大河原克行のキーマンウォッチ

SIerとともにGoogleの最新技術を日本企業へ――、平手智行代表が目指すグーグル・クラウドの姿を聞く

パートナーの力を借りてGoogleの技術やソリューションを広げたい

――平手代表は、日本IBMやデルなどで、これまで30年以上に渡って、エンタープライズビジネスをかかわってきましたね。

 日本IBMでは、執行役員として大手企業向け大型プロジェクトを担当したり、業種に特化した組織を統括したり、米IBMではコーポレートストラテジーにもかかわりました。またベライゾンの日本法人社長としては、大手企業を中心にした事業拡大に取り組みましたし、デルでは、中小企業などを対象にしたハードウェア単体でのビジネススタイルをソリューションビジネスへと転換させ、日本における業容拡大と大幅な成長を達成することができました。

 ただ、これは私だけの力ではなく、パートナーの方々の協力があったからこそ実現したものです。これからもパートナーの協力を得ながら、グーグル・クラウドをエンタープライズユーザーに利用していただくための体制づくりやルールの整備、パートナー企業の大幅拡充を進め、エンタープライズユーザーの基幹業務におけるクラウド利用を促進していきます。

――2019年1月に、米Google CloudのCEOに、Oracle出身のトーマス・クリアン氏が就任しました。それ以来、エンタープライズに関する発信が増えていますね。

 トーマス・クリアンがCEOに就任して以降、これまでの開発チームの体制を強化するのに加えて、エンタープライズを長年経験した人材や、エンタープライズを深く理解している人材が、相次いで米Google Cloudに入社しています。いまではプリセールスからポストセールスまで、エンタープライズ事業の経験が長い人材で構成されています。

 日本市場は、グローバルのなかでも最重点市場に位置づけられ、事業拡大に向けて大幅な人員増強とスキルの拡充を行っているところです。私は30年以上に渡って、エンタープライズのお客さまに育てていただいた経験と、大型システムに携わってきた経験があります。いまの日本の情報システムがどう生まれ、それがいまでも使われている背景と、その中身を理解しています。また、新たなテクノロジーも理解している。これを融合することで、日本のお客さまに新たな価値を届けたいと考えています。

 ただ、日本のお客さまに価値をお届けするには、私一人の力ではなにもできません。重要なのは、パートナーの力を借りてGoogleの技術やソリューションを広げたいという点です。

――パートナー戦略にも力を注ぐことになりますか。

 もともとグーグル・クラウドは、クラウドネイティブのSIパートナーとの結びつきが強いという特徴があります。この関係は順調であり、大きく発展しています。しかし、エンタープライズ系のSIerとの連携は、これから強化していく必要があります。SIerの力を借りることが、Googleが持つ技術をエンドユーザーに提供することにつながります。今後はこれまで以上に、クラウドネイティブのSIerへの投資を強化するのに加えて、日本の大手SIerの力をもっとお借りしたいと考えています。

 さらに、コンサルティングファームとの連携も強化したいですね。従来のITは、業務の効率化を図ったり、ビジネスプロセスを変えたりといったものが主流でしたが、いまでは、新たなテクノロジーがあるからこそ、新たなビジネスが生まれるといったことが増えています。

 ディスラクティブ(破壊的)なビジネスモデルに対して、Googleのテクノロジーやアーキテクチャーを活用してもらい、不連続で、革新的なビジネスモデルを創出するには、コンサルティングファームによる上流からの提案が必要です。

 こうしたパートナーとの連携によって、Googleが持つテクノロジーをエンタープライズユーザーに使ってもらうことに力を注ぎ、SIerとともに成長できるGoogle Cloudの世界を作り上げたいと思っています。

 社内体制を大幅に拡大するとともに、パートナーの力をお借りして、グーグル・クラウドが日本で成長する姿を描きたいと思っています。