大河原克行のキーマンウォッチ

富士通・時田隆仁社長が語る、“営業利益率10%必達を宣言できる理由”

2020年は新たな方向に向けたスターティングポイントになる

――2020年は富士通にとってどんな1年になりますか。

 2020年は、富士通にとって新たな方向に向けたスターティングポイントになり、「DX企業になるための実行フェーズ」に入ります。半年間で構想は練り終わり、2020年1月から実行に入る。しかも、少しずつやるという実行ではなく、全社一斉に、一気にやるという実行フェーズとなります。

――2020年1月には、DXの新会社の設立について具体的な内容を発表する計画です。この新会社が目指すゴールはなんですか。

 新会社はDXの提案から企画、構築、運用までをワンストップで提供する会社となります。戦略コンサルティング、業種コンサルティング、ソリューションコンサルティング、テクノロジーコンサルティングなどを展開し、富士通製品にこだわらず、社内外から最適な製品を用いて、ソリューションを提供することになります。

 富士通グループの枠を超えてビジネスを展開するのも特徴です。このDXの新会社が、どうなればいいかというゴール設定は、もう少しディスカッションが必要です。もちろん、KPIの設定はあります。

 ただ私が重視したいのは、財務指標ではなく、非財務の指標です。2019年6月の株主総会で、レスポンシブルビジネスに力を注ぐと宣言しましたが、DX新会社もそれは同じです。非財務指標とは、従業員エンゲージメントや顧客エンゲージメント、ダイバーシティ、コミュニティ活動、環境活動などがありますが、これらにもKPIを定めて、これを達成すると、利益とどうリンクするのかといったことをトラックする活動を取り入れたいと考えています。

 非財務指標をベースにして、富士通の成長を示せるようになりたい。これをやるためには、富士通の社員の価値観や行動が変わることが大切であり、まずは全世界13万人の社員全員が、富士通は新たな指標や価値観で成長する会社であるということを実感することだと思っています。DX新会社はそれを具体化できる会社であることを目指します。

――時田社長は、2022年度に営業利益率10%の達成を掲げ、事業方針の説明会見でも、「10%はできる」と宣言しました。しかし、これまで歴代社長が、営業利益率10%を目標に掲げながら未達に終わっています。時田社長が、必達を宣言できる理由はなんですか。

 経営目標として、営業利益率10%は大切な目標です。しかし、これがチャレンジングな目標であることは確かです。では、なにがポイントになるか。ひとつは、海外のビジネスがどこまで利益向上に貢献するかという点です。そして、国内事業における利益率の改善がもうひとつの鍵です。特に、国内の利益率向上に向けては、大きな改善の余地があると思っています。

 例えば、富士通のビジネスの多くは、SEのリソースに頼ったものになっていますが、その仕組みを変えることで、利益の改善が図れると思っています。

 業界全体でSEリソースの不足が指摘されていますが、これは、やるべきことをやっていないから生まれている課題です。富士通をはじめ、多くのSIerに見られるのは、プロジェクトマネージャーが、ひとりの優秀なSEを、自分のプロジェクトのためだけに羽交い絞めにしている。ERPも一品づくりが中心となり、そのために一人ずつSEが張りついているという状況です。10個のプロジェクトに10人のSEが向かっていては、SEリソースが不足するのは当たり前です。優秀なSEほど、複数のプロジェクトにかかわらせるべきです。

 富士通をはじめとした多くのSIerは、業種に特化し、アカウント軸を中心に成長してきた会社ですから、かつてはそうした体制が必要でした。しかし、いまはクロスインダストリーが求められ、ビジネス構造が変わり、お客さまもそれに向けて変わろうとしているなかで、われわれの体制だけが旧態依然の体制のままでは非合理的です。

 これは私がSEだった経験があり、いまの時代の変化をとらえているからこそ、発想できるものかもしれません。いまは、時代が変わってアプローチの仕方が変わっているのです。

 営業利益率10%は、公表した通り、2022年度にはやり遂げたい。そこを目指していきます。自信があるとかないとかを言っていては目標にはならない。これは絶対にやり遂げます。