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富士通の全社DXプロジェクト「フジトラ」が始動、2022年度までに1000億円超を投資

時田社長が東証システム障害に関する謝罪も

 富士通株式会社は5日、全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を開始した。

 2022年度中までに1000億円を超える規模の投資を行い、富士通グループ自身の変革を進めるとともに、その成果やノウハウを、ソリューションやサービスなどに反映し、デジタルテクノロジーを活用した社会課題の解決に貢献するという。

 部門やグループ、リージョンを横断して、富士通グループの変革に取り組むプロジェクトとなり、新事業の創出、戦略事業の成長、既存事業の収益性強化、各種プロセスの標準化および効率化、人事制度や働く環境の改善など、経営や現場の重要課題の解決に取り組む。実行においては、従業員や顧客の声を取り入れながら、デザイン思考やアジャイルなどのフレームワークを活用することになる。

 7月にプロジェクトをキックオフし、2020年10月から本格的に始動させる。2023年3月(2022年度)までをプロジェクト期間に位置づけており、「このプロジェクトが不要になることがゴールである」(富士通 執行役員常務兼CIO兼CDXO補佐の福田譲氏)とした。

富士通 執行役員常務兼CIO兼CDXO補佐の福田譲氏
フジトラのロゴマーク

“フジトラ”の推進体制

 プロジェクトオーナーは、CDXO(チーフ・デジタルトランスフォーメーション・オフィサー)を務める時田隆仁社長。そして、2020年4月にSAPジャパン社長から富士通入りし、CIO兼CDXO補佐を務める福田執行役員常務がプロジェクトリーダーに就くとともに、時田社長直下のCEO室に、DX推進組織である「CDXO Division」を10月1日付で設置した。

 また、国内15部門、海外5リージョンにおいてDX Officerを選出し、DX責任者として、部門横断での改革の推進や全社施策の浸透、各部門レベルでのDXをリードさせる。さらにデザイナーやアジャイルコーチ、営業・SE、社内IT、財務経理、広報IRなどの多様な人材から、DX Designerとして22人を選出し、DX Officerとともにプロジェクト活動を推進する。

 経営から現場への縦の連携の役割がDX Office、部門横断の横の連携をつなぐ役割を担うのがDX Designerとなる。

全社DXプロジェクト -体制-

 富士通の福田執行役員常務は、フジトラの推進においては、非連続の変化や組織を横断するさまざまな革新のための「経営のリーダーシップ」、ビジネスが発生している現場を重視する「現場の叡智を集結」、そして、時代の変化に追随するための「カルチャー変革にフォーカス」の3点の取り組みを、重点テーマとする姿勢を示した。

 「そもそも、DXへの取り組みをプロジェクトとして立ち上げなくてはならないことに対して、懸念や憂慮を感じている。時代の変化に追随することは企業の生命線であり、それを実現できる企業体質や文化を作り上げる」と述べた。

“両利き”経営に対応できるよう「E」をバランスさせていく

 富士通では、システム保守や運用、プロダクト提供といった従来型IT領域を「For Stability」と位置づける一方、DXやモダナイゼーションといったデジタル領域を「For Growth」として成長領域にとらえている。

 今回のフジトラにおいては、「For Stability」のうち既存事業を「S1」とし、効率化や高収益化、スマート化を追求。プロセスのリ・デザインを「S2」として、標準化や効率化、データドリブン経営への移行を図る。

 また「For Growth」では、戦略事業を「G1」と呼び、成長戦略の実行や投資の加速、非連続の打ち手、M&Aに取り組む一方、事業創出を「G2」として、起業家マインドの醸成や社内外エコシステム、M&Aに取り組むとの考えを示した。

 そして、カスタマエクスペリエンス(CX=顧客体験)の軸に加え、エンプロイーエクスペリエンス(EX=従業員体験)を定義。DX人材やグローバルリーダーシップの育成、タレントマネジメント、ジョブ型雇用の採用、働き方改革などを行う「人を生かし合う制度・環境」を「E」というカテゴリに置いた。

全社DX -モデル-

 福田常務取締役は、「富士通が成し遂げようとしているのは、Stabilityをより強くし、収益性を高めること、そしてGrowthにおいては非連続に事業を立ち上げ、これまでにないスピードや歩幅で成長させていくことである。これによって、攻めと守りの『両利き』を目指す」とする。

 一方で「だが、富士通の課題はEで示した制度、環境、事業支援機能が、Stabilityに最適化されすぎている点である。これはどの企業にもいえることだが、いまを支える主力事業にあわせて企業は最適化しがち。言い換えれば、Growthに向けて最適化されていないということだ。これを改善して、『両利き』経営に対応できるようにE1をバランスさせていく。3年間という短い期間に、一度に大きく変えることで両利きを実現する」とした。

 なお福田常務取締役は、「StabilityとGrowthでは使う筋肉が異なる。必要とされる教育プログラムや人材、キャリアパスも異なる。富士通は、これが既存事業側に寄っている。ゴールキーパーは、10本シュートが飛んで来たら10本止めなくてはならないが、フォワードは10本シュートを打って、1本入れば、新聞の1面に掲載される。評価のされ方が違う」などと比喩(ひゆ)して、StabilityとGrowthにおける人材育成や社内予算などの仕組みを変える必要性を示した。

DX推進指標を先行企業の水準まで引き上げたい

 また具体的な指標について、福田常務執行役員は慎重な姿勢をみせた。

 「プロサッカーチームは、試合で勝つことを目指しており、試合前に何点取るというようなことは決めていない。Stabilityの世界は、予算をしっかりと決めてやるビジネスだが、Growthは目標を決めたことによって逆にがんじがらめになり、そこにリソースがまわらなくなるという可能性がある。可能な限り目標を設定し、定量化するが、やってみなくてはわからないという状況にある。従来型の目標設定とは異なる」と述べた。

 そうしたなかで、フジトラの具体的な指標のひとつにあげたのが、経済産業省の「DX推進指標」である。福田常務執行役員によると、現在、富士通は「厳し目に見て1.6」と、ほぼ平均的な位置づけにあるが、これを先行企業の水準である3.5にまで引き上げるという。

 「DX推進指標は、部門別、グループ会社別に公開しており、これは続けていく。また経営と一体化して取り組むという観点からは、P/Lに影響がある指標から成果を出したい」とした。

 富士通では、新たに非財務目標を経営指標に取り込むことを発表しており、フジトラでも、CXやEXの視点からも体質を強化していく姿勢をみせている。

 非財務指標について時田社長は、「2020年度にテクノロジーソリューションで営業利益率10%を目指しているが、この達成に非財務指標がどれぐらい影響したのかを分析し、その相関が見いだせれば、今後の富士通の大きな成長のドライバーになると考えている。その旅路が本年度から始まった。相関関係を知るには、データでしっかりと事象を押さえて、計算式をみつけなくてはいけない。まずは測定方法から考えている」とした。

 さらに福田常務執行役員は、「MITの調査によると、CXとオペレーショナルエクセレンス(OX)で優位にあるフューチャーレディのカテゴリの企業は、業界平均利益率に比べて16%も高い。これはデジタル時代の競争力にも関連するものである。富士通は最速でフューチャーレディの企業を目指す」とし、富士通では、OXを高めることでフューチャーレディを目指す仕組み、顧客体験を高めることからアプローチする仕組み、双方を徐々に高めながら到達する仕組み、そして、これまでにない取り組みで「出島」を作ってフューチャーレディ企業となる仕組みの4つの観点から、さまざまな取り組みを行っていることを示した。

 フジトラプロジェクトの推進にあたっては、同社では、新たに「DXプロジェクトステートメント」を定めたことも明らかにした。

 DXプロジェクトステートメントでは、「パーパスを胸に(Purpose driven)」、「オープンなコラボレーション(Open collaboration)」、「わたしらしい働き方で(Human centric way to work)」、「最高のエクスペリエンスを(Customer experience)」、「データを武器に(Data-driven decision making)」、「ともかくやってみよう(Giving it a try)」、「全員参加で(Inclusion & Ownership)」、「未来をリ・デザイン(Re-Design future)」、「ファーストペンギンとして(First Penguin)」の9つを掲げ、フジトラの推進において、重視したい企業カルチャーやマインドセットと位置づけた。

DXプロジェクトステートメント

 部門間の縦割り体制や、オーバープランニングなどの硬直化した社内カルチャーを変革するために、同社が掲げたパーパス(使命・目的)や、デザイン思考、アジャイルなどに対応したフレームワークを全社的に導入および展開するための基本姿勢と位置づけたものの、福田執行役員常務は、「これらの9つのステートメントは、いまの富士通のカルチャーや社内の空気感では、必ずしもレディの状態ではない。できるだけ早いタイミングで、このステートメントのような状態に持っていくことが大切である。これが実現できれば、フジトラのプロジェクトは不要になる」などとした。

データドリブン経営の実現に向けた取り組み

 また、データドリブン経営の実現に向けて「One Fujitsuプログラム」を新たに開始することも、フジトラのなかに盛り込んだ。

 グローバルグループ全体の経営、業務プロセス、データ、ITを標準化し、ひとつのシステムにすることで、経営から現場のあらゆるレベルで、最新のデータに基づいたリアルタイムな経営状態を把握するとともに、未来予測を実現。意思決定やアクション、マネジメントおよびオペレーションの最適化を図る。データの標準化と、高度利用に重点を置き、あらゆる情報をリアルタイムに、一元化することで、富士通のデジタルツインを構築する考えだ。

 まずは、ERPを対象とした「One ERPプロジェクト」をスタート。業務プロセスやデータの標準化を行うために、CEO直下に、主要な業務プロセスごとにデータ&プロセスオーナー(DPO)を配置する。DPOは、商談管理や会計、調達などの主要な業務プロセスごとに選出。該当する業務領域のデータおよび業務プロセスについて、事業やリージョン、グループ横断で標準化を推進することになる。

 福田常務執行役員は、「デジタル時代の経営は、得られるデータの精度、鮮度、正確性に左右される。情報システムは、過去や今を管理するシステムから、未来を予見し、未来をよりよい方向に変えていく役割に進化しつつある。そのためにもデータは重要だ。富士通は業務、組織、国によって固有の業務を行っているが、One Fujitsuプログラムでは、グローバル全体で、1機能1システムで標準化し、グローバル・シングル・インスタンスERPとして導入する」と話す。

 さらに、「これは経営のプロジェクトであってITのプロジェクトではない。業務プロセスとデータの標準化が巧拙をわけると考えており、DPOをCEO直下に設置したのもそのためである。DPOは事業、地域横断で標準化を担うことになる。ここでは、戦略的協業を進めているPalantir(パランティア)のデータプラットフォームを活用。標準化されたリアルタイムのデータを生成し、富士通のデジタルツインを作り、そのなかで経営を高度化し、迅速化、グローバル化を行うことになる」と述べた。

 このほか、戦略、組織、制度・ルール、データ、業務プロセス、アプリケーション、インフラの7つの要素を標準化。「経営、業務、ITを三位一体で改革する。だが、ITは手段であり、目的は経営の標準化である」と強調した。

富士通のデジタルツインを作る

グローバル・シングルERP

 ここでポイントとなるのが、グローバル・シングルERPの考え方だ。

グローバル・シングルERP

 「富士通は各所にERPを導入しているが、課題はなんのために導入され、稼働し、価値を生んでいるのかという点である。いまは、データの精度、鮮度、正確性に課題があり、現地法人に確認しないとデータが使えないし、経営会議で出た疑問に、その場で答えられないシステムになっている。3カ月先のP/Lも指し示すことができない。売上高4兆円、13万人規模の日本の企業で、グローバル・シングル・インスタンスERPを導入するのは初めてだが、世界を見渡せば、富士通と戦っている企業は先を行っている。まずは戦える基盤を身に着けるとともに、これまでグローバル・シングル・インスタンスERPを導入できなかった、日本の企業が持つさまざまな事情をわれわれが突破し、道を作りたい」とした。

 また、「日本の企業の基幹システムはテンプレート方式で展開するため、結果として、多くの『似て非なるもの』が生まれがちであり、データの正確性やデータ収集のタイミングに課題がある。そして経営が支援にまわりがちであり、ビジネス部門は参画するだけにとどまるため、ERPの導入が目的になってしまうという事例が多い」という点を指摘。

 「富士通が取り組む合流型のグローバル・シングル・インスタンスERPは、ひとつのシステムを作り、それをグループ会社のすべてが利用するものであり、経営主導で、ビジネス部門主体で、ITを手段として経営や業務の改革を行っていくものになる。難易度は非常に高いが、これを行うのがOne Fujitsuプログラムの基本的な考え方である」と説明する。

 このほか、「これまでのERPは、バックミラーがよく見えてハンドルを切ればちゃんと車が動くというものだった。だが、これからの企業経営を考えれば、フロントガラスから景色がよく見える状態が必要であり、早めにハンドルを切ることができるようにならなくてはいけない。グローバル・シングル・インスタンスERPによって、データによる予見力が高まり、不確実性の時代における有効度合いが高まる。過去にはない価値を生むことになる」との価値を説明している。

顧客や従業員の声を反映したDX推進に取り組む

 さらに「VOICEプログラム」を通じて、顧客や従業員の声を反映したDX推進に取り組む考えも示した。

VOICEプログラム

 ここでは、定量データおよび定性データの高頻度な収集、分析と、それを踏まえたアクションをマネジメントする「共通デジタルサービス」を全社に導入。多様な意見を吸い上げ、自社の課題や将来に向けた変化の兆しを、随時、分析および把握して、DX施策の立案、決定、展開、改善のサイクルを高速化するという。

 同社では新たな働き方としてWork Life Shiftを打ち出したが、この制度導入に向けてもVOCIEプログラムを活用。従業員約3万7000人からリモートワークに関する回答を得たところ、「アフターコロナにおいても従来の働き方がいい」との回答は約15%にとどまり、約85%の従業員は「もとに戻るべきではない」と回答したとのこと。

 「この結果が働き方を変える契機になった。自転車通勤の解禁やリモートワーク制度の支援につなげるといったこともできた。どんな属性の従業員が、あるいはどのような状態の従業員がどんなことを言っているのかということが、ビッグデータとAIを活用してわかるようになる。リアルタイムで収集したデータを30分眺めれば、どんな施策が必要なのかがわかる。これから富士通が変わっていくなかで、従業員や顧客、パートナーの声を集めて、それらを施策に反映していく」とした。

 また、福田常務執行役員は、「フジトラでは、物事を変えるときに有効であるとされる手段を徹底的に活用し、さまざまな分野の専門家の知見を生かす。物事を変えるときには、顧客やパートナーとともに変えたほうが効率がいい。社内に閉じた活動ではなく、広くオープンに推進する。Design Thinking、Agile、Data Scienceは、デジタル時代の読み、書き、そろばんだと思っている。フジトラのなかでもしっかりと活用するとともに、全社員にマインドセットやスキルを展開する。また、働き方を変えるWork Life Shiftも、今後、第2弾を発表する」などとした。

富士通の基本姿勢を社長自らあらためて説明

 今回の会見のなかで、富士通の時田社長は、同社の基本姿勢についても、あらためて示した。

富士通 代表取締役社長兼CDXOの時田隆仁氏

 「富士通は、2020年度にイノベーションにより、社会に信頼をもたらし、持続可能な社会に貢献するというパーパス(存在意義)を定めた。このパーパスの達成のために引き続き努力をする。2019年に、伝統的なIT企業の姿から脱皮しDX企業に変わると宣言した。富士通はグローバルにビジネスを展開する日本のテクノロジー企業であり、世界のお客さま、社会に対して、テクノロジーの力で、イノベーションを起こし、よりよい社会を実現し、ウェルビーイングを届ける会社にしたいと考えている」と前置き。

 「世界中が新型コロナウイルスの脅威にさらされるなか、DXにより、人々の世界や生活、暮らしを豊かにするために、さまざまな工夫や努力、イノベーションが世界中で起きている。富士通は、そのような取り組みに対して、中心的役割を果たしたい。この思いを全世界の富士通の社員と共有している」と話す。

 加えて、「DXはデジタルテクノロジーを適用すれば成し遂げられるものではない。プロセスや制度、風土を同時に変えていく必要がある。富士通は、社会や顧客のDXを支える企業となるべく、富士通自身のDXに取り組んでいる。また富士通自身が変革し、その姿を社会や顧客に示し、リファレンスとなることで、社会に貢献していく。それが私の考えであり、富士通社員全員の願いである。時代の変化に常に追随し、自ら変革を続ける企業カルチャー・風土への転換を目指す」とも述べた。

 このほか、「デジタル化を推進するためには多少の失敗は許容すべきである、という議論があるが、私は、デジタル化であれば失敗していいとは思わない。その考え方は歪(ゆが)んでいると言わざるを得ない。大きい失敗はもちろん、小さい失敗でもいいとは思わない。アジャイルでやることは必要だが、これはクイックに成功を積み上げることが狙いであって、失敗を積み重ねることを許容するものではない。挑戦を牽引したり、奨励したりするために失敗を許すことは必要である。だが、信頼は挑戦するものに対して贈られる賛辞であり、成功をして信頼を勝ち取り、信頼関係を結ぶことが大切である」との考え方を示した。

 さらに、2020年4月に富士通入りした福田常務執行役員については、「明るい性格であり、ものをズケズケ言う。富士通にとって、いい影響が出ている。経営陣、幹部社員から見て、SAPの社長経験者の言葉を、外部の言葉ではなく、富士通の仲間の言葉として聞くことができるのは大きなメリットだ。フジトラでも、DX Officerによるチームづくりや、社外への発信力でも影響があった。ポジティブな効果がある」と語った。

東証のシステム障害について陳謝

 今回、時田社長は会見の冒頭において、2020年10月1日に発生した東京証券取引所のシステム障害について陳謝した。

 「システム障害の原因となった機器の納入およびシステム開発を担当する企業のトップとして、東証、市場関係者をはじめ、多くの皆さまに多大なるご迷惑をおかけした。心よりおわび申し上げる。申し訳ございませんでした」と、約5秒間、頭を下げた。

東証のシステム障害に関して陳謝する時田社長

 さらに、「現在、東証とともに原因を究明中であり、責任の所在はまだ明確ではない。原因究明と再発の防止に全力で取り組む」と述べ、「日本の社会が、これからデジタルを加速するという局面に入るなかで、日本の金融システム全体の信頼を揺らがしてしまったという点では、心よりおわびする」とした。

 また、「富士通はパーパスを打ち出したばかりであり、その達成が揺らぎはじめる出来事でもある。原因究明から得た知見を生かし、ネバーストップのスローガンをあらためて実現するための再発防止策をしっかりと講じ、それを示しながら、信頼を再び積み重ねていきたい。東証のarrowhead(アローヘッド)は、極めて高い信頼性が求められるシステム。私自身、金融のSEとして30年近く社会インフラのシステムに携わり、その重要性を熟知している。万が一、事故が起きたときの社会に与えるインパクトもよく理解している。大きな挑戦を東証と一緒にやってきた。壁にぶつかったこともあった。そうした経験値を積み重ねた上でシステムが構築され、運用の手順や体系が完成し、成り立っているものである」と振り返る。

 その上で、「だが、安定稼働や信頼性確保に全力を尽くしながらも、そこに引きこもっていては富士通の大きな使命は果たせない。最善の努力をしながら、富士通の技術と知見を生かし、デジタル化にも挑戦を続ける。DXは、富士通が挑戦すべき大きなテーマである。自らがDXを推進することで、その成果を社会に還元し、持続可能な世界に向けて、信頼を積み重ねながら全力で貢献したい」と語った。

 なお、時田社長は会見全体はノーネクタイで行ったが、冒頭の陳謝ではネクタイを着用していた。

会見はノーネクタイで臨んだ