求められる、ラインの頻繁な変更への対応を目的とした「ネットワークの無線化」、生産性向上を目指した「大量センサーの情報収集および分析」などにローカル5Gを活用する。

自社工場へ導入

 また、顧客との共創連携も強化する。三菱電機とは、工場内と工場間、企業間の高度なデータ連携を実現するハイブリッド5Gのユースケースを共同検証しているほか、大林組とは、建機の自律運転システムにローカル5Gを活用。複数台の建機の制御を行い、労働力不足の解消につなげる取り組みを進めている。

三菱電機との取り組み
大林組との取り組み

 そのほか、ユーザー企業やベンダー、サプライヤーとともに、新たなコミュニティとして「5G Co-Creation Working」を設置。交通ワーキンググループ(WG)、建設WG、流通WG、安心安全WGを通じた活動を行う。

 さらに、玉川事業場内に設置するローカル5Gラボに、エンドトゥエンドのローカル5Gの通信環境を設置した。Wi-FiやLTEなどとの違いを体感できるほか、顧客が機器を持ち込んでのユースケース検証が可能になる。

 なお、次世代ものづくり共創スペースである「NEC DX Factory」にも、ローカル5Gの適用を予定しているという。

ローカル5Gラボを開設する

 NEC 執行役員の吉崎敏文氏は、「NECは、クラウドとネットワークのサービスを一体化し、デジタルプラットフォームを強化する。NEC Cloud IaaSやAWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azureといったマルチクラウド、また5Gおよびローカル5Gなどの通信方式を、最適に、迅速に提供し、5G時代のクラウド/ネットワーク融合サービスを実現する」と話している。

NEC 執行役員の吉崎敏文氏
通信事業者向けの5G基地局(RU)