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Google Cloudが顧客体験のために投資する5つの柱とは?
Google Cloud Next '19 in Tokyo基調講演レポート
2019年8月7日 11:53
グーグルジャパンによるGoogle Cloudのカンファレンス「Google Cloud Next '19 in Tokyo」が7月30日~8月1日に開催された。7月30日はブートキャンプやハンズオンが、7月31日と8月1日に通常のカンファレンスが行われた。
本稿では、8月1日の基調講演2日目から、Googleによる講演の模様をレポートする。なお、新発表については別稿であらためてまとめているほか、基調講演でのゲスト講演についても別稿でレポートする。
顧客体験のために投資する5つの柱
8月1日の基調講演は、Google Cloud カスタマーエクスペリエンス バイスプレジデントのジョン・ジェスター氏から始まった。氏はMicrosoftからGoogleに移って2カ月だという。
ジェスター氏は、Google Cloudが顧客体験のために投資する5つの柱について語った。
1つ目はプロフェッショナルサービス。これについては、2017~2018年にかけて87%の人員を増強したという。
2つ目はエンタープライズサポート。これについては、24時間365日の日本語でのサポートを追加したという。「そのほか、機械学習など、専門性を持ったスタッフによる対応もする」(ジェスター氏)。
3つ目はラーニング。トレーニングコースとラボの受講数が2倍となり、認定資格取得数が2018年比で4倍となったという。
4つ目と5つ目は、カスタマーサクセス、そしてカスタマー&パートナーエクスペリエンスだ。「つまり、顧客やパートナーの声を聞き、お客さまに成功体験を提供する」とジェスター氏は語った。
G Suiteで仕事が「より早く」「よりスマートに」「よりコラボレーティブに」
続いて、G Suiteについて、Google Cloud G Suiteバイスプレジデントのエイミー・ローキー氏が解説した。
ローキー氏はG Suiteが先端的な企業から伝統的企業まで、世界で15億人に使われていると説明。フロントラインとバックオフィスがリアルタイムでつながるフジテック、現場の課題を本部と解決するファミリーマート、現場どうしで気付きを共有するANAといった、日本企業における3つのG Suite活用事例をビデオで紹介した。
またローキー氏は、G Suiteの経済効果として、年に21日分の時間節約になるというフォレストの調査結果を紹介した。
そして、そうした効果をもたらすG Suiteの特徴を、ローキー氏は「より早く」「よりスマートに」「よりコラボレーティブに」の3点でまとめる。
「より早く」としては、Gmailで届いたOfficeの文書をそのまま開けることを挙げた。また「よりスマートに」では、知識や人へのよりよいアクセスを提供するとして、Cloud Searchのサードパーティ接続でSAPやSalesforce、SharePointなどが検索できることが紹介。「よりコラボレーティブに」では、Gmail内のHangoutチャット機能により、コミュニケーションを集約できることが強調された。
ローキー氏はさらに、G Suiteの中で、電話サービス「Google Voice」を日本で開始予定であることもアナウンスした。
ここで、Google Cloud スペシャリスト カスタマーエンジニア 西日本技術リードの小林直史氏が、G Suiteの機能をデモした。
まず、Gmailのサイドパネルからスケジュールを確認し、さらにGmail内のHangoutチャットから予定が変更になったことを連絡してみせたほか、チャットに社外メンバーを簡単に追加できるところも見せた。
また、GoogleスライドのURLをチャットに張り付けることで、そのスライドへのアクセス権をチャットのメンバーに付与できるところを見せている。
そのほか、受信したメールのドキュメントに動的メールでコメントする機能と、それを同時に送信側でもGoogleスライド内にリアルタイムで表示されるところもデモされた。
顧客データに対する考えを表明、Titanセキュリティキーの国内販売開始も発表
Google Cloud テクニカルインフラストラクチャ シニアバイスプレジデントのウルス・ヘルツル氏は、セキュリティ関連について説明した。
ヘルツル氏は「われわれの原則は『お客さまのデータはお客さまのもの(your data is your data)』だ」として、顧客データやプライバシーについてのGoogle Cloudの考えを表明した。いわく「顧客のデータにGoogleが許可なくアクセスすることはない。いかなる機関にも、許可なくあなたのデータにアクセスするバックドアを与えない。顧客のデータはデフォルトで暗号化され、あなたは独自の暗号鍵を所有する。サポートの目的で顧客がデータへのアクセスをGoogleに許可した場合は、ほぼリアルタイムにすべてのオペレーションをログに残す」など。
ちなみにこの内容は、4月の米国Google Cloud Next '19においては、Google Cloudのトマス・キュリアン(Thomas Kurian)CEOが語ったものだ。ちょうどFacebookを中心に大規模プラットフォームによる顧客データの管理が問題になったことへの対応といえる。
ヘルツル氏はまた、Google製のFIDO準拠のセキュリティキー「Titanセキュリティキー」を、米国だけでなく、日本、イギリス、フランス、カナダの4カ国でも販売開始したことをアナウンスした。
また、G Suiteなどで、Advanced Protection Program(APP、高度な保護機能プログラム)のべータ版が利用できるようになったことを発表した。
ETL/ELTサービスや、スプレッドシートによるビッグデータ分析
Google Cloud クラウドカスタマーエンジニア ビッグデータスペシャリストのジュリー・プライス氏は、Google Cloudのデータ分析プラットフォームを解説した。
まずBigQueryについて、東京リージョンと大阪リージョンで利用可能なことを取り上げ、日本の事例としてアサヒビールやリクルートテクノロジー、CXプラットフォーム「KARTE」のプレイドを紹介した。
続いて、Google Cloud カスタマーエンジニア 日本統括部長の菅野信氏が、データ分析プラットフォームをデモした。
まずは、ETL/ELTサービスの「Cloud Data Fusion」。4月の米国Google Cloud Next '19にて発表されたものだ。オープンソースベースで、さまざまな変換プラグインと100以上の事前構築済みシナリオが備わっているという。菅野氏は、画面上でデータ変換のパイプラインを作製して、データベースからBigQueryにデータを流し込んでみせた。
続いて、BigQueryの分析とインサイトについてのデモを行った。1億行もの膨大なデータは、通常はスプレッドシートでは分析できない。しかし「Connected Sheets」を使えば、使い慣れたスプレッドシートのUIや関数を用いて1億行のデータを分析できる。ピボットテーブルも利用可能だ。なおConnected Sheetsも、4月の米国Google Cloud Next '19にて発表されており、ベータ版が近日公開予定。
続いては、予測の「AutoML Tables」。GUIでデータを指定することで、誰もが容易に機械学習モデルを開発できるという。
企業の意思決定者向けと開発者向けのAIサービス
Google Cloud AI バイスプレジデント プロダクトマネジメントディレクターのラジェン・シェス氏は、AI関連について説明し、「AIをすべての人に」という軸で語った。
ます、「AIを企業の意思決定者のために」。これについては、事前構成済みソリューションとして、文書のフォームなどの構造を判別する「Document Understanding AI」、小売りのレコメンデーションの「Recommendations AI」、コンタクトセンターのための「Contact Center AI」だ。
続いて「AIを開発する人のために」。これについては、Google CloudのGPUによる高速化や、Cloudd AI Platform、AI Hub、AutoML Tables、AutoML Video Intelligenceといったサービスを紹介した。
さらに、200以上の言語に対応し表データも検出するOCR「Cloud Vision API」や、動画や静止画から対象物を検出する「AutoML Video」「AutoML Vision」なども紹介した。
仮想マシン移行や、サービスメッシュ機能
Google Cloud エンジニアリング バイスプレジデントのアミット・ザベリー氏は、インフラのモダナイズと最適化について、「マイグレーション」「モダナイゼーション」「パフォーマンス」の3つの軸から語った。
まずはマイグレーション。ここでは、ほかのクラウドやオンプレミスからGoogle Compute Engineに仮想マシンを移行するMigrate for Compute Engineが紹介された。Amazon Web Services(AWS)からの移行に対応しているが、Microsoft Azureからの移行にもベータ版として対応したことがアナウンスされた。
そのほか、ちょうど会期中に、Google Cloud上でVMwareのワークロードを動かす「Google Cloud VMware Solution by CloudSimple」が発表されたことも紹介された。
2番目はモダナイゼーションだ。これについては、マイクロサービスのサービスメッシュを構成するための技術として、コントロールプレーンの「Traffic Director」と、既存アプリケーションをTraffic Directorに対応するための「Layer 7 Internal Load Balancer」が紹介された。Traffic Directorは一般提供(GA)になったことが、Layer 7 Internal Load Balancerはベータ版としてリリースされたことがアナウンスされた。
3番目はパフォーマンスだ。これについては、Intel Xeonスケーラブルプロセッサの仮想マシンが紹介された。
さらに、SAP認定済みのメモリ6TBと12TBの大容量の仮想マシンがベータ提供開始されたこともザベリー氏はアナウンスした。
このような基幹系インスタンスでは、ダウンタイムは大きな損失である一方、大容量メモリのインスタンスのライブマイグレーションは大がかりとなる。こうしたライブマイグレーションについて、Google Cloud Platform ハイメモリーVMs プロダクトマネージャーのハナン・ユーセフ氏がデモした。
TBクラスのメモリーのS/4HANAインスタンスについて、ライブマイグレーション自体は時間がかかるので事前にトリガーしたという例を見せ、「通常のシステム移行では30分かかってリブートも必要なところが、Google Cloudならダウンタイムなしでライブマイグレーションできた」とユーセフ氏は語った。