大河原克行のキーマンウォッチ

富士通・時田隆仁社長が語る、“営業利益率10%必達を宣言できる理由”

ひとりひとりが“DX企業になる”ということを突き詰めて考えてほしい

――時田社長は、富士通自身が「IT企業」から「DX企業」に変わるという宣言をしました。そして、自らがCDXO(Chief Digital Transformation Officer)に就任し、社内改革の陣頭指揮を振る姿勢を見せています。富士通が目指すDX企業とはなんでしょうか。

 社内からも、「富士通がDX企業になるというのは、どういう意味か」という質問が出ています。確かに、DX企業という表現は極めてわかりにくい。そうした質問が出るのも仕方がありません。

 その質問に対して私が答えているのは、「私自身、DX企業の定義はない。概念や考え方は継続的に議論をし、ひとりひとりがDX企業になるということを突き詰めて考えてほしい」ということです。

 富士通は、「社会に存在意義を問い続ける会社」を目指します。これが、DX企業になるという根底にある考え方です。

 一般的にDXというと、AIやIoTといったテクノロジーを使ってイノベーションを起こすといった定義がされていますが、この部分だけをとらえていると、AIを使えばいいとか、最新のテクノロジーを活用すればいいという方向に寄ってしまいかねない。社内にそうした解釈がまん延すれば、富士通は、AIを売る会社や、IoTを売る会社になってしまう。これでは、かつてのように、黒電話を作って、それを売るというマインドと同じです。こうした間違いをまん延させることだけは避けなくてはなりません。

サービスオリエンテッドカンパニーとDX企業の関係

――富士通が目指す姿として、「サービスオリエンテッドカンパニー」があります。「サービスオリエンテッドカンパニー」と「DX企業」は、どちらかが上位概念という位置づけがあるのですか。

 サービスオリエンテッドカンパニーは、少しわかりにくいところがあるものの(笑)、すごくよくできた表現だと思っています。富士通は、サービスオリエンテッドカンパニーと、DX企業を両立することを目指しますし、どっちの概念が上とか下とかというものはありません。

 ただ私は、DX企業という言葉と同様に、サービスオリエンテッドカンパニーという解釈も固定したものにするつもりはありません。私はむしろ、サービスオリエンテッドカンパニーという言い方にしても、DX企業という考え方にしても、「それは、こういう会社のこと指す」と決めつけ、固定させてしまうことの方が危険だと思っています。中期経営計画のなかで、DX企業の概念が変わっても構わないと思っています。もしかしたら、「腰の据わらない会社」と言われるかもしれませんが(笑)。

 世の中の変化にあわせて、概念が変わり、それにあわせて企業も、柔軟に形を変えていくことこそが重要だと思っています。ただ、そのときに大切なのは、「社会に対する存在意義がある」というベースがぶれないことです。