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ServiceNow Japanが最新プラットフォーム「Tokyo」リリースを発表、「ヒューマンセントリックなエクスペリエンスを日本企業に届けていく」

 ServiceNow Japan合同会社は4日、米ServiceNowが提供する「Now Platform」の最新版「Tokyo」のリリースを発表した(米国では9/21に発表済み)。Now Platformは年に2回、6カ月ごとのアップデートが継続的に行われており、今回のTokyoは前回の「San Diego」(2022年3月)に次ぐリリースとなる。

Now Platformは第1四半期(3月)と第3四半期(9月)の年に2回、リリースが発表される。リリースにはアルファベット順に世界の主要な都市の名前が付けられ、本リリースはTの「Tokyo」に

 報道関係師向けに説明を行ったServiceNow Japan 執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括 事業統括本部長 原智宏氏は「Tokyoリリースはコンセプトにヒューマンセントリック(人間中心)のエクスペリエンスの確立を掲げており、これに沿った多くの機能拡張を行った。“Tokyo”というアイコニックなリリース名が示すように、より多くの日本企業のビジネス改革を支援していきたい」と語る。

ServiceNow Japan 執行役員 ソリューションコンサルティング事業統括 事業統括本部長 原智宏氏

Tokyoリリースのコンセプト

 Now Platformは、ServiceNowがSaaSとして提供するワークフロー製品群の基盤となるプラットフォームで、今回のTokyoリリースでは企業を取り巻くマクロ環境の変化、特に経済環境の劇的な変化を受けて、リリースコンセプトに「業務、組織を超えたシームレスかつ人中心のエクスペリエンスの確立により、ビジネス改革に直結する『新しい業務のあり方』を実現」を掲げている。

 このコンセプトに沿って開発されたTokyoリリースが提供する価値について、原氏は以下の3点に集約されると語る。

・優れた従業員体験と顧客体験の実現を通し、エンゲージメントや生産性向上を実現 … ステークホルダーとのエンゲージメントを深め、ユーザーに寄り添った機能を提供

・事業運営と情報セキュリティへの信頼性を高めるインテリジェンスの強化 … Now Platform上に蓄積されたデータをセキュアなかたちで活用するインテリジェンス

・あらゆるビジネス領域のニーズに対応する目的別ソリューションでビジネス価値実現を加速 … SaaSによる価値提供によりビジネスでの価値実現までの期間を短くし、より早く効果を体感

Tokyoリリースのコンセプトの趣旨は「人中心のエクスペリエンス」。これにもとづいて大きく3つの価値をカバーする機能拡張が行われた

 Tokyoリリースではこの3つのポイントを支える多くのエンハンスメントが実装されている。以下、ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー 古谷隆一氏による説明をもとに、Tokyoリリースで実装された新機能の一部を紹介する。

ServiceNow Japan マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー 古谷隆一氏

エンゲージメントや生産性の向上

Manager Hub … ハイブリッド環境におけるマネージャーの業務をサポート

部下を持つマネージャー(管理職)のエクスペリエンスにフォーカスした機能。コロナ禍に入ってからハイブリッドワークが浸透した結果、多くのマネージャーが働き方の異なる部下を管理することに苦慮するようになった。Manager Hubはハイブリッドな環境にあるチームメンバーの生産性やエンゲージメントの向上を支えるマネージャーをサポートする機能として以下を備えている。

・チームメンバーのオンボーディングやチームに関する日次統計、未完了のトレーニング、重要な日付などを総合的に把握可能
・管理者が社員のタスクやリクエストに対して通知を受け取り、必要なアクションを実行
・管理職向けのコンテンツやお知らせ、リーダーシップに関するリソースなどに一元的にアクセス

 Manager Hubは「Employee Center Pro」のデスクトップとモバイルから利用可能。ハイブリッドな環境下でさまざまな責任を負うマネージャーを、一元的なアクセスポイントでもって幅広くサポートする。

コロナ禍でますます重責を担うようになったマネージャーのエクスペリエンスにフォーカスした「Manager Hub」。マネージャーの負荷を軽減するとともに、チーム全体の生産性やエンゲージメントの向上も図る
Manager Hubの画面。チームメンバー全員の現状や、管理タスク、部下からのリクエストなどもひと目で把握できる

Issue Auto Resolution for HR … 人事へのリクエスト処理をAI/自然言語技術で効率的に自動化

人事に寄せられる従業員からのリクエストの多くを自動化し、人事担当者がより重要な業務にコミットできるようにする機能。人事に寄せられる問い合わせの多くをAIで解析し、ケースの偏りを改善、さらに自然言語解理解(NLU)を適用して構造化されていないリクエストを分析して、Microsoft TeamsやSMS、電子メールを通してセルフサービスコンテンツを従業員に提供する。重要なケースや気密性の高いケースは自動的に特定し、より高度なサポートが必要な場合は従業員ケア担当者に直接転送する。

人事へのリクエストを、AIを活用して自動化し、ケースの偏りの改善やセルフサービスコンテンツの提供を行う「Issue Auto Resolution for HR」

インテリジェンスの強化

ServiceNow Vault

高いレベルのプライバシー保護とセキュリティでビジネスクリティカルなアプリケーションを保護する。「シークレット管理」「データの匿名化」「プラットフォームの暗号化」「ログ転送」「コードサイニング」の5つの機能でデータ損失を未然に防ぎ、プラットフォームのコンプライアンスとガバナンスを高め、アプリケーションの安全性を担保する。また、Splunkなど他社の可視化ツールにログをエクスポートすることでリアルタイムなプラットフォーム監視が可能。

匿名化や暗号化、コードサイニングなどの技術でもって重要なビジネスアプリケーションとデータを高いレベルで保護する「ServiceNow Vault」

ビジネス価値実現を加速

ServiceNow Enterprise Asset Management

物理的なビジネス資産の計画から廃棄までのライフサイクル管理を自動化することで、企業の資産全体を可視化し、コスト削減やリスクの軽減、戦略的プランニングの改善を実現する。資産を可視化することで、ビジネスの状況に応じて在庫レベルを最適化し、ストックルームを効率的に運用することが容易になり、既存資産の有効活用や耐用年数の最大化を促進できる。また、問い合わせや予約、リコール、リフレッシュサイクルといった一般的なワークフローの合理化を実現し、監査や規制の順守にも寄与する。

物理的なビジネス資産のライフサイクル全体の管理を自動化する「ServiceNow Enterprise Asset Management」。在庫レベルの最適化や太陽根数の最大化にも活用できる

ESG Management

国内でもESGへの取り組みを加速させる企業が増える中、ESGトピックの中でももっとも重要な温室効果ガス排出量の算出(カーボンアカウンティング)に焦点を当てた機能。排出係数と計算対象となる指標を使用して排出量を計算し、毎月の電力消費量や燃料消費量量などに関する全社的なESGパフォーマンスを可視化する。監査対応データの収集と検証、主要なESG報告フレームワークに沿った情報開示の作成なども1つのツールで実行でき、日本語化されたメニューも提供される。

日本企業にとっても関心の高い炭素排出量の削減に特にフォーカスした「ESG Management」
ESG Managementのカーボンアカウンティング機能では、排出係数と計算対象となる指標を使用して事業所ごとに排出量を計算することも可能
ESG Managementではカーボンアカウンティングだけでなく、「E(Environment、環境)」「S(Social、社会)」「G(Governance、ガバナンス)」の各項目の現状をダッシュボードで把握でき、達成目標に向けた進捗を確認できる

企業が直面するマクロ経済環境下のビジネス課題に対応

 2022年3月に前リリースの「San Diego」が発表されてから約6カ月が経過したが、長期化するロシアのウクライナ侵略や急激な円安などに代表されるように、わずか半年間であっても日本企業を取り巻く状況は大きく変わっている。

 原氏は現代の企業が直面しているマクロ環境の変化として、以下の3点を挙げている。

・人材 … ハイブリッドワーク時代における優れた人材の発掘、雇用、維持
・製品/サービス … インフレによるコスト上昇、コロナ禍/地政学的リスク拡大によるサプライチェーンの混乱などに対処する柔軟性と強靭性の確保
・ビジネスオペレーション … コンプライアンスや規制対応など、頻繁な見直しや複雑性の増大に対する速やかな対応

企業が直面するマクロ経済環境下のビジネス課題。Tokyoリリースではこれらの課題解決に向けたコンセプトが設定され、エンハンスメントが行われた

 現代は“予測不可能な時代”と表現されることが多いが、先が見えない状況下でビジネスを成長/継続させていくためにはデジタル化が不可欠であることはほとんどの企業が理解しているところだろう。実際、「(ワールドワイドで)95%のCEOがデジタルファースト戦略を津追求」「デジタル企業は非デジタル企業に比べ、2倍の周期成長を実現」という調査結果もあり、むしろデジタル化に取り組んでいない企業のほうが少数派だと言ってもいい。

IDCがワールドワイドで行ったCEOサーベイ(2022年)によれば、95%のCEOがデジタルファースト戦略を追求している
Volair ResearchのDXに関する調査(2021年)によれば、デジタル企業の収益成長率は非デジタル企業の約2倍となっている

 では、デジタル化で明らかな結果を出すには何が必要なのか。ServiceNowは創業時から一貫して「エクスペリエンス」をコンセプトに、1つのプラットフォーム(Now Platform)でもってすべてのワークフローをカバーするシームレスでエンドトゥエンドなソリューションの提供をめざしてきた。

 今回のTokyoリリースでは、さらに「ヒューマンセントリックなエクスペリエンス」の重要性を強調、従業員や顧客、パートナーなどあらゆるステークホルダーの個々の課題を解決するエンハンスメントを数多く実装している。「シングルプラットフォーム上でさまざまな人と業務を有機的につなげられることがNow Platformの最大の強み。人事や給与などの目的別、あるいは部署ごとに閉じる縦割りの個別システムではなく、ワンプラットフォームによる統一されたエクスペリエンスが企業文化の変革とデジタル化を推し進めていく」(古谷氏)。

ServiceNowは1つのプラットフォーム(Now Platform)ですべてのサービスをエンドトゥエンドで、かつロケーション/デバイスフリーで有機的につなげることでDXへの取り組みを促進する。業務ごと、組織ごとではなく、エクスペリエンス指向ですべてのステークホルダーのエンゲージメントを上げていくことがポイント

 日本をめぐる経済環境はいぜんとして厳しい状況が続いているが、ServiceNowにとって日本は「大型投資を行う成長マーケットのひとつ」(原氏)だという。今後も製品そのものの販売促進はもちろんのこと、コンテンツやマニュアル、トレーニング、ローカライズ(日本法人の組織体制強化含む)などにも投資を続けていく予定だ。

 「“Tokyo”というリリース名は日本法人にとってもアイコニックであり、大きな意味を持つ。本社とともに日本法人をあげてより良いServiceNowの環境を日本企業に広げていきたい」と原氏。”ヒューマンセントリックなエクスペリエンス”を実現するというTokyoリリースで、日本企業のデジタル化推進を支援していく。