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ServiceNow、国内初となるデータセンターを東京と大阪に開設 日本市場での新たなパートナープログラムも

 ServiceNow Japan株式会社は25日、急増する日本の顧客のニーズに応えるため、国内初となるデータセンターを東京と大阪にそれぞれ開設したと発表した。

 これにあわせて同日に行われた記者説明会では、日本市場に向けた新たな取り組みとして、「ISVプログラム」と「サービス・プロバイダー・プログラム」を提供開始し、国内でのパートナー戦略を強化する方針を発表した。

写真左から:米国ServiceNow ISVおよびテクノロジーアライアンス担当グローバルバイスプレジデントのアヴァニッシュ・サハイ氏、システムサポート 専務取締役の能登満氏、ロココ 常務取締役の長谷川正人氏、ウイングアーク1st 代表取締役社長の田中潤氏、ServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏

 今回、国内データセンターの開設およびパートナー向け新プログラムを開始する背景について、ServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏は、「日本市場では今まで直販をメインに展開してきた。しかし、日本市場でさらにビジネスを拡大するためには、直販だけでなく、パートナーや顧客に寄り添ってビジネスを展開することが重要になる。そこで、従来の直販での実績をベースにしながら、国内パートナーの販売促進を支援する新たなプログラムを提供することで、働き方改革に向けたエコシステムの構築を目指す」と説明した。

ServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏

 「この取り組みの中で、ISVプログラムは“コンテンツ”、サービス・プロバイダー・プログラムは“仕組み”、国内データセンターは“箱”と位置づけている。ISVプログラムでは、ServiceNowのプラットフォーム上で、ISVベンダーが各種機能をアプリケーションやコンポーネント単位で販売することができる。サービス・プロバイダー・プログラムでは、サービスプロバイダーが独自ソリューションをマルチテナント方式で顧客に提供することが可能となる。そして、東京と大阪の2カ所に開設したセキュアなデータセンターによって、顧客はデータの保管先として日本国内を選択できるようになる」と、エコシステム構築に向けた国内での取り組み概要について述べた。

国内でのエコシステム構築に向けた取り組み概要

 具体的には、ISVプログラムは、ISVベンダー向けに「Storeモデル」と「OEMモデル」の2つのモデルを提供する。

 「Storeモデル」は、ServiceNowで提供されていない機能や独自機能などをServiceNowプラットフォーム上で開発し、SaaS/アダプタ/EAIツールとして展開できるプログラム。サードパーティーが開発した各種機能は、ServiceNow Storeを通じて販売される。

 一方、「OEMモデル」は、ISVベンダーのオリジナルブランドによるオリジナルクラウドサービスをホールセールすることができるプログラム。ServiceNowプラットフォームを占有使用でき、日本の商習慣に対応したサービスなど、オリジナルSaaSの開発販売や独自設定の追加が可能だという。

ISVプログラム「Storeモデル」の概要

 サービス・プロバイダー・プログラムは、サービスプロバイダー向けの従来のライセンス再販の仕組みを一部再整備したもの。通常のリセールモデルは、顧客企業が占有するシングルインスタンスを再販するモデルだが、新たなプログラムでは、シングルインスタンスの中でマルチテナントを実現するドメイン分割機能を提供する。これにより、小規模ユーザーのニーズに対して、マルチテナント方式でスモールスタートでのサービスを展開することができる。また、ServiceNowのSaaSと自社サービスを組み合わせ、独自性のあるサービスをワンストップで提供することも可能になる。

サービス・プロバイダー・プログラムの概要

 国内データセンターは、五大陸にある18(9ペア)のデータセンターで構成されたServiceNowのグローバルインフラを拡張するもので、東京と大阪のペアで構成されている。

 大容量かつ高品質・高信頼なネットワーク環境や高い耐災害性を備えるNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の「Nexcenter」を活用し、ServiceNow独自の先進的な高可用性アーキテクチャや強固なセキュリティを実装することで、日本の顧客への堅牢なクラウドプラットフォームの提供を実現している。

 さらに、物理的に遠く離れた東京と大阪に設置することで、日本の公共機関や金融機関を中心とした一部の顧客の事業継続計画や災害対策における特定のニーズにも対応する。

 米国ServiceNow ISVおよびテクノロジーアライアンス担当グローバルバイスプレジデントのアヴァニッシュ・サハイ氏は、日本でのパートナー戦略強化にあたり、グローバルにおけるISVプログラムの事例について紹介。

 「ISVプログラムのOEMモデルの事例では、DeloitteAssist社が音声認識による患者ケアサービスを開発・提供している。同サービスは、ServiceNowプラットフォームの標準機能を利用して、コール内容に合わせた適切な対応をタスク管理し、看護師のスキルに応じたタスクをモバイルで指示する。これによって、看護師のコール対応時間が10分から2分へと減少した。また、Storeモデルの事例では、Nuvolo社が設備管理ソリューションを提供している。これは、店舗管理者に施設管理や安全管理、店舗システムの予防的・計画的メンテナンス業務をモバイルで提供するもの。例えば、安全性確保の作業時間を1週間で5時間短縮できる」としている。

米国ServiceNow ISVおよびテクノロジーアライアンス担当グローバルバイスプレジデントのアヴァニッシュ・サハイ氏

 また説明会では、国内でISVプログラムに参加し、Storeモデルでアプリケーション開発を進めているウイングアーク1st株式会社、株式会社ロココ、株式会社システムサポートの3社が登壇し、それぞれの取り組み概要を紹介した。

 ウイングアーク1st 代表取締役社長の田中潤氏は、「当社では、ServiceNowプラットフォームで、帳票クラウドサービス『SVF Cloud』の機能を利用できる『SVF Cloud for ServiceNow』を提供する。金融・公共・フィールドサービスの大手企業を主なターゲットとして、ServiceNowにおける帳票開発の生産性向上を支援していく。販売にあたっては、当社パートナーと共通するServiceNowの大手パートナーとの協業を促進していく」とした。

ウイングアーク1st 代表取締役社長の田中潤氏

 ロココ 常務取締役の長谷川正人氏は、「当社は、ServiceNowのファーストパートナーとして、2013年から人事サービスデリバリ(HRSD)を展開している。今回、ServiceNowのブランド力とマーケットを活用し、日本の顧客ニーズに合わせたHRソリューションを提供することで、クラウドサービス事業を拡大させるべく、ISVプログラムに参画した。今後、HRSDを補完する製品群をServiceNowプラットフォーム上で提供し、人事部門のDX推進の加速、および人事サービス体験のコンシューマライズ化による従業員の満足度向上を支援できるよう、事業を展開していく」との考えを示した。

ロココ 常務取締役の長谷川正人氏

 システムサポート 専務取締役の能登満氏は、「当社は、ServiceNowのEliteパートナーであり、50人超の技術者を擁し、導入・運用の技術支援やアプリケーション開発で豊富な実績をもっている。今回のISVプログラムでは、『コンポーネント・ベンダー』をコンセプトに、ServiceNowの機能を補完し、業務効率を向上させる独自のコンポーネント・アプリケーションを日本市場向けに提供する。第1弾として、ServiceNowシステムログの集約保管と検索用コンポーネントを予定している。これにより、ServiceNowのログを集約し、システム管理やセキュリティ管理に利用することが可能になる」と述べた。

システムサポート 専務取締役の能登満氏