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SAPジャパン、インテリジェント技術時代のERPとしてS/4HANAの最新動向を紹介

 SAPジャパン株式会社は25日、基幹業務アプリケーション「SAP S/4HANA」の最新動向と、同社が進めているコンセプト「Intelligent Enterprise」に関する説明会を開催した。

 現在は、市場分析の対象を国単位でとらえることが難しくなり、消費者の趣向が多様化したことで、従来型の大量生産・大量消費モデルではグローバル競争に勝ち抜いていくことができない時代となっている。

 そこで、国や市場、事業ごとに対応したきめ細かいデータ基盤が必要となってきた。Intelligent Enterpriseは、こうした環境・市場の変化と、IT技術を含めた技術進化に対応し、機械学習とAI、IoTと分散コンピューティング、ブロックチェーンといった技術を包含しているとのこと。

 SAPジャパン 常務執行役員 クラウド事業担当 宮田伸一氏は、企業向けITの進化の歴史を振り返り、「メインフレーム時代の狙いはオートメーション。また、クライアント/サーバーとインターネット時代は、ERPによってビジネスをプロセス全体ととらえたビジネスプロセスオートメーションの実現が狙いとなった。その後、モバイル端末を利用したクラウド、モバイル&ビッグデータの時代には、主体がコンシューマに移動し、企業はデジタル化を進めた」とする。

 その上で、「それに続くインテリジェント技術の時代に登場したのが、データの洪水におぼれた企業を救うことを実現するのがIntelligent Enterprise」と、現在の状況を説明した。

企業向けITの進化の歴史
SAPジャパン 常務執行役員 クラウド事業担当 宮田伸一氏

 そのIntelligent Enterprise時代のERP製品としてSAPジャパンが注力している製品が、S/4HANAになる。

 S/4HANAは、基幹系と分析系の統合による分析とアクションのリアルタイム化、データモデルのシンプル化による情報活用・分析の簡易化、データスループット向上によるバッチ処理削減、ERPのシンプル化で周辺機能の取り込みとクラウド版の提供、といった従来のERPにはない特性を持っている。

 その結果、従来のERPの適用範囲からカバー範囲が拡大し、「インテリジェント化」「シンプル化」「機能の改善・高度化」が進められているという。

 直近の9月のアップデートでも、「インテリジェント化」では、機械学習を利用した未契約発注品目の監視、契約締結が妥当な品目の提案、見積もり変換率予測などの機能が加わった。

 「シンプル化」としては、CRMセールス機能の取り込み、連結会計機能としてGroup Reportingへ対応、といった強化を実施。「機能の改善・高度化」では、拡張利用可能在庫の確認機能の追加、バリアント選定機能の拡充などが行われている。

 「導入企業数も順調に拡大し、グローバルの数字ではあるが8900社以上が導入している。国内でも稼働段階まで行っている企業が増加。さまざまな業種、業態で導入が増えている」(SAPジャパン ソリューション統括本部 デジタルアプリケーション1部 部長 上硲優子氏)とした。

 また移行に関しては、要件にあわせて展開を選択できる「デプロイメントオプション」を提供し、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスから選択可能となっている。

SAPジャパン ソリューション統括本部 デジタルアプリケーション1部 部長の上硲優子氏
S/4HANAの開発コンセプト
S/4HANAの進化の一例
デプロイメントオプション

 このほか、需要に対してコンサルタントが足りないという問題が指摘されているが、「アプリもインフラに近いところもコンサルタントが不足しているといわれているが、量、質の両方を充実させるべくパートナーエコシステムの拡大を進めている」(SAPジャパン デジタルエコシステム統括本部 ビジネスイノベーション推進部長 服部貴志江氏)と説明。対応策として、以下の5つを挙げた。

1)新規パートナー増強を進め、これまでSAPを取り扱っていなかった50社がこの1年でパートナーに
2)パートナー数拡大実現のために、インドのパートナー企業などグローバルサービスパートナーとの協業を推進
3)来年から特別プログラム提供するなど、既存パートナー向けサービスを拡充
4)SAPコンサルティング部門との協業を強化
5)従来のクラスルームトレーニングに加え、クラウド上でのトレーニングや質問受け付けなど、多様なトレーニングを提供

SAPジャパン デジタルエコシステム統括本部 ビジネスイノベーション推進部長 服部貴志江氏
パートナーエコシステムの拡大

 また、S/4HANAコンソーシアムには26社が参加しているが、この枠を超えた勉強会を開催し、夏に開催したものには60社が参加するなど、多くの企業がトレーニングを受けているとアピールしている。

S/4HANA導入企業、テルモのCIOが登壇

 今回の説明会には、2016年からS/4HANA導入を開始した、テルモ株式会社のCIOである竹内克也氏が登壇。同社がS/4HANAを導入することになった経緯などを紹介した。

 医療機器・医薬品の製造販売を行うテルモは、96社の連結子会社を持ち、生産拠点は、国内が8カ所であるのに対し、海外が22カ所。日本人以外の従業員が80%以上を占めるなど、グローバルビジネスを行っている。

 「しかし、IT部門に関しては国内で行っているために、ガバナンスがきちんとできていない状況にあった。そこでグローバルビジネスを行うことを前提とした、グローバルなIT基盤構築が不可欠となった」(竹内氏)と、当時の課題を説明する。

テルモのCIO、竹内克也氏

 テルモがこの改善のために実施したのが、「S/4 HANA導入によるERPグローバル統合」「コミュニケーションプラットフォーム統一」「ネットワークグローバルオペレーション強化」の3点だった。

 S/4HANA選択の理由としては、経営陣と話し合いを進めながらグローバル統合による経営貢献を実現するために、1)グローバルでの経営KPI可視化、2)ビジネススピードへの貢献、3)業務プロセス標準化の推進、4)コンプライアンスレベルの向上、5)新IT技術活用による業務高度化、といった5点を挙げる。

 「当社は過去に2回、物流プロジェクトを立ち上げて構築にトライしたものの、失敗し、負の遺産として社内に残っていたという経緯があった。そこでグローバルITガバナンスの確立、グローバルIT戦略の策定、本社IT部門の強化、新IT技術への取り組みといった課題を、ひとつひとつ解決しながらS/4HANA導入を進めた」(竹内氏)。

 2018年5月には、S/4HANAによる物流システムのクラウド化が完了し、「あえてトラウマとなっていたものから挑戦を行って、無事に稼働を実現した」(竹内氏)という。今後は会計、生産、工場と拡大していくことも計画している。

グローバルIT基盤の構築を目指した
S/4HANAのグローバル展開