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リコーとサイボウズが協業、「リコーブランド版kintone」を国内・海外で展開へ
2025年度には100億円規模のビジネス創出を目指す
2022年4月28日 06:15
株式会社リコーとサイボウズ株式会社は27日、デジタルサービス事業における業務提携を発表した。
サイボウズのkintoneをベースに、両社が共同で開発した「リコーブランド版kintone(仮称)」を、2022年10月から国内向けに提供を開始する。リコーのクラウド基盤「RICOH Smart Integration(RSI)」と連携した形で利用できる点が特徴になる。
販売およびサポートは、リコージャパンが全都道府県に展開する拠点を通じて行い、中堅・中小企業(SMB)を中心に、地域密着型で提供する。また、2022年中には北米市場に進出し、1年以内に欧州でテストマーケティングを開始することになる。2025年度には100億円規模のビジネス創出を目指す計画だ。
リコーの山下良則社長は、「リコーでは、RSIを、業務ワークフローを変革する業務改革プラットフォームへと進化させており、その主役になるのがリコーブランド版kintoneになる。RSIとの親和性を高めたものとして開発し、リコーグループのDocuWare、Axon Ivyなどのアプリケーションとも連携し、エンドトゥエンドの業務ワークフローを実現したい。ドキュメント領域からデジタルプロセス領域までカバーしたソフトウェアポートフォリオが完成することになる。補完関係がある業務提携であり、この発表にワクワクしている」と述べた。
リコーブランド版kintoneでは、RSI上で提供しているアプリケーションとの連携や、リコー製MFPとの連携を強化しており、プリント機能の強化やスキャン連携などの機能をプライグインとして随時拡張していく予定。海外で求められる機能についても、新たにプラグインを追加していく予定だという。
また、サイボウズの青野慶久社長は、「リコーとサイボウズは、お互いが見ている世界観が近い。リコーが目指す『はたらく歓び』を実現するために、チームワークを支え、はたらくのDXに貢献できる。リコーが本気でデジタルサービスの会社に変わる決意をしていることを感じ、この提携に乗るしかないと思った。長期的にすばらしい提携になる」と前置き。
「リコージャパンには、10年以上前からKintoneを販売してもらっており、リコージャパン社内にはKintone支援センターもある。リコーが販売しやすい形にKintoneをカスタマイズし、独自のサービスを付加して販売している。サイボウズでは、今回の提携をきっかけに、Kintoneの売上高を2025年までに3倍にしたい。また、リコーグループの海外販売ネットワークを活用し、海外での販売を拡大したい」とした。
サイボウズがこれまで手つかずであった欧州への展開のほか、北米市場ではリコーが持つ約30万社の顧客基盤をベースに、まずは約1万社への導入を目指すとした。
リコーの顧客基盤は、日本が5割、欧米が4割、その他1割となっており、リコーブランド版kintoneもこの構成比を目指すという。
サイボウズのkintoneは、業務アプリ開発プラットフォームと位置づけられ、営業の案件管理や、顧客からの問い合わせ履歴の管理、プロジェクト管理、タスク管理、従業員の業務日報など、用途にあわせた業務アプリケーションの開発が可能だ。アプリケーションは、ノンプログラミングで開発できるほか、社内SNSのようなコミュニケーション機能を活用することでスピーディな情報共有が可能になり、業務の効率化を実現ができる。
これまでに2万4000社が導入。月平均550社が新規に採用しているという。主要なユーザーは中小企業だが、東証プライム企業の3社に1社が導入。業種を問わずに導入されていること、kintone導入担当者の93%を非IT部門が占めているのも特徴だ。また、北米では720社、アジアでは1030社、中国などでは1200社に導入実績がある。
サイボウズの青野社長は、「情報システムは、外部に委託したり、プログラムの知識がある人しか作れなかったが、kintoneによって、現場の人が開発して、改善して、進化させることができる環境ができあがる。少し難しいことをやる場合にはプロフェッショナルに頼めばいい。数百種類が用意されているプラグインを利用すれば機能強化もできる。時間と費用をかけて完成したものの、利用できる時点では市場環境が変化して、もう使い物にならないというようなことも起きない。また、360社のパートナーを通じた販売を行っており、約60%がパートナー経由。パートナー各社が得意とする領域を付加価値として提案できる」などとした。
サイボウズの青野社長が協調するように、kintoneは、データベースとプロセス管理、コミュニケーションの機能を持ち、プログラミングの専門知識がなくても容易にシステムが構築できるローコード・ノーコードを実現しているのが特徴だ。
これを受けて、リコーの山下社長は「例えば契約書データの作成、ワークフローによる社内承認、契約書ファイルの作成およびアップロードという契約締結の業務プロセスにおいても、リコーブランド版kintoneにより、現場を理解した人が、システムを構築することが可能になる。それをRSIの上でひとつのワークフローとして展開することで、すべてがデジタルで完結するプロセスへと進化させることも可能だ」と話す。
また、「リコーブランド版kintoneにより、業務を理解している現場の人がシステム構築に参加できることが大きい。リコーの顧客接点力を生かした業務課題の深堀と、それをスピーディに対応することという強みを、さらに生かすことができる。サイボウズのアジャイルな開発手法を学びながら、サイボウズとの協働開発を強化したい」と述べた。
リコーでは、リコーブランド版kintoneを含むワークフローのデジタル化で、2025年度には500億円のビジネス創出を目指すという。
今後は、RSIとリコーブランド版kintoneとの間でのデータ連携を強化。将来的には蓄積したデジタルデータを分析・活用して、顧客の業務をさらに高度化、自動化するなど、新たな付加価値の提供を目指すとのこと。
また、現場のデジタル人材やソフトウェア技術者との人材交流などにより、リコーのデジタルサービスの会社への変革に向けて、経営基盤やDX推進体制を強化。さらに、リコーブランド版kintoneを販売、サポートする人員を数倍規模に拡大するとした。