大河原克行のキーマンウォッチ
2021年は企業のデジタルフロントドアの構築を支援する1年に――、グーグル・クラウド・ジャパン 平手智行代表
2021年3月9日 06:00
「2021年には、デジタルと従来型システムをつなげる出入り口である『デジタルフロントドア』の仕組みがますます重要になる。グーグル・クラウドは、そこに最大の力を発揮することができる」――。
グーグル・クラウド・ジャパンの平手智行代表は、同社の2021年の重要テーマに、「デジタルフロントドア」を掲げる。ニューノーマル時代において、データの利活用が重視され、あらゆる業種でDXが推進される一方、コラボレーションツールを活用した新たな働き方が促進。これらにおいて、グーグル・クラウド・ジャパンが果たす役割に注目が集まる。
2021年の取り組みについて、グーグル・クラウド・ジャパンの平手智行代表に話を聞いた。
2020年を振り返って
――2020年はグーグル・クラウド・ジャパンにとって、どんな1年でしたか。
2020年を振り返ってみますと、多くの企業が直面した課題は、「いかにデジタル対応力を強化するか」ということだったといえます。私たちは、人の移動が遮断されるという過去にない経験をし、オフィスに集まることによって仕事をすることに依存してきた多くの企業は、リモート環境の整備不足も重なり、業務にはさまざまな課題が発生し、あらゆる業種においてサプライチェーンの停滞が見られました。
その一方で、ネットワーク上で人と人がつながり、ネットワーク上でデータを駆使して業務が実行できる仕組みやプロセス、環境の重要性が顕著になったともいえます。
会議や授業がオンラインで行われたり、実店舗よりもオンラインでの購入が増加したり、医療分野でもオンライン診療の動きが出始めています。日を追うごとに、その流れは加速しており、それを支えるツールも導入が進みました。
しかし、これは完了ではありません。むしろ、ニューノーマル時代に向けた変革の始まりだと考えています。
例えば、企業は、ゼロトラストによる新たなセキュリティを活用し、場所に依存しない分散就労のプロセスを確立することが求められています。非対面や非訪問の環境でも、企業には、持続的成長が求められており、仕事をするという概念の中心を「場所」から、「時間」あるいは「効率」へとシフトさせなくてはなりません。小売業は物理店舗からEコマースへ、ヘルスケアは遠隔医療へ、製造業ではデジタルサインによる遠隔操作やシミュレーションを加速するなど、デジタルで仕事をすることや、デジタル上でお客さまとつながる仕組みの構築が急務になっています。
そして、そこでは、物理世界での仕組みや活動を単にリモートに置き換えるだけでなく、デジタル世界だからこそ実現できる新たな効率的なコラボレーションを駆使し、構築することが重要です。
企業のデジタル対応力を強化するために重要な「デジタルフロントドア」
こうした企業のデジタル対応力を強化する上で、グーグル・クラウドでは、「デジタルフロントドア」と呼ぶ仕組みが大切だと考えています。
――デジタルフロントドアとはなんですか。
ひとことでいえば、デジタルと従来型システムへユーザーや仕組みをつなげる入り口です。これは、あらゆる業種において求められていることであり、すでにデジタルを活用しているエンドユーザーや企業とつながるためには、この入り口を使わなくてはなりません。従来のビジネスとデジタルをつなぐことだけにとどまらず、ビジネスを物理的な世界だけで完結させるのではなく、オンライン上でも利用者や顧客としっかりとつながるための取り組みを行うことが、デジタルフロントドア構築に向けた第1歩だといえます。
そして、デジタルフロントドアが第2段階に入ると、大量のデータを収集し、分析し、よりよいユーザー体験を提供できるかどうかが重要な鍵になります。データの活用によって、よりよい顧客体験につなげたり、サプライチェーンの高度化や最適化を実現したりといったことになります。複雑なビジネス課題を前にして、私たちは、限られたリソースで、膨大なデータを的確に処理することが求められています。そこに、AIやML(機械学習)といったテクノロジーが重要な役割を果たすことになります。
そしてデジタルフロントドアは、第3段階になると、人による物理的なプロセスを削減し、より効率化を目指して自動化を推進していく世界に入ります。コロナ禍やニューノーマル時代において、その動きはこれから顕著になってきます。
このように、デジタルフロントドアに必要なのはデータの利活用であり、それに必要となるAIなどの最新テクノロジーを活用することです。また、デジタルコミュニケーション環境の実装と実現も必要な要素です。コロナ禍によって、ニューノーマルに向けた変革のスピードが速まっています。企業は、デジタルフロントドアの仕組みを活用しながら、スピードを見直し、このモーメンタムを逃さないことが大切だといえます。
――すでに、デジタルフロントドアを活用した企業の事例はありますか。
データとAIを活用したコールセンターの実現は、事例のひとつです。三菱UFJ銀行では、Google Cloudのチャットボット向けAIソリューション「Dialogflow」を導入し、三菱UFJダイレクトに寄せられる月間約2万7000件の問い合わせにチャットボットが対応し、現場の負担軽減や業務効率化を実現しています。問い合わせをチャットボットで対応し、回答できない場合にはオペレーターにつなぎ、その際にも、それまでのやりとりから類推して、さまざまなレコメンデーションを追加した上で渡すことができます。
また野村総合研究所でも、「atlax for Google Cloud」を提供するなかで、Google Contact Center AI(CCAI)を活用したコンタクトセンターの自動化のほか、BigQueryやLookerなどのGoogle Cloudの製品を活用して、顧客のデータ分析基盤を構築し、DXに向けたデータ活用を支援するサービスを提供しています。
こうしたデータ活用やAI活用により、既存のビジネスとデジタルをつなぐ取り組みは、まさにデジタルフロントドアの仕組みを活用したものだといえます。
信頼されるパートナーを目指した取り組み
――2019年11月にグーグル・クラウド・ジャパンの代表に就任して以来、安心して付き合えるパートナーへの進化を目指していましたね。1年半近くを経過して、その成果は出ていますか。
グーグル・クラウド・ジャパンの代表に就任以来、力を入れてきたのは、グーグル・クラウドが、すべての法人ユーザーから信頼できるパートナーとして認識されることです。お客さまごとにDXのステージは異なります。お客さまの声に耳を傾けて、DXの段階に応じて最適な製品やソリューションを提供できる体制づくりをしてきました。それを実現するために大切なのは、パートナーとのエコシステムの拡充です。これを最重要課題として、パートナー向け社内体制の拡充も着実に進めてきました。こうした取り組みの結果、多くのパートナーやお客さまと強い結びつきができていることは、少しずつ信頼されるパートナーとして認識され始めている証しといえるのではないでしょうか。
――2020年は、エンタープライズ系SIerとの連携が一気に強化された印象があります。
2020年は、アビームコンサルティング、富士通、日立製作所、SCSKといった日本を代表するIT企業各社を、グーグル・クラウドのパートナーとして迎えることができ、パートナーが持っているソリューションにGCP(グーグル・クラウド・プラットフォーム)を組み込んでもらい、お客さまのDXを支援するというケースが増えてきました。DXのニーズに対応するためにコンサルティングファームとの協業も強化でき、NRI、アクセンチュアなどとの提携によって、日本のエンタープライズのDXニーズに応えていける体制が整ったといえます。
また、2020年10月にG SuiteからリブランドしたGoogle Workspaceについても、国内大手ディストリビュータであるダイワボウ情報システム、シネックスが認定ディストリビュータとして参画し、協業が本格化しています。Google Workspaceに搭載された新機能に対しては、お客さまから高い関心が集まっていますし、経済性とメンテナンス性が高いChromebook、セキュリティが高く、ゼロトラストネットワークを構築できるBeyond Corpとの組み合わせた提案もできます。働き方改革を推進するためのツールとして、グーグル・クラウドの製品・サービスを採用する動きが、多くの企業で見られています。
――この1年で主要パートナー各社が、グーグル・クラウドに関心を寄せた理由はなんでしょうか。
データの利活用はイノベーション推進の中核であり、AIなどの新たなテクノロジーを活用して、お客さまの業務に適したソリューションを届けることが大切です。そこにおいて、グーグル・クラウドが持っているテクノロジーとソリューションが有効であるということが、評価をいただき始めていると考えています。パートナー各社との会話が増え、幅が広がり、深みが出ていることを感じます。
お客さまは、これまでの経験則が使えなかったり、需要予測が難しくなったりしており、ニューノーマル時代における不確実性への対応が急務となっています。つまり、データドリブンのイノベーションがますます重要になってきています。そうしたお客さまの課題を解決したいというパートナーの思いと、グーグル・クラウドの方向性のベクトルがあっており、パートナーと一緒に、個々のテクノロジーを、お客さまの業務にあった形で、効果的なイノベーションに変えていくという協業が増えています。
AIやMLといったテクノロジーを活用して、分析や予測を行い、最適化された受発注の実現や高度化した生産計画の立案を行ったり、お客さま視点でのビジネス改革に向けて、従来のCRMを超えるハイパーパーソナライズした商品提案を実現したりといったことが求められています。コンシューマにおいても、個人のUIやUXに寄り添ったAIを駆使したサービスが、企業の差別化になっている。ここにもデータが数多く活用され、分析されています。
グーグル・クラウドは、コンシューマにもエンタープライズにも活用できるテクノロジーを持っていますが、それらは高度化され、粒度が細かいため、これをお客さまに「どうぞ」とそのままお渡しするわけにはいきません。パートナーとの連携によって、グーグル・クラウドのテクノロジーやソリューションをお客さまに最適なものに変えてもらわなくてはなりません。そうした成果がいくつも出ています。
――具体的にはどんな事例がありますか。
セブン-イレブン・ジャパンでは、2020年9月から、デジタルデータ活用基盤「セブンセントラル」を稼働させ、全国約2万1000店舗のPOSデータをリアルタイムで収集、分析しており、その構築にGoogle Cloudを採用しました。1日あたり1億5000万件のデータをクラウド上にリアルタイムで収集し、店頭の最新状況をリアルタイムに把握することで、全社各部署が最新のデータをもとに、いち早く対応することができます。
一般的に、システムが拡大するほど、データは複数のシステムに分散することになります。その結果、必要なデータを効果的に取り出せなかったり、店舗から収集したデータの参照に時間がかかったりといった課題が生まれます。データとビジネスロジックが一体化していまっていると、データのサイロ化がどんどん進んでしまいます。そして、システム間連携が密結合であり、これを変えるにはコストがかかり、時間もかかるという状況が生まれます。
セブン-イレブン・ジャパンでは、Apigeeによってデータとビジネスロジックを分離させたほか、メッセージングサービスであるGoogle Cloudのストリーム分析ソリューションを活用してPOSデータを取り込み、リアルタイムにデータを加工して、Cloud SpannerやBigQueryからデータを活用できるようにしています。この実現においては、パートナー企業であるクラウドエースとの連携も欠かせませんでした。
データレイクの構築やAI/MLを用いたデータ分析によってイノベーションを支援
――2021年におけるグーグル・クラウドの注力領域はどこになりますか。
2つあります。ひとつは、お客さまのイノベーションを、データレイクの構築やAI/MLを用いたデータ分析によって支援することです。お客さまにとって、即時性と汎用性を確保したデータレイクの構築や、データウェアハウスのモダナイゼーションの実施により、高度なAI/MLをデータ分析に活用し、業務への知見を獲得し、効率的な業務運用、競争力の強化を図ることは重要な要素です。
一方で、従来型の基幹システムは複雑化し、大規模で、密結合であり、修正や変更に時間と費用がかかるという課題があります。また、バッチ処理が多く含まれているため、データのリアルタイム性に乏しく、特定の業務処理向けに構築されたプログラムであることから、出てくるデータにも指向性が強い。そのためSoRデータは大量に存在しても、そのまま高度なデータ分析や予測、類推処理には使いにくいというのが現状です。これが、日本の企業のDXを加速する上での足かせとなっています。
データを利活用するには、コンテナ化やマイクロサービス化、基幹システムとの疎結合などによって、多角的にデータを取り出すことが必要です。あらゆるセンサーデータやPOSデータなどの生テータ、SNSやマーケティングデータといった異なる種類のデータを収集し、データとロジックを切り離した形で、リアルタイム性が高く、粒度を細かく、加工可能な、汎用度の高い形で、データレイクを作ることが必要になります。
ここで大切なのは、即時性と汎用性を両立するということなのです。そして、これを実現するためには、テクノロジーとソリューションが大切です。グーグル・クラウドでは、ハイブリッド/マルチクラウドを実現するAnthos、大規模なデータの整合性を保ちながら水平スケールできるデータベースのSpanner、データセンター規模のリソースを利用し超分散並列処理で分析ができるBigQuery、コンテナ化されたアプリケーションを実行するための、本番環境に対応したマネージド環境を提供するGoogle Kubernetes Engineといった技術や製品を持っています。
BigQueryとCloud Spannerを利用して、データをリアルに活用できるようになり、Apgieeでデータ基盤に対する統一的なAPIを提供することができるようになる。個人情報の規制や保護などの観点から、データをオンプレミスで動かしていたり、基幹システムにつながる数多くのサブシステムが稼働していたり、他社のクラウドで動く一部機能を利用しているといった場合にも、異なるすべての環境を統合管理環境のなかで活用できます。
JCBでは、次世代の決済プラットフォームにおいてAnthosを活用しています。金融機関が求める高いサービスレベルと、金融業界固有の規制にも準拠し、新たなサービスの実現を可能とするDX基盤の構築と、基幹システムとインフラモダナイゼーションを同時に行えるクラウドサービスとして採用してもらっていますが、まさに、GCPやオンプレミス、他社クラウド上のシステムを、まとめた形で実行管理と監視が可能になり、サービスの拡張性、セキュリティの強化、オープン性を高めることができています。
また、セキュリティに対する評価も高まっています。一般的に、暗号化された情報は移動したり演算処理したりする時に、一時的に暗号化が解かれることになりますが、グーグル・クラウドのConfidential Computingでは、データの処理中に、メモリ内やCPU外といったどんな場所にあっても、データが暗号化されている状態を保持できます。特に金融業界からはこうしたサービスに対する関心が高まっています。
SAP導入企業に対する提案も強化
もうひとつ、力を注いでいるのが、SAPを導入している企業に対する提案です。
――それはどんなものですか。
SAPユーザーに対する「ポストモダンEPR基本方針」の提案といえるものであり、データ駆動型ビジネスのためのソリューションの提案でもあり、そして、SoRとSoEの二段構造の提案であるといえます。
日本では、製造業を中心に数多くの企業にSAPが導入されています。しかし、データを活用し、AIを活用するにはどうするのかといった点で悩んでいる企業も少なくありません。グーグル・クラウドの提案は、SAPシステムのビジネスプロセスレイヤーには一切変更を加えることなく、APIやSDKを使って、グーグル・クラウドのAI/MLを使える点に特徴があります。修正、変更などによって発生する負荷を減らし、ビジネス価値をもたらすことができます。例えば製造業では、生産工程における外観検査のシナリオにおいて、AI/MLを活用する場合も、APIによってSAP連携ができるようになります。
具体的にはいくつかのステップがあります。ひとつめは、SAP ERPシステムをGCP上で動かし、SAP以外の基幹業務からも、BigQueryに対してデータを持ってくるようにできるという点です。これによって、オンプレミスからクラウドにリフトすることができ、GCPによる高可用性と高いコストパフォーマンスを実現し、効率的、安全的に運用することができます。
しかしこれだけでは、企業が求める競争力強化にはつながりません。リフトはしてみたものの効果が少ないと感じている企業も多く、DXの成果が実感できないと思っている企業も少なくありません。グーグル・クラウドの特徴がより大きく発揮できるのはその先です。
フルマネージド型でSAPと連携するクラウド型データウェアハウスのBigQueryと、クラウドサービス型データマネジメントAPI基盤であるApgieeを活用。Google AnalyticsといったGoogleの最先端のAIおよびMLを提供することで、データをストアして、分析して、可視化して、現状と比較して、利用部門に伝えていくことができます。
またLockerにより、データ活用の標準化、ガバナンスの強化、柔軟性の高いリアルタイム分析を実現し、AI/MLを専門知識なしで使ってもらえる環境が整います。さらに、Apgieeによる統合API基盤では、GCPと、S/4 HANAやSAP ECC6.0に直接接続するAPIがあり、SoRのデータをSoEシステムに渡すことができます。SAPシステムの更新情報をリアルタイムにBigQueryに反映し、最新データをBigQuery上で常に分析できます。
このほか、SAPシステムと非SAPシステムのデータをBigQueryに集めることで、複雑な処理や分析がシームレスに実行可能です。BigQueryの特徴である数百PBの大規模なデータを扱えるのに加えて、BigQueryにSAPのデータをアーカイブできるというメリットも生まれます。SAPからデータを移行することで、コスト削減ができるわけです。これによって業務が変わり、イノベーションを実現することにつながります。
――VMwareとの連携はどう進めていますか。
VMwareについては、Google Cloud VMware EngineをGoogleの自社サービスとして提供しています。Google Cloud VMware Engineでは、VMware vSphere環境をGCPでネイティブに実行するために必要な機能をすべて用意しており、vSphereやvCenter、vSAN、NSX-T、HCXといったVMwareのテクノロジーを活用できます。オンプレミスのワークロードを、すばやく、そのままの状態でGoogle Cloudに拡張したり、移行したりといったことができるようになっています。
2021年の重点業種は?
――グーグル・クラウドでは、業種別営業体制を敷いていますが、2021年における重点業種はどこになりますか。
新型コロナウイルスの影響で、あらゆる業種においてサプライチェーンが影響を受け、従来型システムの活用による弊害や、これまでの経験値が通用しにくくなっているということがあちこちで起こっています。
既存業務から出てくるSoRのデータをSoEの領域に上げて、分析して、新たな対応力をつけることが、企業にとっては必要不可欠となっています。その点では、あらゆる業種のお客さまに対して、グーグル・クラウドによるデータ利活用を中心としたソリューション提案を加速したいと考えています。
そうしたなかでも、金融、流通、製造、ヘルスケア、メディア・エンターテイメント、テレコミュニケーションといった業種に対しては重点的な取り組みを進めたいと考えています。2020年には業種別体制を強化し、業種ノウハウを持ったSE、営業、技術を大幅に増員しました。2021年には、そうした体制強化の成果が生み出せると考えています。
――公共分野における取り組みが遅れているように感じますが。
2021年は、デジタル庁の動きもあり、政府、自治体のデジタル化が推進される1年だと考えています。日本のDXの取り組みを支援するという意味でも、グーグル・クラウドがお手伝いできるところがあれば、ぜひやりたいですね。GCPは、新たなセキュリティであるゼロトラストネットワークに対しても先進的であり、公共分野においても重要なデータ利活用におけるソリューションにも実績があります。そして、ユーザーのUI、UXに寄り添ったサービス提供をしていくことができ、これも公共分野において、グーグル・クラウドが評価される部分だといえます。
すでに、グーグル・クラウドは、全国の地方公共団体が公開されているオープンデータの活用を促進する「オープンデータAPIプロジェクト」に参画し、「オープンデータAPIポータル」のカタログ化において貢献しています。ここでは、新型コロナウイルス感染症関連のCSV形式のオープンデータを、Web API化して公開していますが、Google Cloudの Apigeeをフル活用することで、最小限の時間とコストで、開発を行うことができました。具体的には、CSVのAPI化には、Hosted Targets、ポータルの構築には統合ポータルといったApigeeの機能が利用されています。また、キャッシュ機能でサーバーの負荷を軽減し、さらにAPIアナリティクスを活用することでデータの利用状況の分析も可能になりました。
Google Workspaceによる働き方の変革をアピールしていく
――2021年におけるグーグル・クラウドのもうひとつの注力領域はなんですか。
もうひとつの大きな柱は、デジタル世界における新たなコラボレーションを支援するソリューションである「Google Workspace」です。2020年に大きた目を集め、2021年に入っても、その勢いが続いています。2020年10月に、G Suiteから名称を変更し、追加した新機能にも高い評価が集まっています。
2020年は、多くの企業がリモートワークなどの新たな働き方へと移行するなかで、コミュニケーションツールに注目が集まった1年ではありましたが、ツールを導入したから終わりということではなく、むしろ、いまからが始まりだととらえています。
先にも触れましたが、持続的な成長を可能にするための組織やプロセスを作るには、リアルの世界でやっていることを、リモートの世界に移行させるというのではなく、デジタルだからこそできることはなにかを追求することが大切です。分散就労を前提とするなかで、場所という制約がなくなり、時間や効率が、鍵を握る時代に変わってきます。これに伴って、新たなデジタルのコラボレーションを実現するための仕組みの作り方や、運営の仕方、活用の仕方が重要になってきます。「始まり」という意味はそこにあります。
YKK APでは、Google Workspaceを採用して働き方を変えました。セキュリティにおいて高い評価を得ているGoogle Meetにより、社員や顧客とのコラボレーションを変えたほか、課題となっていた、散在したデータの再活用も容易になり、運用のコストを最小化することにも成功しています。
またハナマルキでは、2019年からGoogle Meetを活用して会議をオンライン化したり、Google ChatやGoogleドライブにより情報を共有したりといったことで働き方を変革してきましたが、コロナ禍においてもスムーズに業務を継続でき、同時に、新たなビジネスを生み出すことにも成功しています。
このように、Google Workspaceによって、経営者や社員の意識が変わったり、会社の文化や働き方が変わったりという事例が、日本において数多く生まれています。2021年は、こうした事例を広く紹介していきたいですね。
――グーグル・クラウド・ジャパンにとって、2021年はどんな1年になりますか。
新型コロナウイルスの感染がどう終息するのか、東京オリンピック/パラリンピックの開催はどうなるのか、さまざまなファクターがある1年です。
ただグーグル・クラウド・ジャパンは、データの利活用を中心に置き、データ駆動型のイノベーションをお客さまのなかに起こしていただくことを支援し、それを加速したいと思っています。「デジタルフロントドア」と表現するように、すべての企業が、従来型のリアルを中心とした世界と、デジタルの世界を結びつける入り口の前にいます。
すでに多くのエンドユーザーや取引先企業がデジタル社会に移行しており、そこでビジネスをすることが必須となっています。企業のデジタル対応力が大切な要素であり、グーグル・クラウドは、「デジタルフロントドア」の仕組みによって、さまざまな業種や業態の企業を、それぞれのDXのステージにあわせた形で支援し、持続的な成長をサポートします。ひとことでいえば、「デジタルフロントドアの構築を支援する1年」になりそうです。
2020年は日本の市場において、グーグル・クラウドが提供するテクノロジーや製品の幅の広さを見せることができ、ハートナーとの連携が広がった1年であったといえます。2021年は、グーグル・クラウドが、データの利活用を通してお客さまのDXを加速する支援を行う1年になります。トラステッドDXパートナーとして認識してもらえるように、全力でまい進していきたいと考えています。