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Celonis日本法人・村瀬社長、「データ活用を通じて日本を元気にしたい」
2022年3月24日 06:15
プロセスマイニング事業を展開するCelonis株式会社は23日、同社2023年度(2022年3月~2023年2月)の国内事業戦略を発表。Celonisの村瀬将思社長は、「2023年度を、日本のData Execution元年と命名する。日本の企業が、プロセスマイニングとData Executionを通じて、データを使って、業務を自動実行し、自動管理する世界に入っていくことになる」とした上で、「日本市場においては、IT企業のほか、通信、製造、金融業にフォーカスするとともに、戦略的なパートナーシップを国内でさらに強化する。データ活用を通じて日本を元気にしたい。目指すのはJapan Powered by Celonisである」などと述べた。
データによるビジネスモデル変革を支援する基盤が求められている
Celonisは2011年にドイツ・ミュンヘンで創業し、現在、世界13カ国16拠点で事業を展開している。プロセスマイニング市場におけるシェアは60%以上で、2000社以上への導入実績を持つ。2020年には、クラウドプラットフォームのExecution Management System(EMS)を発表し、データをベースにしたプロセスの可視化と、そこから発見したボトルネックを解決するための業務の自動実行管理を事業の両輪としている。ARRの成長率は5期連続で倍増しており、企業価値評価額は1兆2000億円以上になっているという。
日本法人は2019年2月に設立。これまでに、ブラザー工業や横河電機、日立システムズなどがCelonisを採用している。
村瀬社長は2021年12月にCelonisの社長に就任しているが、それ以前は、ServiceNowの社長として日本市場での成長を牽引した実績や、日本ヒューレット・パッカードでソフトウェア事業統括執行役員を務めた経緯がある。
村瀬社長は、「日本は世界経済では3位の規模でありながら、幸福度指数は世界40位である。日本の労働生産性は下降傾向にあり、リーマンショック以上の大きな落ち込みになっており、主要先進国のなかでも最下位だ。コロナ禍で日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んだが、デジタイゼーション(特定の業務をデジタル化すること)やデジタライゼーション(デジタル化によって新たなビジネスモデルを提供すること)にとどまり、データを活用したビジネスモデルの変革までには到達していないのが現状である。日本の企業には、データによるビジネスモデルの変革の実行を支援するプラットフォームが求められている」とする。
続けて、「Celonisは、プロセスマイニングとData Executionにより、人々の働き方を変え、持続可能性を担保し、人々と社会のパフォーマンスを無限大に開放することをパーパスに掲げている。DXの司令塔になるのがCelonisである」などと述べた。
Data Executionの実現により、ドイツテレコムでは調達プロセスの80億円の効率化、Uberでは問い合わせ業務効率化により、顧客満足度が30%向上――といった事例が出ているという。
村瀬社長は、「日本の企業が作り上げてきた組織や社会のほか、レガシーシステムの存在が変革を困難なものにしている。また、業務の非効率性が見えにくくなっている。見えない非効率性である『業務上のサイレントキラー』を明らかにして、それを解決する必要がある」と指摘する。
サイレントキラーとは、医療分野で使われる言葉であり、高血圧をはじめとする生活習慣病などは、初期は自覚症状がないが、放置すると健康を阻害。合併症などにより、死に至る可能性があるという状況を指す。
村瀬社長は、「企業を取り巻く環境は、コロナ禍や地政学的問題によって生まれた複雑性だけでなく、部門間のサイロや、サイロに最適化したシステムによって、さらに複雑性が生まれ、ビジネスパフォーマンスの低下を生んでいる。これが業務におけるサイレントキラーになっている。組織の生産性低下は、運用コストの増加、新規ビジネスの機会損失、従業員の高い離職率のほか、無駄なエネルギーの消費やCO2排出量の増加にもつながる」と前置き。
「Celonisのプロセスマイニングは、既存システムの大幅な改修は不要で、業務システムからイベントログを抽出し、レントゲンのようにして業務プロセスを可視化。ボトルネックを見つけ、これをEMSにより自律的に改善提案をして、インサイトを自動的に実行できる。既存のテクノロジーをオーケストレーションし、人々が到達したことのないレベルのパフォーマンスを供給し、業務のサイレントキラーを解消可能だ」と、自社ソリューションの価値を説明した。
EMSでは、100以上のプロセスコネクタにより、SAPやSalesforce、ServiceNowなどの各種システムからデータを収集。500以上の事前構築済みアプリを提供し、1000以上のシステムとの統合が可能になる。
例えば、Celonisのプロセスマイニングでは次のようなことがわかるという。
購買発注明細書のデータを分析すると、「購買発注明細送付」から「入庫の記録」のプロセスに至るまで、直接到達するプロセスと、「注文確認書の受け取り」の業務を経たプロセスと「価格変更」を経たプロセス――といった、3つのプロセスが存在することがグラフィカルに確認できる。このうち、価格変更を除く2つのプロセスはいずれも8~9営業日でプロセスが完了しているのに対して、価格変更のプロセスは17営業日かかっていることが表示される。また、価格変更のプロセスでは、タッチレスレートは22%にとどまり、ほかのプロセスに比べて自動化が進んでいないこともわかる。
さらに、プロセスを広く可視化していくと、請求書を記録してから購買処理をするといったように、業務の順番が逆となり、コンプライアンス上の問題がある処理が行われていることがわかるほか、そのプロセスの比率がどれぐらいを占めているのか、どこの組織で行われているのかといったことも抽出できる。
また、拠点ごとの比較も可能であり、米国ではタッチレス比率が31%であるのに対して、ドイツでは3%にとどまり、自動化の遅れが発生していることがわかり、また、そのなかでどのプロセスの自動化が相対的に遅れているのかを比較しながら検証できる。
こうした問題抽出や比較によって、課題解決の取り組みができるというわけだ。
そのほか、適合性分析により、標準モデルから逸脱した業務フローを抽出して、その根本要因を特定。ある時期やある企業に集中していたりすることがわかれば、それをもとに改善を図ることができる。
「価格変更そのものが、プロセスの遅れなどの根本原因になっていた場合、規則性がある価格変更ならば、マスターそのものを変更したほうがいいと判断して、それを提案。イレギュラーな価格変更であれば、適切な価格変更のプロセスなのかを確認し、ワークフローの改善につなげることができる」とした。
Celonisの日本における事業方針
Celonisの日本における事業方針についても発表した。
2023年度には、積極的な体制強化に乗り出す姿勢を打ち出し、これまでの3カ月間で社員を倍増。リーダー陣の採用やパートナーシップの強化、パートナーにおけるCelonisコンサルタントの育成などにも取り組む考えだ。
市場ターゲットとしては、IT企業のほか、通信、製造、金融業を挙げ、「まずは、ITを生業としているサービスプロバイダー(システムインテグレータ)をターゲットにした。Celonisを使い込んだ企業と、パートナーとして一緒に展開できる。また、フォーブス誌のグローバル2000社のうち、215社を占めている日本の企業を対象とし、なかでも日本の心臓となる製造業、IT投資予算が大きい金融サービスへの提案から開始する」と述べた。
また、既存顧客に対しては、社内に設置したCustomer Value Groupによる提案を加速。Customer Value ManagerおよびCustomer Value Architectにより、KPIの設定やそれに向けた取り組みなどについて提案するという。
Celonisでは、パートナー販売を基本としており、国内リセール&デリバリーパートナーとして、アビームコンサルティング、CTC、日立システムズ、クレスコ、トランスコスモス、コベルコシステムが展開。このほど、新たなNTTデータが参加したことを明らかにした。また、国内デリバリーパートナーでは、システムサポートが参加することも発表した。また、パートナー企業やユーザー企業とともに、製造業、金融業向けのCoE(Center of Excellence)の設置も行う考えも示した。
「国内での戦略的パートナーシップの強化を進め、ジョイントビジネスプランの合意や推進に加え、パートナー社内へのCelonis事業本部の設置なども進めてもらいたいと考えている。Celonisを活用することで、パートナー企業のコンサルタント業務の変革にもつなげることができる」と述べた。
パートナーにおけるCelonisコンサルタントの育成にも取り組み、現在、400人の資格者を2023年度末までに1000人に増加。パートナー向けイベントであるJLED(Japan Local Ecosystem Day)も半期に一度開催し、パートナーとの連携を強化する考えだ。
一方、ユーザー企業の経営層の情報交換の場として、CxO Clubを設置した。2021年1月21日には、国内企業の常務クラスの25人のCxOが出席した1回目の会合を開催し、海外での先進事例の紹介や、業種別に分かれたグループディスカッションを実施したという。
「Celonisは、テクノロジーを提供するだけでなく、変革を促進するベストプラクティスの提案も行うことが重要である。CxO Clubの参加者からは、タレを足し続けた秘伝のタレで熟成されたような現行業務を支える既存基幹システムから、いかにデータを効果的に、リアルタイムに可視化するかが重要であるかという課題が示され、それをCelonisで解決し、驚異的な実績を持つ事例を共有できた。ある企業のERPでは、8割の機能が年に1回以下しか使われないことがわかった。システムの開発と利用する現場とのギャップが生んだ課題であるが、Celonisでは、データをもとに対話ができ、こうしたギャップを改善できる。今後、多くの企業では、データドリブンなビジネス運営をリードできるかが課題になるだろう。また、複数部門に渡るプロセスの可視化と改善を図る必要があり、複数部門にわたるプロセスの可視化は、プロセス改善の金脈になるだろう」などとした。
CxO Clubの第2回会合は4月8日に開催する予定だという。
さらに、CeloUG(Celonisユーザーグループ)を設置し、4月22日には、発足記念全体大会を開催することも発表した。CeloUGは、Celonisユーザーが参加し、情報交換や利用技術の向上、業種や業務、ソリューションごとの分科会などを設置するという。KDDIおよびパナソニックが発足時の理事に任命されている。第1回の全体大会では、約100人の参加を予定している。
また、全世界12都市で行っているCelonisのフラッグシップイベント「Celonis World Tour」を、6月28日に日本で開催。基調講演にはパナソニックの玉置肇CIO、ネットワンの篠浦文彦取締役が登壇することが決定している。2022年秋には年次イベント「Celosphere Japan 2022」も開催する予定だという。
そのほか、上智大学と連携し、2019年度から、Celonis Academy Programを正式な講座として実施。30人以上が受講し、優秀な学生をインターンとして採用するといった取り組みも行っているという。
なお、Celonisでは、日本におけるミッションとして、「プロセスマイニングとData Executionを通じて、人々と社会のパフォーマンスを無限大に開放し、日本企業の競争力強化と持続可能な社会形成に貢献する」を掲げ、ビジョンには、「日本企業、社会において、データを活用したカイゼンを越えるビジネスモデルの変革を推進するために、新しいビジネスオペレーションを定義する」、「人にしかできない付加価値のある仕事へのシフトを促進し、人々の働き方、生き方を変え、一人一人の人生価値の最大化を図る」、「自社のみならず、お客さま、パートナーを巻き込んだエコシステムを作り上げ、共にこの奇跡的なほどやりがいのある仕事を完遂する」を挙げた。
これについて村瀬社長は、「ミッションはグローバルの考え方を反映したものであり、ビジョンは日本の現場の社員が作ったものである」と述べている。
一方、会見では、Celonis本社のバスティアン・ノミナヘル(Bastian Nominacher)共同CEOが、ビデオメッセージを送り、次のように述べた。
「Celonisは、すべての企業がデータを活用し、ビジネスプロセスの持続的な変革を支援することをビジョンに掲げて、10年前に創業した。急速に変化する環境ではビジネスプロセスを変革する手段が必要であり、Celonisの技術によって、それを実現することができる。Celonis EMSの需要は着実に拡大している。ここ数年、日本の企業は、労働生産性の向上に迫られている。だが、多くのDXは、デジタルレイヤーのみのデジタル化でビジネスプロセスの変革には至っていないため、十分な成果をあげていない。Celonis EMSにより、企業がデータ活用を向上させ、新しいビジネスオペレーションを定義することをCelonisは支援できると信じている。生産性を向上させ、サステナビリティを推進することを全力で支援する。Celonis は日本に注力している。強力なチーム、顧客、パートナーの基盤を構築するために、村瀬氏を日本法人のリーダーに迎えた。日本市場でもお役に立てるように全力を尽くしていく。デジタル変革で日本の企業の生産性向上を支援したい」と語った。