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パナソニックが顔認証APIのクラウドサービスを提供開始、マッチングアプリの本人認証にも採用
2019年11月27日 06:00
パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社は25日、顔認証技術のAPI提供を開始したと発表した。なおAPI利用の第1弾ユーザーとして、マッチングアプリを提供するマッチングエージェントとの提携が決定。3年後に300社への導入を目標に、利用企業の獲得を進める。
デバイスを問わず、すぐに試せる、すぐに利用できるクラウドサービス
今回提供される顔認証APIサービスは、これまで同社のカメラなどに組み込んで提供してきた技術を、デバイスを問わず、すぐに試せる、すぐに利用できるクラウドサービスとして提供するもの。
実務に適用しやすい技術力と、大手企業だけではなく幅広い企業に導入しやすい価格で提供する点が特徴で、料金体系は初期費用不要の従量課金制を適用しており、これまでのユーザー、パートナーにとどまらない新規顧客獲得を狙うという。
またクラウドサービスならではの特性として、多拠点での利用、例えば本社と工場や店舗などでの利用も可能になるとした。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 イノベーションセンター IoTサービス事業統括部長の相澤克弘氏は、「あらゆるデバイスでの利用が可能だ。当社としては、ぜひ、パナソニック製デバイスでと言いたいが、パナソニック以外のデバイス上で利用していただくことも可能となる」とした。
セキュリティ対策にも力を入れる。稼働環境μSocketsでは、プラットフォーム全体をAzure VNETにて分離し、ファイアウォールで通信プロトコルを制限することで強力なセキュリティを確保している。
さらに顔認証API自体が、パナソニックのプログラムでしか取り扱えない顔特徴量のデータのみを保有する形態だ。
用途としては、製造業の工程管理や特定エリア入退、物流でのフィールドワーカーの点呼、流通業の顔決済、金融業でのe-KYC、本人確認、エンターテインメント分野での施設入退、VIP対応、MaaS分野での交通サービス利用確認、オフィスの施設入退、勤怠管理、オンラインビジネスでの利用者確認などを想定。
「これ以外の分野であっても、本人を確認する行為がある領域であれば活用可能だと考えている」(相澤氏)。
販路は、パナソニックのグループ販社ルートでの既存顧客向け、システムインテグレータなどパートナー企業経由での新規顧客向け、スタートアップ企業などをターゲットとした、ECサイトによるダイレクトチャネルの3つを想定する。
さらに利用企業やパートナーを支援するために顔認証APIコミュニティを発足させ、技術習得のサポートを行うほか、APIを使ったシステムの開発支援も行っていく。
価格は、今回提供開始したスタンダードエディションの場合、登録人数1人あたり月額5円に加え、顔認証利用料として1回あたり1円がかかる。200人の従業員を持つ企業の場合、20営業日程度で月額1万7000円程度となる試算という。また、トライアルプログラムも用意されている。
今後は、アカウント管理、レポート出力などの機能を持った「プロフェッショナルエディション」を2019年度中に、個人情報保護に則した監査認証機能を持つ「エンタープライズエディション」を2020年度中に、それぞれ提供する予定。それぞれの利用料金は、現段階では未定となっている。
1992年より研究開発を開始、民生機器への搭載で発展
1992年に研究開発を始めたというパナソニックの顔認証技術は、2008年にデジタルカメラ「LUMIX FX40」に導入されたのを皮切りに、民生機器への搭載で発展した。その後、2011年には監視カメラ、2013年には顔検索サーバーに搭載されるなど、法人向け市場でも利用されている。
技術的な強みとしては、次の4点が特徴だ。
1)顔の詳細をとらえる深いディープラーニング(DL)と、顔全体をとらえるDLなど、特性の異なるDLの融合
2)明るさや向きなどの撮影環境に応じ、比較するDL特徴量を変更するといった、撮影環境に応じた類似度計算
3)深いDLを用いた高精度化を実現しながらも、余計な部分を落として重くなりがちなDLの軽量化を実現
4)共通の特徴量を用いてさまざまな属性を同時に取得するマルチタスク構造によって、従来比10倍の高速化を実現
2017年5月にはNIST IJB-Aで世界最高水準の顔認証を達成したが、その後、2年近くが経過する中で、大幅なエラー低減を実現し、当時の5分の1程度までになっているという。
さらに、社員の出退勤管理などで顔写真を登録する場合に、顔認証に適しているかを自動判定する「登録顔画像 品質判定技術」を適用。適していない画像だった場合には、再登録を促す通知機能も持っている。
パナソニックならではの強みについて、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 副社長兼イノベーションセンター所長の江坂忠晴氏は、「技術力、セキュリティに加え、家電開発で培ったUIとUXデザイン力を含めた総合力が当社の強み。技術、デザイン力、セキュリティの3つがそろっている」とアピールする。
実績としては、全国の主要空港で顔認証ゲート200台が稼働しているほか、富士急ハイランドに導入された1対N認証の顔認証システム、ファミリーマート佐江戸店に導入された顔認証決済、point 0 marunouchiに導入されたオフィス入り口や個室の顔認証チェッカー、スポーツビジネスジャパン2019の顔認証システムによる入退場管理、金融業界向けにパートナー企業と連携したデジタル生体認証など、さまざまな導入事例、実証実験例を挙げた。
「現在、お客さまやパートナーにあわせ、システムソリューション、モジュールパッケージ、ソフトウェア、クラウドサービスと4つのレイヤで顔認証事業を展開している。最初は案件ベースでの提供だったが、パッケージ化、さらに今回のクラウド化で、新規市場開拓を実現できると考えている」(江坂氏)。
マッチングアプリに採用
APIを利用する第1号ユーザーとなったマッチングエージェントは、マッチングアプリ「タップル誕生」を提供する企業。マッチングアプリはグローバルでは利用者数の大きい分野。例えばFacebookが参入を表明している。だが、日本では出会い系と混同されることも多く、利用者数は増加傾向というものの、海外に比べればまだ少ない。
そこで利用者アンケートの中で3分の1の人が重視する「安全性」を確保するために、パナソニックの顔認証技術を採用した。
「当社は『出会いで世界を変える』をビジョンとしているが、このビジョンを実現するためには安全安心の強化が不可欠となる。現状ではユーザーからのアラート通報の10%が『なりすましでは?』という通報。残念ながら現行の法律に従った審査方法だけでは、なりすましや複数アカウント作成が可能になってしまっている。こうした状況において、顔認証採用を採用することで、なりすましを0%にしたい」(マッチングエージェント 代表取締役社長の合田武弘氏)。
現在は登録の際に公的身分証が必要となっているが、他人のものを使うといったことも可能だ。そこに顔認証をプラスすることで、本人の身分証明証かどうかを確認する仕組みとする。
この本人確認は必須ではないが、登録を行った人には登録マークをつけることで、出会う際の信頼度が増す仕組みとする。顔認証による本人確認を利用する人が増えれば、本人確認を実施する人がさらに増えることになると見込んでいる。