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サイボウズ、「kintone」の売上高が100億円突破――今後は中長期的な投資へ

 サイボウズ株式会社は22日、2022年12月期の決算に伴う事業説明会を開催した。これまで同社では、製品別の売上高を公表していなかったが、今回同社の業務システム構築プラットフォーム「kintone」の2022年連結売上高が100億円を突破したことを機に、製品別の売上高を初めて公表した。

 kintoneの2022年連結売上高は、前年比32.4%増の104億1400万円となった。サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏は、「ひとつの製品だけで100億円売れるような製品はそう多くない。kintoneが国内で強い製品に育ってきたことを示している」と自信を見せた。

サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏
kintoneの売上高が100億円を突破

 このほか、中堅・大規模組織向けグループウェア「サイボウズGaroon」の売上高は前年比13.1%増の45億6200万円、中小企業向けのグループウェア「サイボウズOffice」の売上高は同5.3%増の50億8800万円、メール共有システム「Mailwise」の売上高は同16.2%の6億7800万円と、すべての製品が前年より成長した。

 また、2022年連結売上高のうち、クラウドの売上高は前年比23.8%増の186億4900万円で、全体の84.5%を占めるまでになった。

サイボウズのクラウドサービス
その他製品の売上高
クラウドの売上高が堅調に推移

 コロナ禍でDX化が進み、サイボウズにとって追い風が吹くポジティブな事業環境の中で、同社では2021年から2022年にかけてのスローガンとして「BET!」を掲げていた。その内容について青野氏は、「短期的には赤字を出しても徹底的に投資し、世の中のDXブームに追随、市場開拓に専念することにした」と語る。

2021~2022年のスローガン

 この方針のもと、サイボウズは広告宣伝費に大胆に投資、「この2年で主にkintoneのテレビCMを中心に広告宣伝を強化した」という。具体的な投資額は、2021年が約49億円で、2022年が約64億円。その結果、「kintone認知度が、2020年の19%から、2022年には28%まで高まった」(青野氏)としている。

広告宣伝投資の効果

 ただし、この方針により、連結売上高は前年比19.4%増の220億6700万円と例年通りの成長を遂げたものの、連結営業利益は前年比57.5%減の6億1100万円にとどまっている。

業界を越えたパートナービジネス

 青野氏は、サイボウズの特徴のひとつとして、「クラウドサービスでありながら、パートナー中心のビジネスであること」を挙げる。国内クラウド事業の売上高のうち、パートナー経由の売上高は全体の61.6%を占め、110億円を突破。また、kintoneと連携するサービスの数は370を超え、パートナー数も約400社にのぼっている。

パートナービジネスの拡大

 中でも注目に値するのが、地方銀行とのパートナーシップだ。同社は全国17行の銀行と協業し、銀行員への研修を実施した上で、行員がkintoneのコンサルティングや提案を行っている。これにより、約400社がサイボウズ製品の導入に至ったという。

 この協業の背景について青野氏は、「地方ではIT化が遅れる傾向にあるが、何とかして地方の中小企業のデジタル化を加速させたいと考えた。その施策を検討した結果、地方銀行と組むことにした」と述べている。

 自治体でのkintoneの導入も進んでいるという。自治体ではクラウドの導入に消極的なことも多く、3年前の導入件数は全国でも数十程度だったというが、現在では約190にまで成長した。「コロナがきっかけとなり、クラウドの利点に目覚めた自治体が増えた」と青野氏は分析する。

地方銀行がサイボウズ製品を提案

 自治体に向けたkintoneの1年間無料キャンペーンも導入を加速させた。同キャンペーンに参加した自治体の9割以上が、次年度もkintoneを導入する意思を示し、うち2割強の自治体が全庁規模での導入を検討しているという。全庁規模で利用する場合は、ライセンス費用が最大60%オフになるキャンペーンも実施しており、「今後も日本の自治体のDX化にコミットしていきたい」と青野氏はいう。

 中央省庁でもkintoneの導入が進み始めてる。2023年4月からは、サイボウズにて省庁職員の出向を受け入れ、省庁向けkintoneの導入を拡大するための体制を強化する。同社では2020年より自治体職員の派遣受け入れも実施しており、公共分野でDXを推進する人数を増やすという社会的意義にもつなげたい考えだ。

 グローバル事業については、中国ではゼロコロナ政策による行動制限の影響もあって売上成長率が若干鈍化したものの、台湾では新規契約が約2倍に高まった。特に台湾ではローカル企業からの受注が8割にのぼるという。2022年3月には東南アジア初の営業拠点としてマレーシア法人も開設し、さらなる成長を見込んでいる。米国のビジネスは「苦戦中だ」としているが、株式会社リコーとの協業の一環で、kintoneの米国展開を強化していくという。

グローバル展開

 2023年から2025年の3年間は、スローガンを改め「25BT」とした。これは、「2025 and go Beyond with Trust」の略で、「3年後の2025年をひとつのマイルストーンとし、さらにその先を見据えた取り組みを、信頼を大切に進めていこう、という意味だ」と青野氏は説明。これを機に、ここ数年の短期投資から中長期投資へとシフトし、利益回復にも努める。

2023~2025年のスローガン