ニュース

NEC、DX実現に向けたデジタルプラットフォームを体系化へ 2020年春が目標

 日本電気株式会社(NEC)は6日、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みについて説明した。そのなかで、DXを実現するための「デジタルプラットフォーム」を、2020年春を目標に体系化することを明らかにした。

 NEC 執行役員の吉崎敏文氏は、「デジタルプラットフォームは、デジタルフレームワークの提供形態であり、価値をいち早く届けることができる。また、ネットワークからアプリケーションまで、ひとつのアーテキクチャで統合したデジタルプラットフォームを実現するものとなる。オープンにかじを切っており、顧客に価値と選択肢を提供するものだ」などとした。

NEC 執行役員の吉崎敏文氏

 AI、生体認証、クラウド、サイバーセキュリティ、NEC Smart Connectivityの5つをNECのデジタルプラットフォームの強みと位置づけ、これらの技術を活用。「これまでのNECの課題は、強い通信技術と強いITを持っているのに、これがばらばらであった点。デジタルプラットフォームでは、設計においてこれらを融合することに取り組んでいる」とする。

 デジタルプラットフォームの具体的な事例として、成田空港やスターアライアンス向けにすでに提供しているDigital IDについて説明。「これは生体認証の技術を活用したものであり、顔認証技術による本人確認を行うことで、空港でのチェックインから、手荷物預け、保安検査、搭乗ゲートまでのスムーズな搭乗を実現できる」と述べた。

 なおNECではDXの支援に向けて、2019年4月~6月にかけて、生体認証・映像事業をモデルにデジタルフレームワークHubを整備。7月~9月にかけてはセカンドステージとして、AI、クラウド、ネットワークセキュリティに展開し、これを体系化した。さらに10月以降は、オファリングの高度化とともに、DX専任組織で推進、加速する体制を構築する方針を掲げている。

 吉崎執行役員は、「予定通りに進捗しており、全社横断でのビジネス加速に向けたギアチェンジができている。一方で、Red HatやVMwareとの協業により、コンテナ利用環境を強化し、お客さまのDXを支援する体制を強化。さらに、社会課題化するAI人材不足に対応するため、NECのAI人材育成メソドロジーを生かしたNECアカデミー for AIにより、人材育成にも取り組んでいく」と語った。

全社横断でのビジネス加速に向けたギアチェンジ
オープン化の取り組み

 また、「NECのデジタルフレームワークは、ビジネスを前提として展開をしているのが特徴。豊富なビジネスユースケースをもとに、誰に対して、なにをするのかといったことを重視し、そこに生体認証をはじめとする技術を適用していく」とする。

全社のナレッジをデジタルフレームワークに
デジタルフレームワークのもととなった豊富なユースケース

 さらに、「生体認証、映像分析を皮切りに、今後、AI、クラウド、ネットワーク、サイバーセキュリティにモデルを展開し、それぞれを統合し、オファリングを高度化することになる。また、NECが持つ現場のノウハウ、知見によって用意したリファレンスモデルを活用することで、迅速に低コストで導入ができる」と述べた。

 このほか、「デジタルフレームワークの活用プロセスであるデジタルHubを通じて、全社の知見を固め、顧客の環境への適用と、フレームワークの改善、強化を進める。実践の繰り返しが顧客への貢献に直結すると考えている」とも話している。

デジタルフレームワークの拡充

 5Gへの対応についても言及した。吉崎執行役員は、「NECは、5G時代のクラウドとネットワークを一体化し、デジタルプラットフォームを強化。マルチクラウドや5G/ローカル5Gなどの通信方式を最適化しながら、迅速に提供することができる。DXにおいてネットワークは重要であり、5Gはそれに一層貢献することになる。NECの強みはITとネットワークであり、これがグローバルに勝てる部分。統一したアーキテクチャによって、顧客はネットワークとITを選択できる環境が実現できる。これは顧客にとって極めて重要なことである」とした。

5G時代のクラウド/ネットワーク融合サービス

 なおNECでは、2019年10月1日付けで、DX専任組織「Digital Business Office」を100人規模で設置し、全社横断でデジタルビジネスを推進する体制を確立。デジタルフレームワークの統合によるオファリングの高度化に取り組んでいる。

 Digital Business Officeは、NECグループのDX関連のエキスパートとナレッジを集約。構想段階から実装、運用まで、顧客のDX実現をトータルに支援する役割を担う。

 具体的には、卓越した業種ノウハウを持つ「リードコンサルタント」、デザインシンキングのノウハウを持つ「ビジネスデザイナー」、テクノロジーのノウハウを持つ「デジタルエキスパート」で構成され、DXに必要な人材を取りそろえたとのこと。

 「リードコンサルタントは、外部から優秀な人材に入ってもらった。また社内からも人材をシフトし、ハイブリッドの形で人材をそろえている。人員構成においては、現場コンサルティングを重視しており、いまの体制だけにとどまらず、コンサルティングとソリューションエキスパートを組み合わせたような新たな職種が求められれば、そうした職種を新たな用意して、採用するなど、柔軟に変化させる組織にしたい。またNECの社員は、サービスオリエンテッドで考える上で、モノづくりを知っていることが特徴。これは、データサイエンティストを育てられる土壌があることにつながると考えている。Digital Business Officeを、DXを加速する原動力となる組織したい」と位置づけた。

DX専任組織「Digital Business Office」

 一方で、DXに関する事例も説明。ANAでは、トレーニングセンターであるANA Blue Baseにおいて、VRを活用して教育訓練を強化。飛行機での火災発生時の訓練など、現実の環境では再現しにくいシーンでの訓練が可能になったという。

 またセブン銀行では次世代ATMを活用し、顔認証によって本人確認を行い、安全な取引を実現したり、機械学習をもとにATMの故障を予知し、止まらないATNの実現を目指しているとのこと。

 大林組と大裕では、NECの適応予測制御技術と大量の操作データ、ネットワークを活用することで、遠隔地から複数台の建設機械を自律運転させ、デジタルによる省人化と生産性向上を実現したと説明した。

 「NECは、イノベーション創造、お客さま接点改革、業務改革の3つの観点から導入を図っており、ネットワークからアプリまでをカバーする高い知見と深い知識で、お客さまのDXをけん引する。NECは、5Gをはじめとするデジタルによって新たな市場をリードし、企業変革に向けて、デジタルのコンピテンシーを確実に進化させていく」(吉崎執行役員)。