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Celonisは“攻めに転じる”、村瀬将思社長が2025年1月期の事業戦略を発表

早期の1億ドルの価値創出を達成を目指す

 Celonis株式会社は8日、同社2025年度(2024年2月~2025年1月)の事業戦略について発表。Celonisの村瀬将思社長は、「Celonisは、日本において世界最大の成長を遂げており、スタートアップフェーズから成長フェーズに入った。2025年度は攻めに転じる1年になる」とし、製品ポートフォリオの拡充や新規顧客の開拓に加えて、国内における戦略的パートナーシップの推進や、国内に適したユースケースの創出、日本語LLMとの連携などを進める考えを示した。また、「早期に1億ドル(約150億円)の価値創出を達成したい」とも述べた。

Celonis 代表取締役社長の村瀬将思氏

 独本社による独Symbioの買収についても言及。「Celonisでは、現在の姿(As-is)を可視化してきたが、Symbioにより、ITや役割、リスクなどのさまざまな角度から、プロセス全体をモデル化したあるべき姿(To-be)をとらえ、これと比較できるようになる」などとした。

Symbio社の買収

 会見では、2024年度(2023年2月~2024年1月)の取り組みについて振り返り、「Connect」、「Large Deal」、「Value」、「Talent」、「Strategic partnership」の5点に注力してきたことに触れた。

 主な経営指標における過去2年間の年平均成長率は、NNACV(新規年間契約額)が2.7倍、ARR(年間経常利益)が2.4倍、顧客数は1.6倍に達しており、社員数は1.8倍に増加。認定資格者数は71.5倍に大きく増加したという。

 「Celonisは、ドイツで生まれたソリューションであり、文化的に日本の市場にフィットするという背景がある。また、製造現場におけるカイゼンのように、IT領域における生産性を高める必要があると考えていたが、プロセスマイニングのようなことをやりたいと思ってもテクノロジーがなく、そこに活用するデータもなかった。だが、DXの流れのなかで、データが蓄積され、プロセスマイニングのテクノロジーが広がった。こうした変化が重なったことが、Celonisのビジネス成長につながっている」と総括した。

 具体的な活動として、四半期に一度の頻度で、グローバルのVIPが来日して、顧客との対話の機会を設けたほか、四半期ごとにCelonis CxO Clubを開催し、約30人規模のラウンドテーブルを通じて、データを活用したビジネス変革などについて情報を共有。Celonis Champion Clubでは、社内導入を率いるリーダーを対象にベストプラクティスを共有し、Celonis User Group(CeloUG)と呼ぶユーザー会を通じた情報交換も積極化したことを示した。

日本のCelonisコミュニティ

 2023年6月には東京でCelonis World Tour Tokyoを開催し、12月には大阪でCelonis Day Osakaを開催して、最新テクノロジーの訴求とともに、国内における最新事例を紹介。年間を通じて、国内導入事例を積極的に公開してきたことを強調した。

さまざまなイベントを開催
国内顧客事例の公開

 Celonisの村瀬社長は、「グローバルの成功体験が国内にも定着化し、Celonisによる価値創出が始まっている。Celonisを導入したことにより、キャッシュフローの改善、コスト削減、生産性向上などの価値を創出しているケースも増えている」としたほか、「複数部門に渡るプロセスにおいて課題が発生しているケースが多い。Celonisを導入することで、高い視座からの全体最適が可能になる。Celonisでは、バリューフレームワークを提供しており、導入前に価値特定を行い、価値証明、価値合意、価値実現というステップを踏んでいくことになる。価値出しのための仕組みができている点が強みになっている」と述べた。

 また、2023年度には、NECおよび富士通と、それぞれ戦略的パートナーシップを結び、両社のオファリングサービスにCelonisが搭載されたこと、Celonisの国内トレーニング受講者数が1万333人と約2.2倍に増加したこと、認定資格数が2万108個となり、1年間で4.2倍になったこと、エキスパートバッジ数が4.3倍の5622個になったことにも触れた。

戦略的パートナーシップの発表
Celonis認定技術者(パートナー様)の状況

 さらに、「Value Cake」と呼ぶ日本独自の取り組みを開始。導入企業において一定の価値が創出された場合に、ケーキをプレゼント。ケーキを囲みながら、利用現場とプロジェクトチーム、経営者などが一緒になって情報交換を行い、成功の理由などを聞きながら、成果を祝うという。

 「改善に重要なのは、効果を出したあとに、コミュニケーションし、リワードし、リコグニッションすることである。Value Cakeは、日本発の施策として展開しているが、これがグローバルにも始まっている」とした。

Value Cake

 また、CeloPolyと呼ばれるモノポリーをオマージュしたボードゲームを欧州の社員が開発。さまざまな障害をクリアしながら、移動する際に、コストやCO2排出量も計算して、最適なプロセスを導き出すという内容だ。2023年半ばには日本語化し、6回のゲーム大会を国内で開催したという。「ゲームを楽しみながら、データを使った業務改善の仕組みを理解できる」と述べた。

CeloPolyの大会を6回開催

 加えて、「奇跡的なほどやりがいのある仕事」というCelonisの文化を醸成するための取り組みにも注力していること、グローバルの優秀な社員を日本のLighthouse customer teamに迎えて入れ、グローバル事例を日本の企業に紹介している例も示した。

 一方、2025年度は、「Connect」、「Large Deal」、「Value」、「Talent」、「Strategic partnership」に加えて、新たに「New logo」に取り組む方針を打ち出した。

 村瀬社長は、「攻めに転じる1年として、新規顧客の拡大に積極的に取り組む。Process Intelligence Graphを中核に、製品群が増えており、全社横断的に業務変革するテクノロジーをそろえることができている。アーリーアダプターによる価値創出の実績を、多くの顧客に拡大していく」と述べ、「Celonisにより、7~8割の業務を自動化し、自律的な企業(Autonomous Enterprise)を目指す。そのプラットフォームとして、Process Intelligence Graphを活用することになる」などと述べた。

FY25 Celonis Japan Strategy Focus

 新たな価値創出に向けて、グローバルユースケースを紹介するとともに、日本市場に向けてカスタマイズを行う考えを示した。「国内では、オンプレミス環境やスクラッチ環境が残っており、これに対応できるリソースを整備する必要があると判断した。この部分は、パートナーエコシステムによって対応していくことになる。国内で利用されているパッケージシステムを、コネクタによってサポートしたり、日本にしか適用できないユースケースに対応したビジネスアプリケーションをパートナーと共同開発したりといったことを考えている」とする。

 ここでは、日本語LLMとの連携を強化するほか、Celonisが提供するバリューフレームワークの適用顧客の拡大にも取り組む。

幅広く、早期な価値創出の推進

 なお、複数のプロセスを横断的に効率化するOCPM(Object-centric process mining)については、すでに国内7社が取り組みを開始しているという。

 「NNACVは、2024年度と同等規模の成長を目指すが、2倍程度の成長でもいい。売り上げばかりを伸ばすのではなく、日本において、価値をどれだけ創出できたのかといった点にフォーカスしたい。これが未来の技術であるという認識を定着させたい」と語った。

 さらに、Celonis CxO Clubでは、2025年度の取り組みとして、CFOやCSCO Round tableを拡張する形で開催。Celonis Champion Clubでは対象企業を拡大し、CeloUGでは分科会活動を開始するという。加えて、パートナー企業同士が情報交換を行うCeloPEG(Celonis Partner Ecosystem Group)も開催。2024年7月には、年次イベント「Celonis World Tour Tokyo」の開催を予定している。

日本のCelonisコミュニティの拡張

 人材育成については、早期キャリア形成を支援するために、社員を欧州に派遣して1年間のオンボーディング学習を行う「Orbit Program」を開始することも発表した。

 Celonisの村瀬社長は、「日本は世界4位の経済大国でありながらも、時間あたりの労働生産性は30位となっている。だが、この状況は、先進国が将来目指すべき姿を、日本がロールモデルとなって先行できる可能性があるともといえる」とし、「日本は、社会や経済の成熟度に応じたビジネスモデルに適応する必要があり、今後世界が迎える少子高齢化社会に向けたサステナブルなロールモデルを定義すべきである。そのためには、単なるデジタル化から脱却する必要があり、ポートフォリオ経営やROIC経営による付加価値のある企業を目指さなくてはならない。そのためには、プロセスの標準化、プロセスの合理化を行うプロセスファーストの姿勢が必要になる」と指摘した。