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グーグル、日本におけるGoogle Cloudの順調な成長と働き方改革の積極的なサポートをアピール
Google Cloud Next'17 in Tokyoレポート
2017年6月23日 12:00
グーグル株式会社は6月14日と15日、Google Cloudのイベント「Google Cloud Next'17 in Tokyo」を都内で開催した。Google Cloudをテーマに基調講演やセッションにおいて、Googleのビジネスのビジョン、実際の導入事例などが紹介され、新たなパートナーシップも発表された。
日本国内における有償サービス利用者は70%増
14日の基調講演に登壇した米GoogleのGoogle Cloudシニアバイスプレジデント、ダイアン・グリーン氏は、「東京GCP(Google Cloud Platform)リージョンの運用が開始されたのは2016年の後半だったが、すでに有償でGoogle Cloudを利用している日本のお客さまは70%も増加している」と述べ、日本におけるGoogle Cloudが順調に成長していると説明した。
IaaSとして提供されているGCP上に仮想マシンを構築する「Google Computing Engine(GCE)」は、東京GCPリージョンの運用開始から毎月平均して21%増加しているという。
クラウドサービスについてグリーン氏は、「クラウドは、個人、学生、大企業などすべてのユーザーが、あらゆるところからデータやサービスを利用できる共有のリソース。常に改善やアップデートが可能で、個人やチームのゴールに到達できる力だ」と説明。
Googleのサービスを支えるネットワークについても「Googleは何十万マイルにもおよぶ光ファイバーと、8本の海底ケーブルで構成された世界規模の高速ネットワークによって、まるで無限の能力を持っているように見える」とアピールした。
Google Cloudの成功事例として「Pokemon GO」を紹介したグリーン氏は、「Kubernetes上に構築されたGoogle Container Engine(GKE)の最も大きな規模の導入プロジェクトである『ポケモンGO』は、コンテナベース開発の素晴らしい成功例。サービス開始直後に予想を最大で50%も上回る爆発的なトラフィックが発生したが、Google Cloudはこの負荷にシームレスに対応し、すべてのユーザーにサービスを提供することができた。オンプレミスで50倍の負荷に耐える環境を構築するには、どれだけのコストや物理的なロジスティクスが必要になるか考えてみてほしい」と述べ、高負荷なサービス運用にも耐えるGoogle Cloudのメリットをあらためて説明した。
単にスケールするというだけではなく、Google Cloudはセキュリティにも優れているとグリーン氏は説明する。
「Google Cloudでは、Googleが使っている最高のセキュリティをそのまま利用し、ユーザーのデータはプライベートなデータとして扱っている。750名のセキュリティエンジニアが24時間仕事をしながら常にセキュリティを高め、バックボーンのネットワークはエンドtoエンドですべてをコントロールしている。さらに、ハードウェアにはセキュリティチップが埋め込まれており、認証によってセキュリティを強化している」(グリーン氏)。
働き方改革にも貢献するGoogleをアピール
日本の企業でさまざまな取り組みが進められている「働き方改革」にも、Googleは積極的に関与していくという。グーグル 専務執行役員 CMO アジア太平洋地域 マネージングディレクターの岩村水樹氏は、「多くの企業が働き方を改革したいと考えているが、具体的な方法がわからない。つまり、どのように改革を進めていくかの『HOW』がない」という悩みを持っていると述べた。
岩村氏は、働き方改革に向けてビジネスリーダーが取り組むべき課題として、「文化」「ツール」「プロセス」があると述べる。このうち文化が重要な理由として、「イノベーションは一人の天才から生まれるのではない。多様な人材で構成されるチームの力を最大化してこそ生まれる」と述べた。さらに「サイコロジカル・セーフティ」という考え方を紹介し、「誰もが自分らしく発言できる」「失敗するリスクをとれる」といった心理的な安全性が重要であると指摘した。
また、「ワークハードからワークスマートヘ」をテーマに、実際にGoogleが行った女性の活躍推進と働き方改革のプロジェクト「Womenwill」が紹介され、「Work Shorter(退社時間の計画)」「Work Simply(業務の効率化)」「Work Anywhere(在宅勤務)」といったトライアルの結果、平均勤務時間が1時間短縮されたという。
「ツール」にあたる部分については、米Google、Google Cloud G Suite部門バイスプレジデントのプラバッカー・ラガバン氏から、「G Suite」の活用による働き方改革が紹介された。
ラガバン氏は「ホワイトカラーの人たちの就業時間のうち、クリエーティブな業務の割合はたったの5%。その他の95%は会議やスケジュール調整などの定型業務が占めていることがGoogleの調査で明らかになった」と前置き。
「この5%のクリエーティブな業務を、G Suiteによってどれくらい伸ばすことがGoogleのチャレンジ」と述べた。G Suiteによる業務改革には「(資料作成などの)テクニック」「AI」「コラボレーション」のポイントがあると説明する。
例えば、資料を作成する場合、これまで誰かが作った資料をメールなどで共有し、さらにほかの人が編集するといった流れで作成されていた。ほかの人が編集している間、ほかの人は待ちの状態となり、待ちきれない人は別のバージョンを作ってしまったりする。
しかし、Google Docsを使えば、チーム内で同じドキュメントを共有し、同時に全員でアップデートできるといったコラボレーションが可能になる。英国の大手コンサルティングファームであるPwC(プライスウォーターハウスクーパース)では、G Suiteの導入によって週あたりの業務時間が平均して9時間削減することができたという。
この利便性は多くの企業や個人に受け入れられ、G Suiteは3つのサービスが10億以上のユーザーに利用され、300万社以上の企業が有償サービスを利用しているそうで、Sheets APIやSlides APIなどを利用すれば、作業を効率化することもできるという。さらにラガバン氏は、Gmailのアドオンや、ユーザーがドラッグ&ドロップアプリを作れるAppMakerなども紹介している。
AIについてラガバン氏は、「G SuiteでAIを活用すること、業務を効率化することができる」と述べた。「例えばメールでランチに誘われた場合、イエスあるいはノーのメールの文章を自動的に作成してくれる。また、断る場合でも『明日はどうか』といった提案の文案まで作成することができる」と、Gmailのスマートリプライ機能を紹介した。
またラガバン氏は、「AIの機能は人間の創造性を置き換えるわけではなく、人間がよりクリエーティブな作業に集中できるように手助けをする」と述べた。
さらに、「コラボレーション」ツールとして、チームでの共有ドライブ「チームドライブ」、検索を効率化する「Google Vault」、ファイルをストリーミング形式で(ダウンロードせずに)利用できる「Drive File Stream」、G Suiteへのコンテンツ移植サービス「AppBridge」を紹介した。
既存のコラボレーションツール「ハングアウト」を企業向けにした「ハングアウト Chat」をはじめ、「ハングアウトMeet」、さらに電子ホワイトボード「Jamboard」も紹介された。
新しい「ハングアウト Chat」は、プロジェクトごとに利用することをイメージしたツールで、プロジェクトごとに仮想的なルームを作成し、ルーム内で会話をスレッド形式でまとめることができる。ルーム内でドキュメント、画像、動画といったデータの共有や、過去ログ検索も可能で、Google版Slackといったイメージのツールとなっている。
「ハングアウト Meet」は高解像度のビデオ会議ツールで、最大30人まで参加することができる。共有された会議のリンクをクリックして参加したり、会議用の電話番号によってスマートフォンなどから参加したりすることもできるという。また将来的には、会議の録画機能も追加される予定とした。
55インチ/4Kディスプレイを搭載した電子ホワイトボード「Jamboard」は、その場にいる人だけではなく、遠隔地にいる人ともホワイトボードを共有することができる。ペンで書き込んだ文字や図形は、文字認識や図形データへの変換機能によって、自動的に文字や図形のデータに変換することもできる。(ただし、現段階での文字認識は、英語にのみ対応している)。また、付せんの機能なども搭載した。
書き込んだ内容はGoogleドライブに保存され、データをPDFなどに変換することもできる。なお、価格は4999ドルと、Microsoftが提供している「Surface Hub」の8999ドルよりも、かなり安い設定となっている。日本での発売は、2018年を予定しているという。
日本企業とも積極的に協業し、日本市場での存在感を増す
働き方改革の「プロセス」について米Google、Google Cloud カスタマー部門 プレジデントのタリク・シャウカット氏は、「変革をどのように進めていくか、そのプロセスは重要」と述べ、Googleは自分たちのの技術や知識によって、クラウド上に新しいアプリケーションを作成したり、既存のオンプレミスの環境をクラウドに移行する際のガイドになったり、あるいはG Suiteなどのツールによって業務の効率化をサポートするといった企業の働き方改革を助けることができると説明した。
企業の働き方改革の一例として、基調講演にも登壇したファミリーマート 代表取締役社長の澤田貴司氏は、「Cultural Transformation」と「RetailにおけるGoogle Cloudの応用」という2つの分野で提携し、働き方改革を進めていることを明らかにした。
「『お客さまに一番近い存在になる』ことを目標としているファミリーマートだが、まだまだできていないことがある」と述べた澤田氏は、昨今のコンビニは他社との競争によって業務が複雑化する一方で、深刻な人手不足が現場に大きな負担となっていると説明する。
「Cultural Transformation」、つまり企業文化の変革について澤田氏は、Googleのツールによって「コミュニケーション」や「コラボレーション」を促進し、「10x思考」つまり10倍の成長を目指すような企業文化へと変革していきたいと述べた。
すでに社員に対して企業文化や働き方に関する意識調査、Googleのワークショップへの参加、「Google Drive」、ビデオ会議/チャットの「ハングアウト」といった、G SuiteをはじめとするGoogleのサービスのパイロット導入など、働き方改革の実証実験を実施したという。
その結果、資料作成の時間は70時間から15時間に短縮され、資料作成の準備のために行っていた会議もなくなったとののこと。また、電子会議の積極的な実施により、会議のための移動時間も大幅に削減された。この実証実験によって大きな効果が得られたことから、今後は全社に実施していくという。
「RetailにおけるGoogle Cloudの応用」については、Retail(小売り)つまり店舗においてGoogle Cloudを活用していく取り組みで、手始めの実証実験としておむすびの発注に機械学習を活用したという。その結果、開始2週間の実績と予測の平均誤差は11.65%だったのに対し、さらにその後の1週間では9.68%に改善したという。
さらに澤田氏は、将来的な構想として、POSデータの顧客属性、天候、位置情報、ソーシャルネットワーキングサービスなど、分散して管理されている膨大な情報をGCPに集約して分析し、サービスを最適化していく取り組みも検討していると説明した。
また、基調講演後に行われた記者会見において澤田氏は、「小売業にとってアマゾンは大きな脅威になっている。日本の市場が変わっていく」と述べ、ファミリーマートはこれまで店づくりや買収で活発な投資を進めてきたが、これからはITにも積極的に投資していくことを明らかにしている。
G SuiteおよびGCPの新しいセールス パートナーとして紹介されたのは、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)だ。
NTT Comは自身がパブリッククラウドサービスを展開するプロバイダーでもあるが、今回の協業についてNTT Com 取締役 クラウドサービス部長 森林 正彰氏は、「以前、NTT Comはすべての自社で行うことが方針だったが、最近ではパートナーとの協業を重視するような方針転換を行っている。NTT Comのクラウドサービス『Enterprise Cloud』とGCPを組み合わせ、これまでEnterprise Cloudではカバーできなかった部分をGoogleと一緒に解決し、お客さまが望むベストなテクノロジーを提供していきたい」と説明した。
Googleはすでにソフトバンク、KDDIとのパートナーシップも発表しており、これで国内大手通信事業者としては3社目となっている。NTT ComのデータセンターとGoogleのデータセンターを専用線で接続し、新サービスを開発していく。
また、今後はNTTコミュニケーションズの社内においても、GCPやG Suiteを積極的に利用していくという。