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Now Platformで自治体DX推進を支援――、ServiceNow Japanが公共向けの最新状況を説明

 ServiceNow Japan合同会社は29日、自治体DX推進支援ソリューションの取り組みについて説明した。

 ServiceNow Japan 第一営業統括本部エンタープライズ営業本部兼公共・社会インフラ営業本部営業長の野澤さゆり氏は、「自治体DXの実現に向けて、Now Platformを活用し、住民と行政がつながる環境構築を支援している。単純に申請や問い合わせがオンラインでできたり、情報へのリンクが張り付けてあるポータル環境を実現したりするのではなく、デジタルワークフローを活用して、住民と行政がつながったり、部門間を横断できるプラットフォーム環境を整備したりすることで、横の流れを整流化し、同時に職員体験(EX)向上も実現できる。それらを人の努力で実現するのではないことが重要である」などとした。

ServiceNow Japan 第一営業統括本部エンタープライズ営業本部兼公共・社会インフラ営業本部営業長の野澤さゆり氏

 さらに、Now Platformを活用したエコシステムの拡大にも力を注ぐ姿勢を示し、「自治体DXを実現するには、業務システム、認証システム、決済システムなど、さまざまなパートナーが提供する、専門性が高いサービスやアプリケーションを活用することが大切である。公共セクター向けエコシステムによって、自治体が住民サービスを提供する上で欠かせない機能やサービスを提供できる」と述べた。

自治体DX推進支援ソリューションをNow Platform上で展開

 同社では、エンドトゥエンドのデジタルワークフローを実現するNow Platformを提供。これを「platform of platforms」と位置づけている。

Now Platform

 ServiceNowによる自治体DX推進支援ソリューションもNow Platform上で展開するものとなり、「いつでも、どこでも、マルチアプリケーション」、「市民が迷わないシングルポイントコンタクト」、「市民と市役所をつなぐデジタルワークフロー」、「データ統合可能なシングルデータベース」、「システム連携を前提としたオープンなプラットフォーム構造」の5点を実現するという。

自治体DX推進支援ソリューション

 「自治体サービスの現状は、施設予約システム、図書館システム、電子申請システムなど、サービスごとにサイロ化されている。自治体にとっては担当する部局が異なっているため、当たり前のことであるが、住民にとっては、異なるサイトへのアクセスや、別々のIDやパスワードが必要になるなど、ユーザーフレンドリーではない。この仕組みは、デジタル庁の創設を目指す政府の方向性とは異なる。ServiceNowでは、ポータル機能や決済機能、本人確認機能などを共通利用でき、住民と行政が抱えるそれぞれの課題を解決できる」とする。

自治体サービスを統合することで得られるメリット

 また、公共セクター向けエコシステムの促進においては、Spokeを積極的に活用する姿勢も示した。

 Spokeは、Now Platformとほかのシステムとの連携を可能にするモジュール。すでに全世界で850種類以上の外部システムとの連携が可能になっている。Active DirectoryやAnsibleなどの管理者向け製品だけでなく、ZoomやMicrosoft Teams、Box、DocuSign、各種RPAなどとも連携可能だ。

 ServiceNowの野澤氏は、「パートナーが提供するサービスやアプリケーションと連携するにはAPIが必要だが、個別にコーディングする必要があるため、専門知識が求められ、柔軟でスピーディな開発ができないという課題がある。Spokeでは、プロトコルへの対応だけでなく、接続用コネクタをパートナーの協力を得て提供している。初期導入時のコストや導入負荷、運用負荷の低減が図れる。頻繁なバージョンアップに対しても、開発側が検証するため、動作確認をすることなく対応でき、最新の機能を利用できる。Spokeを利用することで、LINEを活用して住民との接点をより身近にしたい、オンライン申請の結果を帳票へ出力したい、ロボットを呼び出して内部事務をより整流化したいといったニーズにも対応できる」などとした。

「Spoke」と連携することのメリット

 内閣官房が提供している電子申請サービス「ぴったりサービス」や、経済産業省が提供している、法人・個人事業主向け認証システム「gBizID」との連携も可能であり、「これらは、今後、多くの自治体で連携が必要とされるサービスになる。Spokeによって、自治体ごとにAPIを個別開発しないでも利用できる環境を整えることができる」とした。

 Spokeは、ServiceNow Storeを通じて提供。「ServiceNowが提供する製品や、ソリューションの追加機能、ISVパートナーがNow Platform上で独自に開発したアプリケーションも、ServiceNow Storeで提供している。今後もISVパートナーと連携しながら、日本の市場ニーズに沿った自治体DXを推進するための公共フレームワークを実現する」と述べた。

 このほか、自治体DX推進支援ソリューションの事例として、住民ポータルについて説明した。

 住民は、スマートフォンやPCから住民ポータルにアクセス。Spokeで連携したNECの公的個人認証サービスや、DGフィナンシャルテクノロジーが開発した決済プラットフォームを活用して、ウェブ手続きにおける本人確認やウェブ決済が行えるため、案内されたオペレーションに従って手続きや支払いがワンストップで行えるという。

 また行政職員側としてはは、LGWANによる業務ネットワークからクラウドプラットフォームへのアクセスが可能になっているので、効率的な行政事務の実現につなげることが可能だ。ここでは、2021年5月に発表した両備システムズの「R- Cloud Proxy for ServiceNow」を活用。Now Platform上でデジタルワークフローソリューションの利用を支援する。

 ServiceNow Japan エンタープライズ・公共・社会インフラSC本部アドバイザリーソリューションコンサルタントの山田一也氏は、「住民票の写しを電子申請する場合に、Amazonで商品を購入するかのような手軽さで行える。本人確認はマイナンバーカードで行われ、手数料の支払いもウェブ上で行われる。それぞれの手続きの際に、それぞれのソリューションに対応したSpokeが呼び出され、住民はひとつの画面から、それらの手続きが行える。また、マイページで発行の進捗状況も確認でき、いつでも、どこでも、キャッシュレスの環境を実現する。一方で、職員には手続きに関する情報が電子データで送付され、面談しての本人確認や、紙を使用した手作業による内容チェックが不要で、すぐに承認し、発行手続き処理ができる。業務の効率化につながり、それによって空いた時間を、本来職員がすべき職務にあてたり、住民サービスの向上につなげたりできる」とした。

ServiceNow Japan エンタープライズ・公共・社会インフラSC本部 アドバイザリーソリューションコンサルタントの山田一也氏

 すでに、東広島市では、シングルタッチポイントの構築に向けてNow Platformを活用。2021年4月に、「市民ポータルサイト」を開設し、インターネット上で、情報共有や手続きなどを行うための行政サービスを実現。第1弾として、小中学校や幼稚園からの情報配信および情報閲覧、地域のゴミ収集通知、希望する分野に応じた市からのお知らせを提供している。

Now Platformが実現した国内自治体DX事例(東広島市)

 ServiceNow Japan第一営業統括本部公共、社会インフラ営業部 エグゼクティブセールスの森義貴氏は、「東広島市の事例を発表してから、住民ポータルに関する問い合わせが急増している。すでに、複数の自治体で構築をはじめたり、検討をはじめたりしている。また、ServiceNowが提供しているのはパッケージではないという点も評価されている。これまでは求められる機能を満たすことができるパッケージを導入するという例が多かったが、ServiceNowではプラットフォームを提供し、そこに行政が目指すサービスに必要となる機能を利用する仕組みにしている。イノベーションを常に起こすことができる仕組みであり、東広島市がServiceNowを選択した理由はそこにある。今後の自治体DXは、パッケージからプラットフォームという考え方に移行するだろう。ServiceNowは、それを促進していくことになる」と述べた。

 また、ServiceNowの野澤氏は、「Now Platformの活用により、住民は、いつでも、どこでも、どんなデバイスでも、迷わずにサービスを受けることができ、行政の職員もデータが流れることで、余計な仕事を増やさず、やるべき仕事に注力できる環境が整う。さらにデジタルワークフローによって、関連するデータが蓄積し、自治体でのEBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング)を促進できる」などとした。