大河原克行のキーマンウォッチ

SIerとともにGoogleの最新技術を日本企業へ――、平手智行代表が目指すグーグル・クラウドの姿を聞く

インダストリーに対するアプローチを強化

――エンタープライズ向けの組織体制の強化はどんな形で進めますか。

 これからは、インダストリーに対するアプローチを強化していきたいと考えています。そのためには、私たちの組織がもっと業種に特化した形になり、お客さまの業界と同じ言葉をしゃべり、業界特有のレギュレーションを理解し、業界の課題や変化も理解し、それをもとにして、ソリューションを提供できるようにしたいと思っています。これまでにもインダストリー別の体制というのはありましたが、2020年1月から、日本でも本格的にやっていくことになります。

――すでに米本社でもその体制を敷いていますね。

 米本社では、リテール、ヘルスケア、製造、ファイナンス、パブリック、テレコミュニケーションといった6つのインダストリーにフォーカスした体制を敷いています。日本でも、これに準じたものとしますが、自動車業界など、日本の産業構造や日本のお客さまの状況にあわせたインダストリー別体制を整えていくつもりです。

 インダストリーごとに異なるペインポイントをとらえた提案を、パートナーとともに推進していきます。また、SAPやOracle、VMwareといったソリューション別、ワークロード別の体制も強化していくつもりです。

 日本のお客さまのさまざまな要望に対して、誰がどう対応していくのかということを明確にできるマトリクスの体制で進めていくことになります。

データプライバシーを重視していく

 実は、もうひとつエンタープライズ事業を強化する上で、重視しなくてはならないと思っているものがあります。

――それはなんですか。

 データプライバシーです。Googleは、データのプライバシーに関して、明確な方針を示しています。Googleの方針は、お客さまのデータはお客さまのものであり、お客さまがすべてのデータを管理するものとし、Goggleはコンピュータ技術を駆使して、データを処理するという役割を担い、お客さまのデータを自らの研究や製品開発に使うことは一切ありません。そして、契約書は日本語化しており、お客さまに理解しやすい形で、お客さまのデータが守られることをしっかりと担保しています。

 また万が一、第三者の誰かがお客さまのデータにアクセスしようとした場合には、それをリアルタイムで記録して、お客さまに通知する仕組みを採用しています。システム運用において、外部のパートナー企業と連携する場合にも、誰がデータにアクセスしたのかということを、お客さま自身で管理できるようになっています。

 さらに、GoogleのCloud Security Command Centerでは、監視ツールや不正や脅威から防御するツールを用意し、これをお客さまがいつでも使えるようにしています

 ただ、こうしたことがエンタープライズユーザーにはまだ理解されていないという反省があります。どちらかというと、GoogleはOSSで立ち上がってきた経緯がありますから、信頼性や堅牢性、データ保護といった点で不安を持っているエンタープライズユーザーが多いというのも事実です。

 30年以上に渡って、エンタープライズシステムにかかわってきた立場から、Google Cloudは、安心してエンタープライズ領域で利用をしてもらえる技術と、データをしっかりと守る環境を提供している企業であることを、私は伝えていきたいと思っています。