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Celonis、ビジネス全体のマイニングが可能な新製品「Process Sphere」を発表
ビジネスユーザーのマイニングを支援する「Business Miner」も
2022年12月22日 06:15
Celonis株式会社は21日、プロセスマイニングを全面的に刷新した業界初のプロセスMRIと位置づけるソリューション「Celonis Process Sphere」について説明した。
11月9・10日(現地時間)に、ドイツ・ミュンヘンで開催した年次ユーザーカンファレンス「Celosphere」において発表したもので、Celonisの村瀬将思社長は、「オブジェクトセントリックプロセスマイニングの研究成果を初めて実用化したものになる」と説明した。
また「2013年に、プロセスマイニングに加えてプロセスインテリジェンスが登場したことで、非効率性の発見に活用するといった動きが加速した。2020年にはエグゼキューションマネジメント(業務実行管理)システムとして、自動的に非効率性を排除し、業務を自動実行できるようにした。今回の発表で、プロセスマイニングが一歩進み、新たな世界に入った。オブジェクトセントリックプロセスマイニングという学術論を、テクノロジーとして実現することに成功したものであり、これによって、Celonisはビジネスパフォーマンスプラットフォームを提供する会社に進化した」と述べた。
同社では、「プロセスマイニングの再発見」という表現も用いている。
Celonisでは、システムやプロセス全体を可視化できるプロセスマイニングを説明する際に、「レンドゲン」という比喩を用いてきたが、今回の進化により「MRI」という表現に変更。「2次元で見ていたものを、多次元で見るように、新たな観点を追加した」とし、「複数のアプリケーション群が利用され、データとプロセスが複雑で、サイロが存在している環境では、現在のプロセスマイニングでは限界があった。数百のシステムに、数百のテーブルが存在するといった状況が生まれ、ビジネスプロセスが交わる領域で改善箇所を発見することが困難だったことが最たる例である。これは日本の企業が抱えるビジネス課題に通じるものがある。包括的な観点から示唆を得ることが大切であり、新たなプロセスマイニングは、プロセスを個別で見るのではなく、オブジェクトの概念で表現されるようになる。オブジェクトセントリックな描写により、プロセスと部門間の交差領域に関して、生きた洞察を提供することになる」と説明した。
Celonis Process Sphereでは、これまでに結びつけられていなかったものを結びつけて、ビジネスオブジェクト同士のリアルな関係性の理解を可能にするソリューションとしており、単一プロセスのマイニングから、ビジネス全体のマイニングへと広げることができる。
エンドトゥエンドのサプライチェーンを結びつけ、受注、購買依頼、請求書、出荷などのオブジェクト間の複雑な関係性を把握。これを可視化することにより、サプライヤーへの支払いが遅延していることを特定できるだけでなく、そのような非効率なアクションがビジネスのほかの部分にどう波及しているのか、顧客にどのような影響を与えているのかといったことも確認できる。
例えばAmazon.co.jpのようなECサイトでは、3つの商品を受注した際に、商品は3つ、梱包は3つだが、請求はひとつになっている。「オブジェクトのなかで共通のイベントを発見し、オブジェクトを中心にして可視化していくことができる。オブジェクトをつなぎ、多角的に受注プロセスを分析できる世界がやってくる」と述べる。
また、受注した製品の納品が遅れている場合に、受注プロセスのどこで問題が発生しているかを分析するだけでなく、その原因となる製品の発注や、部品などの購買プロセスまでさかのぼり、それぞれとの交差するところでなにが起こっているのかも確認できる。
村瀬社長は、「複数部門に渡るプロセスは、プロセス改善の金脈である。高い視座からの全体最適を行い、日本の企業が村社会からの脱却が可能になる」とした。
ビジネスユーザーが洞察を得るまでの時間を短縮できる「Celonis Business Miner」
年次イベントのCelosphereでは、Celonis Process Sphere以外にも新たな発表が行われている。
そのひとつが、業界初のプロセス調査テクノロジー/共同作業スペースとする「Celonis Business Miner」である。非技術系ビジネスユーザーのためのコラボレーティブプロセスマイニングとしており、ビジネスユーザーが洞察を得るまでの時間を短縮できるのが特徴だ。Q&A形式による直感的で新しい探索方法を採用。洞察の取得や共有、既存および新規ユーザーとのコラボレーション、ビジネスユーザー向けの導入、設定をガイドする機能などを搭載している。
例えば財務担当者が、「早期支払率はどれくらいか」、「5億ドルのフリーキャッシュフローを活用するのに最適な場所はどこか」といった質問をすると、そのプロセス領域を調査するための適切な回答が提示される。
また、部門を超えて生産性を最適化することができる「Celonis Workforce Productivity」も発表されている。デバイスの操作に関するログを収集し、アプリケーションの利用状況などを可視化。挙動の変化を理解したり、従業員体験を把握したりできるほか、ログや挙動をもとに熟練者の仕事のやり方を継承していくことも可能だという。
なお、年次イベントのCelosphereに参加した村瀬社長は、「基調講演の開始前には長蛇ができるなど、世界中でプロセスマイニングに対して、高い関心が集まっていることが裏づけられた。Celosphereでは、新たなプロセスマイニング技術の実用化についての発表のほかにも、著名な企業が事例を紹介。43社がスポンサー企業となり、日本ではNTTデータが名前を連ねた」と報告した。
また、「これまでは、エグゼキューションマネジメントシステムであったが、Celosphereでは、これからはエグゼキューションマネジメントネットワークになるという話も出ていた。購買部門、仕入れ部門の双方がCelonisを利用していた場合には、データを共有することで、業界やサプライチェーンのムダやムラを発見し、改善し、最適化することができる」とも述べた。
2022年における日本のビジネス成果
一方、2022年における日本のビジネス成果についても触れた。
村瀬社長は、「2022年は、データエグゼキューション元年になると宣言し、それに向けた活動を行ってきた。また、日本の組織を拡大させ、社員数は3倍になった。販売したあとも顧客をサポートするCustomer Value Groupを立ち上げ、この組織は1年で8倍以上に増やした。xFunctionイニシアチブを立ち上げ、学生などを対象にしたプロセスマイニングに関する人材育成にも力を注ぎ、筋肉質な組織になった。進捗があった1年であった」とコメント。新規売上は前年比5倍、ARR(Annual Recurring Revenue)は3倍、顧客数は2倍、Celonis認定技術者は1000人を突破したという。
またCelonisでは、エグゼクティブを対象としたCxO Clubを2022年1月からスタート。2022年は四半期ごとに開催したほか、Celonisのユーザー会であるCelonis User Group(CeloUG:セログ)をこれまでに3回開催し、毎回約100人が参加。さらに、5社だけが参加しているCelonis Champion Clubを設置し、社内導入を率いるリーダーを対象に情報提供やサポートを行っていることを紹介した。「これらのコミュニティ活動は、今後も継続し、さらに強化をしていく」と語った。
そのほか、「レガシーからの脱却やクラウド化などのシステムトランスフォーメーションがビジネス機会になっている。サプライチェーンの可視化や効率化、カスタマーサービス領域の改善、CRMの改善などを機会に、Celonisの検討が行われている。また、戦略的パートナーシップを相次いで発表した。アクセンチュアはCelonisのコンサルタントを1万人育成する計画を打ち出し、NTTデータはCelonisによって500億円のビジネスを創出すると発表。富士通は、モダナイゼーションの可視化にCelonisを活用すると発表した」などと語った。
あわせて村瀬社長は、「Celonisを活用した持続可能な日本社会の形成に取り組む」とも述べている。