ニュース

ServiceNow Japan、村瀬社長が2021年のビジネス戦略を解説 インダストリービジネスの強化や市民開発普及など4点に注力

 ServiceNow Japan合同会社は25日、2021年のビジネス戦略に関するオンライン説明会を開催。同社の村瀬将思社長は、「パートナーエコシステムのさらなる拡大と強化」、「インダストリービジネスの強化」、「市民開発の普及」、「デジタルリテラシー向上のための協業と投資」の4点を注力領域に掲げた。

ServiceNow Japan 執行役員社長の村瀬将思氏
2021年 国内における注力領域

4点の注力領域をそれぞれを説明

 「パートナーエコシステムのさらなる拡大と強化」では、ServiceNowのグローバル展開において、業種向けプロダクトの提案が加速していることを受け、日本においても業種別ノウハウを持つパートナーとの連携を強化する。また、国内デリバリー認定エンジニアを現在の約600人から約1200人に倍増。パートナーが高品質なデリバリーサービスを効率的に行えるようにServiceNow Assureの提供を開始するほか、ISVパートナーとの連携では、日本の商習慣や固有の要件にあわせた業種特化型アプリをリリースしていくという。

 「ServiceNow Assureは、グローバルで展開しているプログラムであり、顧客が選定したデリバリーサービスパートナーと、ServiceNowが連携してソリューションを実装するものになる。日本においても、専任のコンサルティング部隊が、ビジネスパートナーを後方から支援。顧客の価値にひもづいたソリューションを提供することになる」とした。

パートナーエコシステムのさらなる拡大と強化
ServiceNow Assure

 2つめの「インダストリービジネスの強化」は、ひとつめのパートナーエコシステムの強化とも関連する取り組みだ。業種別展開を国内においても強力に推進。特に、通信、サービスプロバイダー、金融サービス、製造に注力する姿勢を示した。

 「サービスプロバイダーの新たな姿をServiceNowで提案するとともに、銀行や保険会社といった金融分野には、グローバルでの実績や強みを生かしたい。また、日本は製造業が多い市場であり、オポチュニティがある。各業種に強いパートナーと積極的にコラボレーションする一方で、社員として業界エキスパートの積極的な採用も進めていく」とした。

インダストリービジネスの強化

 3つ目の「市民開発の普及」としては、ローコードによる開発支援を強化。2021年3月には、次期メジャーバーションアップとなるQuebecをリリースするが、そのなかにApp Engine Studioと呼ばれる機能を追加し、市民開発の促進をサポートする。これにより、LOB(Line of Business)の人たちが迅速にアプリを開発できるようにするという。

 「今後4年間で、過去20年間に作られたアプリと同数となる5億個が開発されるといわれている。ビジネスの変化にあわせて新たなワークフローが必要であり、それを開発するためにローコードによる市民開発が促進されることになる。そうした環境変化に対応していく」とした。

市民開発の普及

 最後の「デジタルリテラシー向上のための協業と投資」では、エグゼクティブを対象にした「ServiceNow CxO Club」を2020年10月に発足し、情報交換を行っていることを報告したほか、エンジニア教育に積極的に投資する姿勢を強調。次世代人材の育成や産学連携だけでなく、40~50代を対象にしたRe-Skill教育にも乗りだすという。

 ドイツのミュンヘン工科大学では、学生に対して、大手企業における課題とその解決に携われる機会を創出する教育プログラムを実施。そのなかで、ServiceNowに関するトレーニングや資格認定の提供も行っている例を示しながら、「日本でも同様の取り組みを開始したい」と発言。その一方で、「ServiceNowのスキルを習得するための統合ポータルであるNow Learningを提供しており、275以上の無償オンデマンドコースを用意している。世界で延べ100万人がコースを受講し、日本でも2万人が受講している。まだ英語版だけの提供だが、今年は日本語コースを増やしたい」とした。

デジタルリテラシー向上のための協業と投資

政府が日本企業に促している要素はServiceNowがサポートできるものばかり

 また、これまでの取り組みを振り返りながら、「2016年までのServiceNowは、ITSM(IT Service Management)を中心としたIT運用のSoftware as a Serviceの企業であったが、2017年以降は、プラットフォームの企業として、横断的なDXを推進する提案が増え、2020年はそれが顕著に進んだ。2021年以降は企業だけでなく、官民問わず、社会全体を良い世界にするためのワークフローを提供する企業に変革する。“Workflows for a Better World”を実現していきたい」と述べた。

 さらに、「2020年は、ワークフロー変革が加速した1年であった。多くの企業が、ニューノーマル時代に向けて、働き方の変革を起こさなくてはいけないタイミングとなり、コロナ禍において、日本企業からServiceNowへの期待がより高まったことを感じた1年であった」と総括。

 「日本の企業は、同じオフィスに集まって、同じ時間、同じ場所を共有することを前提に業務が設計されており、密結合の状態であった。だが、いまは疎結合のコミュニティでも滞りなく業務が行える必要があり、いかなる状況下でも、最適化され、優れた従業員体験や顧客体験が求められている」としながら、「2020年の実績をみると、かつてのIT部門業務を変革するプラットフォームの提供会社というServiceNowの位置づけが変わり、いまでは、組織を横断し、デジタル変革するプラットフォームを提供する会社になっている」と述べた。

Workflows for a Better World

 なお経済産業省では、2020年12月にDXレポート2を出したが、村瀬社長は「DXレポート2では、コロナ禍において、『2025年の崖』が2025年を待たずに前倒しされたことが示されている。従業員や顧客の安全を守りながら事業継続を可能にしなくてはならないこと、企業経営のリーダーシップが重要であり、企業文化を変革していくことがファーストステップであることも示されている。また、執務環境のリモートワーク対応、各種SaaSを用いた業務のデジタル化、パルス調査ツールを用いた従業員の不調や異常の早期発見、チャットボットなどによる電話応対業務の自動化やオンライン化が、企業がコロナ禍で取り組むべきアクションに盛り込まれている。政府が日本の企業に促しているこれらの要素は、ServiceNowがサポートできるものばかりである」と発言。

 さらに、「IPAが国内500社を対象に診断した結果では、90%以上の企業が、DXができていないという残念な結果になっている。コロナ禍でDXの気運は高まっているが、多くの企業はやらなくてはならないと思いつつもできていないのが実態である。先行する企業との差が生まれ、DXへの取り組みは二極化している」と指摘する。

 村瀬社長は、ServiceNowを活用することで、シンプルで簡単、モバイルファーストな体験ができること、バックエンドの複雑さをユーザーに感じさせない部門横断のワークフローを実現できること、コンシューマライクで、タイムリーなサービスを提供するエージェントをServiceNowが用意していることを示しながら、「ビジネスの革新と回復力(レジリエンス)を担保したいCEO、サイロ化した環境を脱却し、人を中心として企業横断的に仕事を整流化させるワークフローが必要と考えているCxO、投資対効果の最大化とリスクの低減を考えているCIOやCDOにも解決策を提示できる」などとした。

導入事例やパートナービジネスの成果について

 国内における具体的な導入事例も挙げた。

 カルビーでは、ニューノーマルな働き方である「Calbee New Workstyle」の実現において、ServiceNowを活用。8稼働日で開発を完了し、従業員よる出社申請だけでなく、承認依頼メールの発信、上長による承認までのワークフローを実現したという。

 広島県では、「広島コロナお知らせQR」の実現にServiceNowを利用。新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、QRコードを活用して感染者と接触した可能性のあることを知らせ、さらにPCR検査を受けるように促し、検査の申し込みもできるようにしているという。「政府が進めているCOCOCAとは異なり、PCR検査までをカバーしている」(村瀬社長)のが特徴だ。

カルビーの事例
広島県の事例

 さらに2020年の取り組みとして、パートナービジネスの成果についても言及した。アクセンチュアでは、日本を含めてグローバルでServiceNowビジネスグループを設置したほか、IBMとは企業のAI活用によるIT自動化などで提携したという。

 日本独自の取り組みでは、NECがサービスプロバイダー契約に加えて、再販契約も締結。NTTデータはServiceNow専任組織を設立し、2025年までに500億円の売上高を目指すことを発表している。

 村瀬社長は、「国内ITの最大手5社のすべてが、ServiceNowのパートナーとして協業している」と述べた。

2020年パートナービジネス

 また、マーケットプレイスであるServiceNow Storeの日本語版を2020年10月に開設。現在、ISVパートナーによる14種類のアプリが公開されているという。

新型コロナウイルスの感染拡大にあわせてさまざまな支援策を提供

 そのほか、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせて、さまざまな支援策を提供したことも紹介。「ServiceNowでは、2020年3月12日から一斉にリモートワークに移行したが、それ以降、アプリケーションのリリース頻度が加速している」とする。

 4月15日に緊急時の社員の安全確保および事業継続を支援するための「危機管理支援アプリ」の無償提供を開始したのに続き、6月9日には、従業員の安全な職場復帰を円滑に進めるための支援を行う「Safe Workplace App」をリリース。6月以降は2~3週間ごとに、Safe Workplace Appの機能を継続的に追加。2021年1月27日には新型コロナウイルスのワクチン供給および接種、接種後のモニタリングなどを支援する「Vaccine Administration Management」の提供を開始した。

 「Vaccine Administration Managementは、これまでServiceNowが持っていたコンポーネントを組み合わせて、ワクチン接種プロセス全体の統合管理ができるものとして、新たに提供している。国や製薬会社、広域/基礎自治体、医療機関、市民といったステイクホルダーに対して、迅速に正確に、データを一元化したサービスを提供できる。スコットランドでのワクチン接種の管理にServiceNowが利用されており、他社がワクチン接種の管理ソリューションがない段階から提供することができている。また、企業においてもワクチン接種をしていない社員は出社を禁止するといったケースが海外では出ているが、その管理にもServiceNowが利用されている」との状況を紹介。

 日本においても、「生命保険会社が、働く従業員やパートナーに対して安心安全な職場を提供するために、社員の健康管理やワクチン接種率の可視化に活用。企画開始から、わずか3週間で本番利用している」とした。

COVID-19への危機対応支援状況
ワクチン接種管理

 国内においては。このほかにも、ワクチン接種の開始に向けてサービスプロバイダーが製薬会社から案件を受託し、副反応などを追跡するソリューションにServiceNowを活用することになるという。

 一方、先ごろ発表されたServiceNowのグローバルでの業績などについても説明。2020年の通期売上高が前年比31%増の45億1900万ドルとなり、コロナ禍においても約1億ドルも売り上げが増加したことを強調した。

 また、ServiceNow利用企業の契約更新率は99%となり、「ほぼすべてのお客さまがServiceNowを使い続けており、価値を出せている証拠である」とした。社員数は全世界で1万3000人の体制となり、コロナ禍の1年間でも約2000人が増加したとのことだ。

プラットフォームを束ねるプラットフォームを提供

 同社のソリューションの中核的役割を担うのが、Now Platformである。

 Now Platformによって、部署間に異なるプラットフォームを利用していても、社員はウェブやモバイルアプリなどからServiceNowのワークフローに入るだけで、IT業務や従業員サービス、顧客接点サービスをシームレスに利用でき、企業横断でのデジタル変革を行える。

 同社では、これを“platform of platforms”と呼んでおり、ServiceNowがプラットフォームを束ねるプラットフォームを提供している格好だ。

 また現在、同社が掲げているキャッチコピーが「Let's workflow it」だという。

 村瀬社長は、「platform of platformsによって実現する世界は、21世紀のソフトウェアで構成された新しい企業像を示すものになる。そのためには、デジタルによるワークフローの改革が必須になる」などと述べた。

Let's workflow it
「組織を変革するプラットフォーム」へ

 このほか村瀬社長は、ServiceNowのパーパスが「We make the world of work, work better for people(私たちは人にしかできない付加価値の高い新しい仕事を創造)」であることを紹介。

 「デジタルでできることはデジタルに任せ、人は人にしかできない仕事ができるようにする世界を目指しているのがServiceNowである。また、創業者のFred Luddyは、2004年の創業時に、企業で働く人々の体験をワークフローで変えて、新たな仕事を創造することを理念に掲げた。オフィスのなかでも、AmazonやNetflixといったコンシューマ向けサービスを利用するように、高いユーザーエクスペリエンスによって、社員の体験や顧客体験を一変したいと考えており、ServiceNowはそれを実現するためのワークフローを提供する会社を目指している。デジタル変革のキーになるのがユーザーエクスペリエンスである」とし、社内で使っている「Behind every great experience, is a great workflow(優れた体験の裏には必ず優れたワークフローがある)」という言葉も示してみせた。