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SAP S/4HANA Cloudの最新動向や特徴を説明、「作り込みを排除して常に最新の状況に対応可能」

 SAPジャパン株式会社は14日、SAP S/4HANA Cloudの最新情報について説明した。

 SaaSであるSAP S/4HANA Cloudは、2016年11月に提供を開始して以来、3カ月ごとにアップデートを繰り返し、最新機能を提供している。

 最新バージョンでは、キャッシュアプリケーションをはじめとして、収益性スマート分析、販売/納入率予測機能などのAI機能を拡充。デザインシンキングを取り入れた「Intelligent Enterprise」というSAPのビジョンを実現するビジネス基盤のデジタルコアとして、企業のデジタル変革を支援してできると位置づけている。

 SAPジャパン バイスプレジデント SAP S/4HANA Cloud事業本部長の関原弘隆氏は、「SAPは長年に渡って統合型ERPを提供してきたが、ユーザー企業においては、ビッグデータ、AI、RPAなどの新たなテクノロジーへの対応が遅れているのが現状だ。それは作り込みによって、アドオンに対する影響度が大きいこと、さらには作業にかかわる時間やコストがかかるという課題もある。だが、昨今では、3年や4年ごとの技術革新では追いつかなくなっている。迅速に新たな技術を取り込むために、ERPの導入をやり直そうという動きも出ている」と前置き。

 「SAP S/4HANA Cloudは標準化を第一義にした製品であり、Fit to Standard型の製品である。作り込みを排除することで、四半期に一度のバージョンアップを通じて常に最新の状況にすることができる。新しい環境にしていないと外部環境の変化には追随ができない。ITの制約によって機能拡張ができないことがあってはいけない。SAP S/4HANA Cloudは、SaaSの仕組みによって新たなシステムや技術に対応でき、これらの問題を解決できる」とした。

SAPジャパン バイスプレジデント SAP S/4HANA Cloud事業本部長の関原弘隆氏

新版での強化点

SAP S/4HANA 1811の強化点

 SAP S/4HANAの「1811」と呼ぶ、2018年11月に提供を開始した最新版では、3カ月前の2018年8月に提供した「1808」と比べ、AIやマシンラーニングなどのインテリジェントERPの新機能として、6つのシナリオを追加。新たに追加されたAPIも1120個にのぼっており、合計で3000個を提供することになった。

 さらに、スコープアイテムと呼ぶ業務機能要件も、364から396に拡大したという。具体的には、「会計」では購買発注の見越し/繰り延べ機能のほか、負債投資などの利息に関するリスク情報の一元化を行う資金管理担当者向け利息概要ページを提供する。

 「調達・購買・生産・SCM」では、調達パフォーマンス予測、倉庫管理および輸送管理、品質管理のほか、在庫日数などをベースにした在庫リスクの最小化を行う在庫分析概要ページ機能を提供。

 「プロフェッショナルサービス」では、未請求一括リリースに加えて、最適なリソースのマッチングを行うインテリジェントリソース管理を提供する。

 SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部長の森川衡氏は、「インテリジェントアシスタントにより、ユーザーがフォーカスすべき問題に取り組むことを支援すること、予測分析により、これまで以上に結果にフォーカスすること、機械学習により定型タスクを削減し、ビジネス機敏性を向上させること、という3つの方向で製品を強化していくことになる」とした。

 また2018年中には、グローバル国別機能サポートを38カ国、23言語へ拡大することも明らかにしている。

SAPジャパン バイスプレジデント ソリューション統括本部長の森川衡氏

NTT-ATが採用を決定

 なおSAPジャパンでは、同日、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)がSAP S/4HANA Cloudの採用を決定したことを発表した。2018年10月から導入プロジェクトがスタートしているという。

 同社では、これまでにもSAP ERPを十数年に渡って利用してきた経緯があるが、長年に渡って追加したモジュールが複雑化したこともあり、その見直しが迫られていた。採用理由としては、SAPジャパンとのセッションやワークショップの結果、SAP S/4HANA Cloudが業務への適合率が高かったこと、あらゆる経営情報が可視化できるほか、業務をシンプル化し、共通業務のコスト削減が可能なクラウドサービスであること、Fit to Standardの手法により短期間で導入が進められることなどが挙げられている。

 「2017年には足りない機能もあったが、2018年に入って機能の強化が進むとともに、SAP S/4HANA Cloudを採用する企業も増えている。日本の企業のビジネスを支援できるものとして、自信を持ってお勧めできる」(森川バイスプレジデント)。

 2018年10月時点で、全世界で9500社以上が、SAP S/4HANA Cloudのライセンス契約を締結。2200社以上で本稼働させており、4500のプロジェクトが実行されている。また、25の業種別ソリューションを用意。最大規模の導入ユーザーでは、20万ユーザーが利用、最大49TBの環境でデータベースを稼働させているという。

 「SAP S/4HANA Cloudは、新しいクラウドであると言われるが、利用実績からすれば、すでに枯れたテクノロジーだと言い切れる」(森川バイスプレジデント)。

 なおSAPジャパンでは、マルチテナント型クラウドサービス「SAP S/4HANA Cloud」のほか、顧客ごとに固有のクラウド環境を提供するシングルテナント方式の「SAP S/4HANA Cloud ,Single Tenant Edition」を提供。さらに、SAP HANA Enterprise Cloudを標準環境として利用しながら、アプリケーションをオンプレミスでフルカスタマイズできる「SAP S/4HANA Cloud ,in HANA Enterprise Cloud」、オンプレミスの「SAP S/4HANA ,on Premise」などもを提供している。

 「SAP S/4HANA Cloudは、デプロイメントオプションにかかわらず、コードライン、データモデル、ユーザーインターフェイスがひとつであることが特徴である」(森川バイスプレジデント)とした。

SAP S/4HANAの提供形態
SAP S/4HANAのデプロイメントオプション
1つのコードベースで提供される点が強み