大河原克行のキーマンウォッチ
まずは信頼されなければ挑戦もできない――、山口明夫社長が目指す“日本IBM”の姿
2020年1月28日 06:00
日本IBMの山口明夫社長は、2020年の方針として「信頼に基づく挑戦」を打ち出しており、「まずは信頼されなければ挑戦もできない。お客さまの最も信頼されるパートナーとなることを目指し、デジタル変革の第2章とその先を見据えた、より良い未来の実現に挑戦する」と語る。
2019年5月に7年ぶりの日本人社長として就任して以来、顧客接点の現場を知るSE出身の強みを生かし、顧客やパートナー、社員とのコミュニケーションを重視した経営を進める一方、Red Hatの買収、量子コンピュータの日本への設置など、新たなテクノロジーを活用した提案も加速する。
日本IBMの2020年の取り組みを山口社長に聞いた。
まずはコミュニケーションに注力
――令和に元号が変わった2019年5月1日に社長に就任した際には、日本IBMにとって、7年ぶりの日本人社長であることが話題となりました。社長就任以来、どんなことに力を注いできましたか。
お客さまやビジネスパートナーとのコミュニケーションを、しっかりと取ることに力を注いできました。外国人社長の期間は、日本IBMに多くのプラスをもたらしたと思っています。
しかし、英語でのコミュニケーションが中心であったことは確かであり、そこは日本人である私がカバーしていかなくてはなりません。私たちが考えていること、やっていることをもっと理解をしてもらうことが大切であり、お互いに理解が深まれば、信頼が生まれることになります。
――社長就任会見では、「IBMはどこから来て、どこに行こうとしているのかということが伝わっていないという反省がある」とコメントしていたのが印象的でした。コミュニケーションに課題があると感じていた裏返しだったのではないでしょうか。その一方で、日本IBM主催の会見やイベントでは、セールスフォース・ドットコムの小出伸一会長兼社長やパナソニック コネクティッドソリューションズ社の樋口泰行社長、東京大学の五神真総長と一緒に登壇するというシーンもありました。これも、ここ数年は見られなかったものです。
お互いが何を考えているのかがわからなければ、自然と距離が生まれますよね。私自身も積極的にお客さまやビジネスパートナーを訪問し、さまざまなところで情報交換をさせていただいています。まだまだ若輩者ですが(笑)、メールをいただいたり、会合などでも声をかけていただいたりするようになり、それはうれしく思っています。
ご指摘のように、社長就任以来、記者会見では、多くのパートナーとの協業を発表しています。小出さんも、樋口さんも、信頼をしている業界の大先輩ですし、五神総長は雲の上の存在の人ですから(笑)、そうした方々と一緒に登壇することができたことは本当にありがたい話です。
また、私が社長に就任して以降、企業のCTOの方々に参加していただくブレックファーストCTOミーティングを開催しています。日本IBMの研究開発部門のトップが参加し、量子コンピュータをはじめとする最新のテクノロジーについて情報を共有しています。研究所のアセットを活用してもらったり、お客さまのもとにも研究者が訪問したりといったことも行っており、これによって、IBMがどんなテクノロジーを開発しているのか、研究開発部門はどんなことを考えているのかということを、より理解していただけるようになったのではないでしょうか。
すでに、新たな素材の研究開発を一緒にやったり、データ解析の手法を研究したりといったことも始まっています。こうした研究開発にかかわる議論や協業があちこちで生まれています。