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ServiceNowが2019年春に国内データセンターを開設、パートナーはNTT Com 「日本企業の変革を日本に根ざして支援する」

 ServiceNow Japan株式会社は17日、都内で開催されたプライベートカンファレンス「Now Forum Tokyo」において、2019年春に、国内で初となるデータセンターを東京と大阪に開設することを発表した。データセンタープラットフォームにはNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の「Nextcenter」を活用し、急増する国内ユーザーのニーズに応えていく姿勢を見せている。

10番目のデータセンターを日本で開設

 ServiceNowは現在、米国や豪州、オランダのアムステルダムなど、世界9カ所にサービス提供のためのデータセンターを設置しており、いずれも高可用性を担保するため、2つのロケーションにあるデータセンターをペアで運用している。

 来春に日本で開設するデータセンターは同社にとって10番目のデータセンターであり、東京と大阪という、物理的に約500km離れたロケーションを“アクティブ-アクティブ”で運用するペアとなる。

ServiceNow Japanにとって念願だった国内データセンターを2019年春に開設。データセンター事業者はNTT Comが選ばれた

 Service Nowのデータセンターは、完全冗長化と顧客ごとに論理的に分けられた5万を超える専用インスタンスを提供することで、99.9996%以上の可用性を実現しており、現在は月間100億トランザクション、1億5000万のアクティブユーザーをサポートしている。

 こうした高い可用性とスケーラビリティを日本のユーザーにも提供するために、ServiceNowがデータセンターパートナーとして選んだのがNTT Comとなる。

国内データセンター開設で期待できる効果

 Now Forum Tokyoのために来日したService Now DevOps担当シニアバイスプレジデント 兼 エンジニアリング担当責任者 パット・ケーシー(Pat Casey)氏は、「NTT Comをパートナーに選んだのは、同社のエンタープライズビジネスにおける実績や知名度に加え、ServiceNowのサービスを顧客に提供するために必要な技術力を高く評価したから。データセンターのフットプリントはその地域によって異なるが、日本はわれわれにとってもっとも重要な市場のひとつであるため、テクニカルファクトを慎重に検討した結果、NTT Comが最適だと判断した」と、NTT Comの技術力を高く評価する。

 物理的に500kmもの距離があるロケーションをアクティブ-アクティブなペアとして運用するのはServiceNowにとっても初の試みとなるが、そうした技術的チャレンジにも応えられるパートナーとしてNTT Comを選んだとしている。

Service Now DevOps担当シニアバイスプレジデント 兼 エンジニアリング担当責任者 パット・ケーシー氏

 日本法人のServiceNow Japanで社長を務める村瀬将思氏は、国内データセンター開設について「日本でプラットフォームビジネスを展開するなら日本国内にデータセンターが必要だと、本社ともずっと協議を重ねてきた。また、お客さまからも法令などに対応するために国内にデータを置く場所がほしい、ほかのサービスとの使い分けをしたい、といった強い要望をいただいてきた。今回、NTT Comとの協業により、日本に根ざしたかたちで日本の顧客をサポートする体制が整った。今後はほかのサービス事業者との連携も視野に入れながら、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や働き方改革、そしてグローバライゼーションを応援していきたい」と語る。

ServiceNow Japanの社長、村瀬将思氏

 現在、グローバルと同様にServiceNow Japanも右肩上がりで成長を続けており、具体的な数字は明かされなかったものの、「本社からは毎年2倍以上の成長を要求されているが、その要求を上回る成果を達成している」(村瀬氏)という。この急激な成長スピードと拡大する顧客数に対応するには、国内のデータセンター開設は避けて通れない課題であったといえる。

パートナーでありユーザーでもあるNTT Com

 一方、パートナーであるNTT Comにとっても、今回のServiceNowとの契約は事業のグローバル化を推進するうえで大きなプラス材料となる。

 NTT Com 代表取締役副社長 森林正彰氏は「NTT Comは顧客のDXを支援する“DXイネーブラー”として事業を展開している。DXの改善はビジネスプロセスの改革を視野に入れないと実現しない。ServiceNowはセキュリティやカスタマサービスなど定型業務プロセスのシンプル化/自動化を得意とするソリューションであり、同社との協業はわれわれにとっても重要」と、ServiceNowとの戦略的パートナーシップの意義を強調する。

NTT Com 代表取締役副社長 森林正彰氏

 NTT Comではすでに社内システムの運用やサービス提供時の運用プラットフォーム、また顧客向けサービスとしてServiceNowを活用しており、多くのノウハウを蓄積している。森林氏は同社のServiceNow活用事例として、パートナー社員入社手続きの自動化にServiceNowを導入し、これまで手動で運用していた業務の多くを自動化したことで、年間2万4000時間以上の改善が見られたケースを紹介している。

NTT ComにおけるServiceNowの社内活用事例のひとつ。数千名にもおよぶパートナー社員の入社手続きをServiceNowによって自動化し、大幅な時間短縮を実現した

 また、顧客に提供するクラウドサービスの保守システムにおいて、故障復旧をServiceNowによって自動化し、故障検知から復旧までの時間を1時間から15分までに短縮できたという。

 顧客に向けてシンプルで標準化されたサービスを提供することで顧客のDXを実現する、そのためにはまず自社のシステムをServiceNowによってシンプル化し、技術的なノウハウをためていく――。

 パートナーとしてだけでなくユーザーとしてのノウハウに加え、DXに対するビジョンがServiceNowと近かったことも、NTT Comがデータセンター運営パートナーに選ばれた大きな要因だったといえる。

 「今回は東京と大阪という国内での協業だが、いずれグローバルでもServiceNowと協業する機会を得たい」(森林氏)。

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 Now Forum Tokyoには当初の予想を上回る1800名もの参加登録があり、あらためて多くの日本企業が業務プロセス改革の必要に迫られていることがうかがい知れる。

 森林氏が指摘するように、DXの実現はベースとなる業務プロセスがシンプルに回っていることが大前提となる。日本企業が苦手としてきた標準化という壁を越えるためには、ServiceNowのような業務のシンプル化を追求するツールの威力は大きい。

 そうした中で同社が国内データセンターを開設することは、少なくない数の日本企業にとって朗報だといえるだろう。