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独Celonisが日本法人を設立、「日本にプロセスマイニングの考え方を広めたい」

UberやSiemens、Vodafoneなども採用済み

 プロセスマイニングを手がける独Celonis SEは24日、日本法人となるCelonis株式会社を都内に設立したことを発表した。同社 代表取締役には、コンサルティング業界で20年以上の経験を持つ小林裕亨氏が就任した。

 Celonisは、ドイツのミュンヘンにて2011年に設立された企業で、2018年には企業価値10億ドル以上のユニコーン企業との評価を受けている。Celonis 共同CEO 兼 共同創業者のアレキサンダー・リンケ(Alexander Rinke)氏によると、同社は毎年100%以上の成長率を遂げており、特にこの2年間は「従業員数が65人から700人以上となり、売上は約15億円から100億円以上へと成長した」という。

独Celonis 共同CEO 兼 共同創業者 アレキサンダー・リンケ氏
Celonisについて

 プロセスマイニングとは、情報システムの蓄積データを活用して実際の業務プロセスを再現する技術のこと。業務フローを再現して可視化し、非効率な部分を特定して原因を推定、問題の発生を予期して事前に対処することから、業務改善や生産性向上の方法を大きく変えるとして注目されている。リンケ氏は、Celonisの事業目標が「顧客、社員、取引先などすべての人に対し、業務プロセスをすばらしい体験に変えることにある」と述べている。

Celonisの事業目標
Celonisのプロセスマイニング技術

 すでに海外では、「UberやSiemens、Vodafoneといった企業がCelonisを導入している」とリンケ氏。例えばUberでは、顧客からの問い合わせによって生じる1日5700万件のイベントを処理して顧客満足度の向上を図っているほか、Siemensでは販売管理において1000万ステップの手作業を削減し、約10億ドル分ものオペレーション効率化を実現したという。

顧客事例

 日本で提供するソリューションは、2018年よりグローバル展開しているクラウド型プロセスマイニングサービスの「Celonis Intelligent Business Cloud」(Celonis IBC)が中心となる。これは、企業内の情報システムが実行内容に応じて生成するイベントログデータから、業務に関連するデータを抽出して実際に起きている業務プロセスを再現し、問題を発見して原因を特定するというものだ。

 具体的な機能としては、非効率でイレギュラーな業務を特定する機能や、原因を推定するアナリティクス機能、AIを活用した予測的な業務アドバイス機能、業務改善状況のモニタリング機能などが備わっており、「発見から改善、モニターまで、業務変革サイクル全体を支援できる」とリンケ氏は説明している。

Celonis IBCのデモ画面

 小林氏によると、日本における活動はすでに2月から開始しており、パイロットプロジェクトの数が20件を超えたほか、合計10社とのパートナーシップも締結したという。

 「プロセスマイニングのテクノロジーだけでなく、包括的なサービスやサポートを通じて日本にプロセスマイニングの考え方を広めたい。すでにCelonisにはグローバルで700社以上の顧客を通じて培ったベストプラクティスが存在するため、すぐにでも業務改善のあり方が提案できる。ただし、個別ニーズに対応する際にはパートナーと協力していきたい」(小林氏)。

Celonis 代表取締役 小林裕亨氏

 現在、オンライントレーニングプログラムの日本語化を進めているところで、年末までには提供を予定しているという。また、大学などの教育機関にもプロセスマイニングのアカデミックプログラムを提供すると小林氏は述べており、「こうした活動を通じて新しい問題解決の方法を日本に広めたい」としている。

Celonisの日本進出を待ち望んだパートナー企業

 会見には、パートナー企業を代表してSAPジャパン株式会社 代表取締役社長の福田譲氏と、株式会社三菱総合研究所 コンサルティング部門 副部門長の百瀬公朗氏も登場した。両氏ともCelonisの海外での成功事例に魅力を感じ、「ぜひとも日本進出してもらいたくて、一生懸命口説いた」という。

SAPジャパン 代表取締役社長 福田譲氏
三菱総合研究所 コンサルティング部門 副部門長 百瀬公朗氏

 中でもSAPは、CelonisのサービスをSAPとインテグレーションできる状態にしたソフトウェア「SAP Process Mining by Celonis」を共同開発しており、同製品の保守体制も整えた上でSAPのサービスとして提供する予定だ。

 福田氏は、「SAPのアプリケーションはデータの宝庫だが、業務プロセスといった観点からデータを可視化し、業務プロセスそのもののパフォーマンスを向上させるためには活用されていない。SAPアプリケーション内での業務プロセスをどう評価するか見極めるところに、SAPとCelonisが連携する意味がある」と述べた。

左から、三菱総合研究所 百瀬氏、Celonis 小林氏、独Celonis リンケ氏、SAPジャパン 福田氏