大河原克行のキーマンウォッチ
富士通・時田隆仁社長が語る、“営業利益率10%必達を宣言できる理由”
2020年1月6日 06:00
目的なくしてテクノロジーを作るということはあり得ない
――2019年12月には、いよいよスーパーコンピュータの富岳の出荷が始まりました。また、富士通には、最先端コンピューティングのひとつであるデジタルアニーラ、そして5Gのネットワーキングへの取り組みなど、世界有数のコンピューティング技術やネットワーク技術があります。これらは、サービスオリエンテッドカンパニーやDX企業を目指すうえで、どんな役割を果たしますか。
なんのためのコンピューティングパワーなのか、なんのためのコンピューティングテクノロジーであり、ネットワークテクノロジーであるのか。それを問うことが真っ先でなくてはいけません。いいものを作ったので売りましょうというような発想では、これらのテクノロジーは、富士通の今後の目指すべき方向からは外れます。
確かに、コンピューティングを支えるテクノロジーが、富士通の本質的な強みであることに違いはありません。しかし、これが唯一のものなのか、だれでも作れるものなのかという点もしっかり見極めていく必要があります。そこには明確な選択が必要だと思っています。社会課題を解決するためには、特化したテクノロジーが必要です。そして、それを具現化するために必要な特化したハードウェアが必要になることもあります。そのテクノロジーやコンピューティングが、富士通しかできないものであれば、富士通はそれに取り組んでいきます。
富岳を例にとれば、このスーパーコンピュータは、膨大なデータを高速に処理するためには、京の100倍の性能が必要だというニーズによって生まれたものであり、気象変動の解析や創薬などに役立てたいという、社会のニーズに応えるという具体的な目的があり、そこに富士通のテクノロジーを生かすことができた結果、生まれたものです。目的なくして、テクノロジーを作るということはあり得ません。
富士通でやるかどうかというのは、その価値に届くものが富士通で作れるかどうかということが判断基準になります。もっといいものがあって、それを使った方が、目的が達成できるといった場合に、当然、お客さまはそちらを選びます。DX企業を目指す富士通も、お客さまがそちらを選ぶのであれば、富士通はそれを使う。
もし、富士通がコンピューティングにこだわるのであれば、お客さまから選ばれるものを作らなければならないということです。作れなかったら必要ない。作れたら継続する。ただこれは、モノを作る、作らないという短絡的な議論ではないと考えています。
富士通はソリューションやインテグレーションを提供してきた会社であり、それをより強くしていきたい。そのためには、テクノロジーの面でも、業種、業務の在り方についても、フェアに見る必要があります。ただ、テクノロジーの力を持っていないとすべてをフェアに見ることはできません。その点でもテクノロジーの力を自ら持つことは大切です。
富士通の最大の強みは、テクノロジーと強固な顧客基盤に支えられた業務や業種ノウハウの蓄積だといえます。このテクノロジーを使って、顧客や社会の価値に変えるということにもっと取り組んでいきたいと考えています。