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SAP S/4HANA Cloudへの入力作業をRPAツールで自動化――、SAPなど3社がRPA活用による中堅・中小企業向けERP提供で協業
2018年12月11日 12:48
SAPジャパン株式会社、RPAテクノロジーズ株式会社、アイ・ピー・エス株式会社の3社は10日、中堅・中小企業向けにERPの入力業務をRPAで自動化するソリューション「受託ロボ」を提供開始すると発表した。同日に行われた共同会見では、新ソリューションを提供する背景および、今回の協業における各社の役割について説明した。
「受託ロボ」は、SAP S/4HANA Cloudの業務オペレーションを自動化するため、RPAテクノロジーズのRPAツール「BizRobo!」に対して、SAP S/4HANA Cloud向けの追加開発を行い、パッケージングしたもの。主に年商250億円以下で、利用者数が50~100ユーザー規模の中堅・中小企業を対象に、アイ・ピー・エスによる導入サービスを含めて提供する。
SAPジャパン ゼネラルビジネス営業統括本部 第二営業本部 第一営業部 部長の綱島朝子氏は、同ソリューションを提供する背景について、「当社は、グローバルで41万3000社にERPの導入実績をもっており、そのうち約80%が中堅・中小企業となっている。日本では、中堅・中小企業の新規顧客数が前年から2倍、新規案件数も3倍に拡大している一方で、多くの中堅・中小企業が、ERPを導入するにあたって『自社導入できる人材がいない』、『システム運用できる人材がいない』、『システムを使いこなせない』といった課題を抱えているのも実情だ。こうした課題に対して、今回、3社が協業し、RPAを活用した中堅・中小企業向けのクラウドERPソリューションを提供する」と述べた。
「受託ロボ」のクラウドERP基盤となるSAP S/4HANA Cloudは、一般的なERPパッケージに比べ、「標準で装備されている基幹業務シナリオから選択してそのまま利用可能」「シナリオや機能は四半期ごとに拡張」「クラウドの運用管理は不要」というメリットがある。
「これに加えて、今回のソリューションでは、RPAツールを活用することで、受注処理や請求処理などのデータ入力作業を自動化し、人材を増やすことなく、中堅・中小企業の生産性向上を実現する」(綱島氏)としている。
「受託ロボ」で活用するRPAツール「BizRobo!」について、RPAテクノロジーズ 代表取締役社長の大角暢之氏は、「ERPの運用には、継続的にERP内の情報の鮮度を保つために、人手によるデータ入力作業が必要となる。しかし、中堅・中小企業では、人材不足や、入力に手間・時間がかかる点、人手による入力作業ではミスが生じる点が問題になっていた。『BizRobo!』では、今まで人間が手作業で行っていた入力、検索、集計、登録などの定型・ルーチンワークをロボットが代行することで、これらの問題を解決することができる」と説明する。
「今回、『BizRobo!』とSAP S/4HANA Cloudをパッケージ化し、アイ・ピー・エスによる導入サービスまで含めて提供することで、単なるERPソリューションではなく、中堅・中小企業にとってスケーラビリティとメンテナビリティに最適な基盤を実現し、デジタルトランスフォーメーション時代のビジネスモデルへの進化を加速させていく」(大角氏)との考えを示した。
SAPジャパン設立当初から、SAP ERPに特化した導入・活用支援事業を手がけてきたアイ・ピー・エスでは、「受託ロボット」の導入サービスとして「EasyOne Cloud」を提供する。
アイ・ピー・エス 代表取締役社長の渡邉寛氏は、「この導入サービスによって、導入プロジェクトにおける業務変更やオペレーション負担を軽減し、従来は6カ月以上かかっていたSAP S/4HANA Cloudの導入を、RPAツールの設定・教育まで含めて、約9週間で完了できる。運用開始後は、管理者不要で、ロボットにより受注・発注・入出庫・生産実績などのデータ入力が自動化され、SAP S/4HANA Cloudのデータを常に最新に保つことが可能だ。また、蓄積されたデータから伝票異常値やユーザー分析、エラー分析などの分析評価を行うこともできる」としている。
「EasyOne Cloud」サービスの初期費用は980万円から。「受託ロボット」の利用料については、「利用ユーザー数によっても変動するが、月額制で1ユーザー3万円程度を予定している」(渡邉氏)という。