大河原克行のキーマンウォッチ

富士通・時田隆仁社長が語る、“営業利益率10%必達を宣言できる理由”

“微動だにしていない”

――就任会見では、「長年に渡って、お客さまに寄り添ったビジネスを行う反面、アイデアを出しながら、次のテクノロジーでお客さまの新たな価値を届けることが不得意になっている」と富士通の課題を指摘しました。この半年間で変化は出ていますか。

 まったくもって、微動だにしていません。

――微動だに、ですか(笑)

 むしろ、これは一生をかけて取り組まなくてはならない課題だとすら思っています。私は、お客さまに寄り添ったビジネスを否定しているわけではありません。これは重要なことであり、富士通がビジネスを行う上で前提となるものです。ただ、私のSE時代の現場での体験を含めて、「寄り添いすぎた」という反省があります。寄り添うというバランス感覚が必要なのですが、私自身も、このマインドを変えることが遅すぎたと思っています。

 富士通は、90年代後半に不採算プロジェクトが多く発生した際に、契約内容に見直して、SIビジネスの正常化を図りました。それは当時としては最善の判断だったわけですが、その裏返しとして、お客さまから提案が欲しいと言われても、契約内容が「言うことを聞いて、その通りに作る」という内容になっているわけですから、新しい提案をしないことが増えてしまった。

 提案すれば、不採算につながる可能性が高まる。お客さまの言われた通りに動き、そう契約書に書いてあると言えば、SE自身も、自分の仕事の成果として守られるし、会社も守られる。それで事故が起こらなければ、それでいいという結果になります。

 しかし、いまは、社会やお客さまが新たな提案を求めています。富士通が持つ経験値や知見を結集して、正しい提案をする必要があります。ところが、いまの富士通には、まだサイロなマインドがあり、知恵を結集できるオープンな会社にはなっていない。イノベーションを起こすには一人ではできないのに、それを変えることができていない。まずは、そこを変えていく必要があります。

――時田社長のCDXOとしての取り組みの成果は、どんなところに出ていますか。

 CDXOとしては、まだ何もしていません(笑)。まずは、富士通自らがDX企業になるという意思を示したわけですが、具体的な施策を実行するフェーズは、2020年からとなります。その内容や施策については、まだ一部の社員と共有しているだけの段階ですが、これを2020年の早い段階には明確なプランとして発表したいと思っています。

 新たな取り組みは、ひとつずつ発表しても誤解が誤解を生んで、伝わるものも伝わらなくなることがあります。一度になるべく多くのものを発表して、一気に進めるということが大切です。ここでは人事制度の改革にも取り組み、それを含めた内容を発表します。この発表を受けて、それぞれの役員や幹部社員が富士通を変えていくという文脈のなかで、役割を持って、取り組んでいくことになります。